第9話ダンジョン攻略高等学校教官脇村志龍

 信じられない報告を職員から受けた。

 生徒3人が【夜ダンジョン】に侵入したというのだ。

 まさかとは思ったが、監視ドローンの映像を見せられて信じるしかなかった。


 それにしても、赤崎と青崎は分かるが、終夜がねぇ……。

 あのクソ真面目な生徒が……。

 無能のレッテルを貼られても授業は誰よりも真面目に取り組んでいた。


 あの目が嫌いだった。

 信じていれば夢は叶う、努力は実を結ぶなんて本気で信じていそうだった……。

 私の嫌いな誰かさんを思い出す……。


 ドアがノックされ彼が入ってくる。

 さあ、どんな裁きを下してやろうか? 退学どころか二度と社会に出られない様にすることも出来る……ああ、楽しみだ、希望に満ち溢れた少年を壊すのは……クククっ……」


 彼に事の経緯を説明するように促す。


「実は……」


 ナイトを冠する凶悪なモンスター、人の精神を瞬時に限界まで追い込む異常な量の魔素……。

 どれも初耳だった。


 さらには、彼の能力。

 秘められていたその力で危機を乗り切ったとのことだった。

 とても信じられないが、彼が【夜ダンジョン】から帰還したということは、事実なんだろう。

 彼がその能力に何故気付いたのか気にはなるが、ここは深く追求しないでおこう。


 それにしても面白過ぎる……。

 どれも世界をひっくり返す程の発見ではないか……?

 暫く眠っていた私の野心に火を付けてしまったではないか……。


 思い返してみれば、学校の教官など目指していなかった。

 研究職志望だったが、就活は全敗。

 何を血迷ったか、ダンジョンの攻略を指導している学校の教官になってしまっていた……。


 同世代のジーニアスは天才ともてはやされ、私は只の一教官。

 あんな無能が世界一の研究者だと……思えば何故私が終夜の事が嫌いかというと、ジーニアスと同じ目をしていたからだ。

 夢は叶う、努力は必ず実を結ぶなんて恥かしいことを本気で考えてそうな目だった。


 終夜の事は嫌いだが、ここは彼を利用させてもらおう。

 彼に絶望を与えるのも良いが、考えが変わった。

 こんな所で燻っていた私にチャンスが来るとは……。


 彼を利用して【夜ダンジョン】の秘密を解き明かす。

 そして世界一の研究者はジーニアスではなく、私だと世間に知らしめなくては……。

 終夜は不信そうだったが、渋々了承し、部屋を後にする。


「あはははははははははははははは!!!!!!!」


 笑いが止まらない。

 こんなチャンスが巡ってくるとは。

 私は自分の中にまだ野心が残っていることに嬉しく思うのだった。

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