「山田 令&冴木 戻子」編①

序幕<プロローグ>「究極リベンジマッチ IN "名古屋場所"!」

 ◇


 2023年。

 それはいわゆる"ダンジョン元年"と呼ばれる、人類のターニングポイントとなった年であった。この年初めてダンジョンが観測され、世界はモンスターで溢れた。あの年の年末から翌2024年にかけてが、有史以来最も人類の滅亡に近づいていた時期であることは言うまでもないだろう。


 人類は現代兵器を用いて対抗したものの、全く歯が立たず。

 人類の滅亡は秒読みかと思われていた。


 しかし……


 ──"スキル"と呼ばれる異能力。

 ──"アイテム"と呼ばれる未知の物品。


 人はダンジョンに潜り、アイテムを得、成長し、モンスターに対抗する。

 いつしかその『非日常』は、『日常』へと溶け込んでいった……



 ……今日も人はダンジョンへと潜る。


 ──ある者は『生活』の為に。

 ──ある者は『娯楽』として。

 ──ある者は『欲望』のままに。

 ──ある者は『ロマン』を求めて。


 新しい世界に適応した、命知らずの"勇者"たち。

 人は彼らを"探索者"と呼んだ──!


 ◇


 ──そしてここにも、もう一人、探索者としての人生を歩み始めた者がいた。


 ……名古屋市内に存在する、とあるダンジョンにて。


 そこは木が生い茂る森の中……の姿をした、いわゆるダンジョンの『ボス部屋』、ボスが待ち構える場所であった。そこでは、、今まさに決戦の火ぶたを切ろうとしていたのである……。


 ──東。

 待ち構えるはボスモンスター『オーガ』。4メートルの巨体に、灼熱色の肌、そして盛り上がる筋肉はダンジョンの最奥で待ち構えるに相応しい威容であった。


 ──西。

 ボス部屋の入り口から入ってきたのは、完全武装フルアーマーした。両肩にバズーカ砲を1門ずつ担いでの登場だ。

 ニヤリと笑うその顔は、完全に自分の勝利を確信している顔である。


 そしてボス部屋の中央に根を張る巨大な一本の木、その枝の上に腰掛けて、その様子を観戦する二人の人影があった。


「おー」

「ジュゲムんガンバ~!」


 一人は和服を着た黒髪碧眼の少女、『山田 つかさ』だ。

 そしてもう一人は、ギャルっぽい見た目をした少女、『冴木さえき 戻子もどこ』だった。


 二人は一色触発のを見下ろしながら、無邪気に拍手をしている。

 傍らにはお菓子とジュース。さながらスポーツ観戦といった雰囲気である。

 


「……宣言してやるよ。この勝負──



 少年のその言葉にオーガは激高! 「ドスンドスン!」と地響きを鳴らしながら、少年の下に勢いよく突撃する。

 それと時を同じくして、少年の担いだバズーカ砲が火を噴くのであった。



 ……のちに観戦者の二人はこう証言する。



 「あー、あの『オーガ対寿限ム』の一戦ね。……あれは"伝説"だったなー」と。



 ──今まさに、が始まろうとしていた……!



 …………


 ……


 …



 どうしてこうなったのか。


 ──それでは、時を少し巻き戻そう……。

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