デートされる

「あっ、ざこ大人さんだ♥」


 互いに友人連れで街中で会うこともあったが、開口一番モイラは誤解を招くことを言ったりする。


「え、この人?♥ パパ活? ママ活?♥ 娘活?♥ でゲットしたオトナの関係だよ♥」


 などと友人のJSたちにわたしを紹介、変な関心を集めた。こちらが自分の友たちへの言い訳におわれていると、


「なに焦っちゃってんの相変わらずざこだね♥ うそうそ、恋人同士だもんね♥」


 とたいしてない胸を張って言い直し、同級生たちに自慢しだした。またも感心を集めている。


 わたしは友たちに引かれっぱなしだ。


「ねぇ、デートしようよ。でーと♥」


 大人たちと子供たちへの弁明をしまくるこちらの心情なぞ構わず、腕を組んで街中へ引っ張るように歩きだす。


「あたしらそういうわけで大人のアソビに行くから。ごめんね、ばいばーい♥」


 なんて、JSたちとは手を振り合って勝手な別れを告げる。


 さらには、「言うこと聞かないと、痴漢って叫んじゃうぞ♥」なぞと小声で脅された。


 お蔭で、ろくな弁解もできぬまま突然のデートをさせられることになった。


 さっそく映画館に連れてかれて、女児向けアニメ劇場版を一緒に観賞させられる。


「ぷいきゅあがんばえ~♥」


 普段大人ぶってるくせに、いや今子供ぶってるのか、モイラは他の女児らと一緒に魔法少女を応援したりしていた。


 ゲームセンターにも連れてかれた。


 女児向けの、着せ替えとダンスを合わせたようなゲームをさせられる。初めてやるので、当然失敗ばかりだった。


 モイラは嘲笑う。


「へったくそ~。よわよわだなあ、ざこ大人さん♥ あたしが幼女先輩になったげるよ♥」


 と、交代すると天才的なプレイで高得点を叩き出す。

 たちまち集まってきた女児たちの歓声を浴びて、スター気取りだった。


 お次は子供服売り場に連れてかれる。


「どう?♥ ゴスロリとロリータ、どっちが似合う?♥ 本物のロリが着ると最高でしょ♥」


 なんて、暗色を中心としたゴシックロリータと明色を中心とした甘ロリの衣装を選び、試着室で披露してきた。モデルみたいなポーズもする。


 悔しいほどよく似合っていた。


「でもモイラはこういうのが好きなんだよね♥」


 結局、いつもの地雷系や量産系の服を選んで試着したあと購入する。というか半分払わされる。


「そだ、ざこ大人さんが好きそうなのも見せたげるよ♥」


 買った荷物を持たされ、また試着を待たされた。


「じゃーん♥」

 言って、開け放たれた試着室の向こうには。

「スク水とランドセルにリコーダー♥ 女子小学生の三種の神器最高でしょ♥ それとも体操服ブルマの方がよかったかな♥ ざこ大人さんには哀しいお知らせだけど、売ってなかったんだよね♥」


 言葉通りの格好をしたモイラがいた。

 いつの間にか、店員にジト目で見られている。


 またも言い訳におわれているうちに、モイラはさっさと元の服に着替えて、


「最近ちっぱいじゃなくなってきたから、これもくださ~い♥」


 スク水も買って半額わたしに払わせるのだった。

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