第6話 私の事ほんとに好き?
入学式から1週間程たち、由香里の生活で問題が起こらないためにルールを作ることになった。
:学校でのスキンシップはあまりしない。
:買い出し料理は私、の担当。由香里は掃除洗濯担当。
:お金は月にお互い決まった額を超えないように。
:勝手に人の部屋に入らない!
:家では甘えてほしい!一緒にお風呂、一緒に寝る。
最後のは由香里に強く押され仕方なく追加して毎日一緒の時間を過ごしている。最初はトイレも!と言われたがそれだけは嫌なので拒否した。
そもそも、どうしてルールを作らないといけなくなったかというと…
「ちょっ、由香里ここ学校!キスしないで!服脱がそうとしないで!?」
「ぐへへ、いいじゃない、だれも見てないし」
「あっ…ん…」
学校でのスキンシップがひどく、生憎誰にも見られずに済んだが学校で襲われそうになりいつ誰か見られるかわからないのでルールを作ることになった。ばれたらやばいのに、由香里が学校で有名人だということを少しは自覚してほしい。
「由香里って家事何ができるの?」
「んー、料理以外なら完璧かな」
言葉通り料理以外の家事に関しては本当に私より手際はよく、少し負けた気持ちになった。でも由香里のことが少し知れてうれしい気持ちもある。
「ねえ、美波ちゃんゲーム買おうよ!これとこれとこれとこれ!」
「さすがに多すぎない?買うなら一つにしてよ」
「欲しい物を手に入れる為ならお金はあるだけ使う!たとえ生活費が無くなっても!」
「よし、ルール増やそうか」
由香里は案外金遣いが荒かった。ここに関しては私が何とかしないと私の生活費まで取られそうな勢いなのでやむなくルールに追加し、由香里にはギャンブルを一生させないと心に誓った。
「あー、美波ちゃんまた一人でしてるー!お姉ちゃんが手伝ってあげようか?」
「ちょっと!勝手に人の部屋に入らないでよ、あっ…そこ触っちゃ…だめ…」
このままでは私がおかしくなりそうだったので、『勝手に人の部屋に入らない!』をルールに追加した。
「もー美波ちゃん厳しくない?学校でも、家でもダメなんて…もっと一緒に居たいに」
「わかった。じゃあ何か一緒にしたいことある?」
「まず!おはようの抱擁とキスでしょ?朝早く起きたらそのまま学校行くまで二人で楽しんで………お風呂も一緒で、寝るときも一緒で…何ならトイレも
お姉ちゃ――」
「うん、よくわかったから黙ろうか」
起きている時間すべてを由香里に支配されそうになり、少し恐怖感じた。さすがに一人の時間も欲しいと念押しし、お風呂と寝るときは一緒は譲れない!と言われたのでやむなく了承することに。
のちに由香里が我慢ずに襲われそうになったので、二人の時はもう少し甘えるがルールに追加された。
そんなこんなで今は、教室で才川さんとご飯を食べている。
「あ、相沢さん今週の日曜塾ないし一緒に遊ばない?私の家でもいいし、何ならそっちの家でもいいし」
「んー、どうだろ私じゃなくて由香里に聞かないと…」
「小泉さんかー、一緒に住めるなんていいよね。憧れる」
えっどこが?と言いたくなったがこれは私たちの危ない関係がばれる可能性があるから飲み込んだ。ところで才川は私と由香里がシェアハウスをしていることを知っていて、クラスメイトの中で唯一私たちの関係を知っている人である。
「小泉さんってどんな部屋に住んでるんだろ、相沢知ってる?」
「んー、いつも私の部屋で一緒だからわからないかな」
「ふーん、いつも一緒ね……ふふ」
「なに?」
「何にも、それより相沢さんの部屋行ってみたいかも」
何度も私の部屋に来たいと言っていたので一応由香里にも聞いてみないとと、メッセージを送ると『私たちの愛の巣に人を呼ぶなんて!美波ちゃんの浮気者!』と冗談が飛んできたが多分大丈夫だということだろう。
授業も終わり、放課後になると才川さんはいつものように足早に教室を出て行った。私もそろそろ帰ろうかと準備をしていると後から呼ばれ振り返る。
「あの相沢さん」
「え、宮代君どうしたの?」
「ごめん、この後って時間ある?図書委員の仕事が残ってて」
「あー、わかった行く」
話しかけてきたのはクラスメイトの男の
「で、図書委員の仕事って何が残ってるの?」
「えっとねぇ、返却された本が結構あるからそれをもとの位置に戻すだけだよ」
「おっけー、じゃあこっちの半分は私がやるね」
半分本を貰い、元あった場所に戻していく。途中届かないところなどは拓真君に手伝ってもらいながら無事、図書委員の仕事を終えた。
「相沢さんありがとう、助かったよ」
「ううん、手伝ってもらってばっかだったよ。もう少し身長あればなぁ」
「そうかな?相沢さんは今のままでかわいいと思うけど」
「え?あ、うん。ありがとう、そんことよりそろそろ帰らない?」
「そうだね結構時間かかっちゃったし、校門まで一緒に帰ろっか?」
うんと頷くと図書室を出て鍵を職員室まで持っていき、そのまま校門で別れようとしたとき、拓真君が話しかけてきた。
「あの相沢さん、今度一緒に遊びいかない?」
「え?うん別いいよ」
「ありがとう、あ、連絡先交換しよっか」
拓真君と遊ぶ約束と連絡先を交換し、そのあとはすぐに別れ帰路についていた。私の連絡先にまた一人増えた喜びで鼻歌交じり玄関を開けると。
「ただいま」
「おかえりー、美波ちゃんちょっとこっちに来てくれる?」
そう共有スペースから呼ばれいつもご飯を食べるカウンターの前。由香里の隣に座ると私は少し違和感を感じ由香里の顔を覗くと顔がなぜか不機嫌なのだ。私何かしちゃったかな?
「ねぇ美波ちゃん今日遅かったけど今まで何してたの?」
「えっとクラスメイトの男の子と図書委員の仕事してただけだよ」
「ふーん、もしかしてその男の子好きとかじゃないよね?」
「え?うん友達かな?」
由香里が何を気にしているのかわからないが、何か誤解をしているなら払拭しなければ、今後の生活を円滑に進める為に。
「別に何もないよ?由香里は何を心配してるかは分かんないけど」
「ねぇ美波ちゃん私の事好き?」
「え?うーん、多分…好きかな、好きじゃなきゃ恋人やってないと思うし」
「多分なんだ、…よし決めた!今度デートしようか、思い出作ろ」
わかったと頷くと、さっきまでの不機嫌な顔が嘘みたいに笑顔になった。私も安心して遅くなったことに対して謝罪しなけばと思い由香里に声をかけようとしたときカウンターの上に置いた私のスマホが震え、届いたメッセージが表示された。
「(拓真)今日は相沢さんありがとう、今度遊びに行く日なんだけど今週の土曜のお昼からでいいかな?」
「(相沢)うん、その日は空いてるから晩御飯の時間までに帰れるなら大丈夫だよ」
私がそう返信すると、それを見ていたのか由香里がまた不機嫌な顔で名前を呼んできた。
「ねぇ美波ちゃん、それってデートのお誘いじゃない?」
「ん?そうなのかな、でも拓真君ことは何とも思ってないし大丈夫でしょ」
「はぁ、美波ちゃん私というものがいるのに他の人とデート行くんだ」
あぁこれはまた面倒な事になってきた。でも本当に拓真君の事は何とも思っていないのは確かなのだし、そもそも私には由香里がいる。もし告白されたとしても…あれ、私どうしたいんだろう、まぁされたらその時に考えればいいか。そんなことより今は由香里の機嫌をとる方が重要だ。
「由香里、今日は私の体好きにしていいから機嫌直して?」
「はぁ美波ちゃん、私が体だけを求めてると思ってるの?結構傷つくんだけど」
さらに由香里の機嫌が悪くなったのかこれまで以上に低い声で言われ少し怖くなった。でもいつも身体を触ってくるから体目的だと思ってたけどこれってもしかして…
「ねぇ由香里、由香里は私の事好きなの?」
「うん、好きだよ。だからまず私を優先してほしい、いつも身体ばっかり求めてるからそう思われてもおかしくないけど、私はね、美波ちゃん」
真剣な顔を私に近づけてきて、唇が触れた。顔が離れると由香里は私の両手を握りながら、話を続ける。
「美波ちゃんに私を…好きになってほしいの。だからもし、エッチするのが嫌ならもうしないから、だから、だから…」
そういう由香里は少し俯き涙をこらえるように強く下唇を噛んでいるのが見えて、私は少しわからなくなった。いつも二人の時になると体を無理やり触ってくるから私の身体が好きなんだと思っていたのに、こんなに真剣に私のことを好きだって言居てくれるなんて、私は最低だ。本や友達の情報だけでわかった気になっていただけで、何もわかっていなかったんじゃないか。今私がしなければいけないの機嫌をとることじゃない、私がやるべきは…
「由香里、私が悪かったね。こんなに傍で私を好きでいてくれる人がいるのに、求められる事だけで満足しちゃってさ、これでいいんだって思ってた。でも、私も由香里のことが好きになりたい、これからはもっと由香里のことを考えるよ。だから…」
私は由香里の唇にキスをして、握られた両手をこちらからも強く握り返し最後の言葉を口にした。
「改めて言わせて、由香里…私の恋人になってくれないかな」
由香里はうんと頷くと泣き崩れるように私胸に飛び込んできた。私は由香里の頭に頬を乗せ撫でるように少し動かす、これじゃこの前と立場が逆になってるじゃないかと思いながら体を寄せあった。
でもこれでやっと由香里と対等になれた気がする。本当の恋人に。
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