第7話帰還
赤崎達のことを完全に忘れていた。
2人に目を向けてみると茫然自失といった感じで地面にへたり込んでいた。
精神崩壊まで行ってなくて良かったが弱り切っていた。
「「……………………」」
可哀想という気持ちもあったが、2人が【夜ダンジョン】に入らなければこんな事態にはならなかった。
創造主様と出会えたことで気は紛れたが、とんでもない事をしでかして自分達を命の危険に晒して腹が立った……。
「「……………………」」
「てい!!!」
「「いだ!!!」
僕は2人の頭にチョップを食らわせる。
いつまでも地面にへたり込まれていては困る。
こんなところに2人を置いて行くわけにもいかず、我を取り戻させる為に取り合えずチョップしてみた。
「……なんだ、無能か……いてえな……何しやがる……」
赤崎が声を発する。
憎まれ口を叩く余裕はあるのか。
「なんだじゃない!!! しっかりしろ!!! いつまでもこんなところにいるつもりか⁉ 脱出するんだ!!! 色々言いたいこともあるけど、取り合えず帰るぞ!!!
さっさと立て!!!」
「うるせえな……こっちは疲れてるんだよ……」
疲れたのはこっちのセリフだ。
こいつらは自分たちが何をしたのか未だに自覚していないのか……。
「いいから早くしろ!!! 置いて行くぞ!!!」
僕は自然と口調が荒くなる。
こんな奴らに少しでもビビっていた自分が情けなくなる……。
だが今はそんなこと言ってる場合じゃない!!! 早く【夜ダンジョン】から脱出しないと。
脱出する方法には心当たりがあった。
創造主様が僕の能力について説明してくれた時に、ピンときた。
試したいことがある。
僕は2人を連れて入口まで戻ってきた。
入ってきたときにあった空間は外壁と一体化しており、一見閉じ込められた様に見える。
「……何だよ……出られねえじゃねえか……俺達、一生この中か、ウケルな……」
「うるさい!!! 黙って見てろ!!!」
僕は再び口調が荒くなる。
こんな奴らに優しく説明してやる義理もない。
僕が入口の外壁に手を触れようとした瞬間、外壁が消滅した。
僕が立てた仮説が証明された。
僕が触れたモンスターは消滅する。
なら、同じ魔素で構成されているダンジョンの外壁も消滅するのではと。
【夜ダンジョン】から出られる。
一生この中で生活しないといけないと覚悟した場所から。
嬉しくて涙が零れる。
【夜ダンジョン】の入口には職員さんがいる。
こちらの存在に気付いていない。
当たり前か……百歩譲って外から中に入ろうとする者はいるかもしれない。
だが、外から出ていこうなんて誰にも思いもしないだろう……。
「あ、あの……」
ずっとこのままというわけにも行かないので、職員さんに声をかけた。
「う、うわあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
職員さんは腰を抜かしてしまった。
当たり前だろう……誰だってそうなる……。
「な、何だね……君たちは……な、何故、中から出てきた⁉」
「それはですね……」
僕は事の経緯を一から説明した。
「なるほど……とんでもない事をしでかしてくれたね……まあ、私も一瞬とはいえ
席を外してしまったからね……私の責任問題もあるから学校側には報告したくない気持ちもあるが、そういうわけにもいかないね……監視ドローンに、君たちが【夜ダンジョン】に入っていくところを撮影されてるだろうから……」
「職員さんは悪くないです!!! こいつらが全て悪いんです!!!」
僕は2人の頭を掴んで無理やり頭を下げさせる。
「「………………」」
「この件はまた明日にでも学校側から呼び出されることになるだろう……」
「分かりました……申し訳ございません……」
学校側には全て正直に話そうと思う。
許されるわけはないと思うが……。
僕達は退学含めどんな処分でも受け入れるしかないけれど、職員さんは首にならないでほしいと思う……。
馬鹿2人の被害者なのだから……。
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