遊ばされる

 休日に外になぞ出ると、タイミングを見計らったようにモイラが見つけて声を掛けてくることもあった。


「鬼ごっこしようよ、ざこ大人さん♥」


 などと。二人なのに。


「なに迷ってんの? 合法的に女子小学生の身体にタッチできるチャンスだよ♥」


 こっちが鬼なのは強制らしい。


「捕まえてごらん。ほらほら~♥」


 勝手に始めて、つかず離れずうろちょろする。

 街中でも無視しようものならほっぺを膨らまし、


「ぷうっ。始めないと警察呼んじゃうよ♥」


 なんてスマホをかざして脅す始末だ。

 かといって諦めて追いかけようものなら、


「きゃー♥ ロリコン変質者にさらわれちゃう~♥」


 なぞと喚きながら逃げるのだから、たまったものではない。

 例によって周りが怪しむと、


「やだ、冗談♥ 家族と不審者鬼ごっこして遊んでるだけで~す♥」


 とかごまかす。

 聞いたことない遊びだし、そのうち冗談じゃすまなくなるというこちらの危惧などなんのそのだ。


 仕方なく早めに終わらそうと全速力で追いかけてみるが、なかなか速くて捕まえられない。


「おっそ、ホントにざこじゃん♥ のろのろだね、運動不足?♥」


 かもしれなかった。


 定期的に体育の授業がある彼女たちほどは運動しなくなった。大人になってからこんなに駆け回ったのも久々な気がして、やや心地よさも感じてしまう。


 それでもやがて追いつき、逃げ場を失った彼女も観念するが。


「いやん、どこ触るつもりぃ?♥ ロリコン変態ざこ大人さん♥」


 モイラは両手で、ほぼ膨らみのない胸とミニスカの股を押さえる。


 恐る恐る、肩にちょんと触れるにとどめた。


「おさわりできるチャンスなのに、そんなとこでいいの?♥ もったいな~い♥ まあ楽しかったよ、じゃね♥」


 なんて唐突に遊びは終わる。

 大人同士の遊びより、ずっと疲れてしまうが。こんな風に彼女と遊ぶと、童心に帰ったような感覚も得てしまっていた。


 他にも公園なんかに誘われると、だいたいミニスカートなのに滑り台やジャングルジムなど高所に登ったり、鉄棒をしたりブランコを勢いよく漕いだりでパンチラしまくる。


「やだざこ大人さんってばどこ見てんの?♥ 女児ショーツ?♥ エッチ~♥」


 とかからかいつつ、どぎまぎするわたしにも同じ遊具で遊ばせたりする。どれも触れること自体久々で懐かしかった。

 大人になってもできる遊びだが、いつの間にしなくなってしまったのだろうと考えさせられることもある。

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