第8話提案
翌日僕は教官室に呼び出されていた。
ここダンジョン攻略高等学校には、職員室の他に教官室という教官一人一人に与えられている教官が授業の準備をする部屋があった。
その他に、生徒を呼び出して授業のフィードバックをしてくれることもあった。
だだ、今日僕が呼び出された理由は授業のフィードバック等ではないことは用意に想像が付いた。
赤崎達を止めるためとはいえ(と言っても僕も好奇心があったから入ったわけだけど)、軽くても停学、重いと退学、さらにはそれ以上の罰が課される可能性もある……。
気が重いが、教官室の前でずっと突っ立っているわけにも行かないので、ドアをノックする。
「どうぞ」
「失礼します」
僕は部屋の中に入る。
呼び出されているのは僕一人だけで、赤崎達2人はいない。
別々に呼び出されるってことなのかな……。
「座りなさい」
「はい」
教官から着席を促される。
不思議なことに、教官の表情や声色からは怒りは感じられない。
どういうことだろう……? 今日は処分を言い渡されるのではないのか……?
「大変だったね……まさか【夜ダンジョン】に入ってしまうとはね」
「申し訳ございません……」
「いやいや、責めるつもりで言ったのではないよ」
「は、はあ……」
責めるつもりがない……?
「どういう事でしょう……?」
「まずは話を聞いてみない事には分からないからね」
「は、はあ……」
意味が分からない……。
話して許されることではないだろう……。
当事者の僕でもそう思ってしまうのに……。
僕は全て正直に話すことにした。
赤崎達が【夜ダンジョンに】入ろうとしていたこと。
最初はそれを止めようとしたけど、断られ、どうしようかと思っている時に自分の頭の中に【夜ダンジョン】に入りたいという欲求が湧いてきて、彼らを追って自分も入ってしまったこと。
【夜ダンジョン】の内部で起こったこと。
僕の能力のこと。
流石に創造主様のことは信じてもらえないと思ったので、そこら辺は適当に濁しておいた。
「なるほど……ナイトを冠する昼ダンジョンにいるモンスターを遥かに超越するモンスター、入った途端異常な量の魔素により、精神に異常をきたすとな……興味深い……」
教官は考え込んでおり、怒られるのを覚悟していたが、寧ろ楽しそうだった。
どういうことだ……?
「あ、あの、今日は僕に処分を言い渡す為に呼ばれたのでは……?」
「処分? 何時私がそんな事を言った?」
確かに言ってはいないが、ここに呼び出されたということは処分を言い渡されるしかないのでは……。
益々分からない……。
「ああ、君が気にしているのはそのことだね? 安心しなさい、何も処分などないから」
「そんな馬鹿な……あんな大事件を起こしておいて……赤崎達が先に入ったとはいえ、僕も同罪ですから……」
正直言って裁いて欲しいという気持ちがあった。
勿論学校に残りたいけど、やってしまったことは事実だから……。
「学校の上層部には言ってないよ。言う予定もない。職員から報告を受けて私の方で話を止めておいた。ドローンの映像も残ってはいるが、それも上に見せる予定はない。それにしても【夜ダンジョン】の秘密か……面白い話じゃないか、クククっ……」
理解不能だった……。
さっきは目の前の人を楽しそうと思ったが、今は怖いとしか思えない……。
「今まで通り普通に暮らしたまえ。周りに気付かれないようにな。そして絶対にこの事を口外しないように。残りの2人にもその様に話をしておく」
「は、はあ、分かりました……」
本当はいけないことだと分かっている……。
でも僕は学校を続けたいので、教官の提案を飲むのだった……。
「再度釘を刺しておくが、周りには気付かれてはいけないよ」
「分かりました……では、失礼します」
僕は教官室を後にした。
入学前のワクワクとは180度違う嫌な感情が胸の中を渦巻いていた……。
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