「月丘 三廻」編①(新歓合宿!)
序幕<プロローグ>「2025年、海はヤツらの根城だった」
◇
……ついに、待ちに待ったこの日がやって来た。
──輝くばかりの太陽、爽やかな白い雲!
見上げれば、これ以上ない程に澄み切った晴天だ。それはもう、「これ、本当に今は9月過ぎなのか?」と思えるぐらいの『The・夏な景色』がそこにあった。
そして地上の熱気とは裏腹に、足元はヒヤリと冷たい。
──ザザー……ザザー……
耳元をくすぐるのは波の音だ。白い砂浜のふちに、波が打ち寄せて泡立っている。もうここまで来れば説明するまでもないだろう。
寿限ムたちは海に来ていた。ギルドの『新歓合宿』の最終日を明日に控え、ギルメン全員が水着に着替えて波打ち際の砂浜を全力で走り出す。
「ようやく海に来たぜこんチクショオおおおおおおお!!!!!!!!! 私たちの『海』と『青春』を返しやがれモンスターどもおおおお!!!!!!!」
そんな魂の雄叫びを上げながら、桃が自慢の水着姿で構えた弓から矢を射続ける。
「これがほんとの『海開き』ってヤツだねー☆」
「……まあ、『海開き』にしては2カ月遅いけどね」
そんな砂浜を眺めながら呑気に言葉を交わすのは戻子と令だ。2人とも水着姿で砂浜の手前に腰を下ろすと、我先にと暴れ回る寿限ムと桃の姿をまったりと眺めている。
──寿限ムたちが訪れた海岸線、そこはモンスターたちの巣窟となっていた。
「コイツらはしょせん『前座』……さっさと片づけて、『本番』行かせてもらうぜ!」
寿限ムも桃に負けていられない。サーフパンツの上に鍛え上げられた腹筋がちらりと見える、水着姿の寿限ムは『格闘家スタイル』でモンスターに拳を撃ち込みまくる。
サンダル履きも何のそのの大立ち回りで、辺りのモンスターの群れの中に飛び込むと、砂浜に我が物顔で陣取る
「フハハハハ! 砂浜の大掃除は
そう言って詠羽はアイテムボックスからパラソルと白のビーチベッドを取り出すと、「フッ、これで我が闇の領域が完成した……!」と弾けるビキニ姿で寝転がる。
「私も……その隣、座らせて貰っても、いい?」
「フッ、三廻嬢か。勿論構わないが……まずはその『邪魔なタオル』をどけることだな!」
恥ずかしそうに体にタオルを巻いた三廻に対し、詠羽はそう言うと勢いよくそのタオルをむしり取るのだった。
──ブルン! 大きく揺れる2つの果実。メロンと見紛う程の特大サイズのそれが、薄っぺらい水着の布地に押し込められ、窮屈そうにプルプルと揺れていたのだった……。
「っ……! は、恥ずかしい……!」
「フン、別に恥ずかしがる必要も無いだろう? ここには我ら以外いないのだからな」
「でも……」
「む、そろそろ『ヌシ』のお出ましのようだな! 早く座るがいい、さもないと
「! ジュゲム……くん……」
三廻はピクリと反応すると、小さく頷く。砂浜の方では早くも辺りのモンスターを一掃し終えた寿限ムと桃が、ジッと海の方を見つめていた。そしてギルドマスターの刻花も後方で双眼鏡を手に、同じく海を眺めていたが、やがて声を上げる。
「……そろそろ時間ね。ジュゲム、桃、今から貴方たちの『鍛錬の成果』を見せて貰うわ。……一つだけ、くれぐれも無茶はしないようにね」
──ザザーン……ザザーン……
気付けば、いつの間にか波の音が大きくなっていた。そして──次の瞬間、海が割れたかのような水しぶきと共に、それが姿を現す。
「出やがったな、『シーサーペント』……!」
10メートル……いや、15メートルか? 巨大な海の大蛇が海中から首をもたげる。そして現れた際の水しぶきが、まるで大雨のように空から降り注いだのだった。
──今の2025年の海のヌシ……あれがシーサーペント。デカい、デカすぎる。間近で見るのは初めてだけど、やっぱり規格外だな……。
シーサーペントが大きく口を開ける。それを見た寿限ムと桃は、予想していたかのように素早く回避行動を取るのだった。バン! 大きな音と共に、砂浜で砂が吹きあがる。ついさっきまで自分がいた場所に、巨大な水弾が着弾したのだ。
だが2人も物怖じすることなく、寿限ムはバズーカ、桃は弓で、それぞれ撃ち返す。
──砂浜に弾幕降り注ぐ、9月過ぎの晩夏。
いつもと一味違う、"サマーバケーション"が始まろうとしていた……。
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