第14話 旅への準備

 貴賓室で待っていた健太郎とリスニが立ち上がって二人を出迎えるとアンリエッタは健太郎に駆け寄って手を握った。


「お願いです、エリアーヌを今すぐにでも助けてやってくださいませ。あの鳩はタング様が放ったうちの一羽ですよね。ああ、本当に無事なら今すぐにでも助けにいかないと」


 健太郎の手を握りリスニに向かって訴えるアンリエッタに「おいらの手はここにあるんですが」とリスニが両手をひらひらさせる。


「まぁ、私としたことが、殿方の手を気安く触ってしまいましたわ、どうしましょう」と今更ながらに健太郎から離れたがリスニの手を取ることはなかった。


「おいら損してませんか」と振っていた両手を虚しく宙に浮かべていると健太郎がその手を握って「間接握手だ」と意味不明の事を言って握った。


「何も嬉しくないですね」とリスニは肩をすくめたがコンスタンタンが怪しそうな目で二人を見るので「何もありませんから」ときっぱり言ってから健太郎の手をぐいと持ち直し手の甲にある紋章をその場にいる四人で囲み声を落として話しだした。


「この場にいる人たちは分かっていると思いますがこれは勇者の紋章ではありません。あの場を切り抜けるための方便です。ですが我々はこれからエリアーヌ王女殿下を救出に行きます。これは嘘ではありません」


「あの、私も一緒に行ってはダメですか?」とアンリエッタがおずおずと申し出るとすかさずコンスタンタンが反対をした。


「何を言ってるんですか、いいわけがないでしょう」


「救出した後に誰か女性が一緒じゃないと何かと不便ではないですか。できれば見知った女性の方がより安心できますわ」


「なら侍女を連れて行けばいいのでは?」


「それはダメだ」コンスタンタンの言葉に即座にリスニが否定した。


「事情の分からない非戦闘員の女性を連れて行っても守る者が増えるだけで足手まといになる、連れて行くなら信用ができて自分の身を守れる女性にしてくれないと」


「でしたらいい人材がいます。すぐに連れてまいりますのでしばらくお待ちください」そういうとサッとドレスを翻して扉から出て行った。


 アンリエッタの後ろ姿を見ていたコンスタンタンにリスニが声をかける。


「どんな人が騎士様はご存知ですか」


「暗部の者だと思うが、ちょっとクセがある女というか、人といえるのか、適任かもしれないし、でもあれじゃブツブツ……」と最後の方はごにょごにょと何を言っているのか分からなくなった。 


「要するに変な女なんだな」と健太郎は身も蓋もない事をいって一人納得した。


「暗部というとかなり腕の立つ人じゃないですか」とリスニは健太郎の言葉には反応せずに驚きの声でコンスタンタンに言う。


「身体能力はかなり高いです」


「それは有難い、戦力は必要なんでね」


 リスニがニタニタしながら可愛いといいなと呟いたとき乱暴に扉が開いてコルネイユ公爵がズカズカと入ってきた。


「これは陛下から仰せつかった褒美と王女殿下救出の支度金だ、ありがたく受け取れ。それからおぬしらが途中で逃げてしまうかもしれないのでな、こちらから一人兵士をつけてやる」


 ニヤッと笑ったコルネイユ公爵の隣には一人の兵士が立っている。兵士が挨拶をしようとしたその時、後ろの扉が開いた。


「それには及びませんわ、公爵閣下」とアンリエッタが戻ってきた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る