第3話【無能】
赤髪と青髪の目つきの悪いクラスメイトは、赤崎と青山という名前である。
赤崎は炎のスキルを獲得し、青山は氷のスキルを獲得した。
今日はダンジョンのB5Fまで来ており、低級モンスターが出現していた。
「おら、モンスター共、踊れよ! はははは!!!」
「死ね! ザコが!」
2人のスキルがモンスターに炸裂し、モンスターの体が霧になって消滅する。
教官の説明によれば、モンスターを構成している物質が魔素に還っていくということだった。
「こら! そこ、調子に乗らない!」
「へ~い、すんません」
「ははは、強くて申し訳ない」
2人は、教官から注意されるが全く反省している様子はない。
僕もモンスターを倒したかったが、教官から手で制止された。
まるで『君には無理だ』と言われているような気になった……。
「お~い、お前はモンスター倒さないのかよ? 無能! あ、悪い、倒さないんじゃなくて倒せないのか、あはははは!!!
「間違いねえ! はははは!!!」
「………………」
相変わらず無能呼ばわりされているが、言い返すことが出来ない……。
事実だから……。
「こら! 2人共やめなさい!」
聖さんだ。
毎回聖さんに助けられてるな僕、情けない……。
「お~、怖い……優等生さんは……」
「おい、行こうぜ……優等生ごっこには付き合ってられねえぜ……」
2人は、鬱陶しそうに去って行った。
「聖君、どうなってるんだね? 2人には指導しておくように!」
「申し訳ございません。教官」
聖さんは深々と頭を下げた。
聖さんは何も悪くないのに……悪いのは、あの2人じゃないか! 教官への怒りがこみ上げてくるが、僕はそれを口に出せなかった……。
「聖さん、ごめん……」
「え、何が?」
「や、だから、2人から助けてくれて」
「クラスメイトが困ってたら助けるのは当たり前でしょ?」
聖さん、良い人過ぎるだろ! それに比べて僕は世界一のダンジョン攻略者になるって決めたのに情けないな……。
聖さんはクラスメイトの治療に当たっていた。
強いモンスターが出てこないし、教官が危険がないように目を光らせているので、クラスメイト達は傷を負うことはなかった。
しかし、ダンジョンによる人体への悪影響はどうしようもなかった。
体の痛みや、吐き気、倦怠感、イライラや、集中力低下等の精神的不調を訴える者も少なくなかった。
聖さんの回復スキルは、体の不調だけでなく、精神不調も和らげることが出来た。
ただし、体と精神の崩壊が起こってしまうと、聖さんのスキルでもどうすることが出来ないので、ダンジョンにおけるタイムマネジメントはダンジョン攻略における最も重要な要素の一つだ。
「だる……家帰って横になりたい……」
「気持ちわる……吐きそ……」
「皆、頑張って! 直ぐ回復するから」
「いや、その必要はない聖君。そのまま力を使い続けていると君が倒れてしまうよ。今日はここまでにしよう」
「畏まりました、教官」
教官が本日のダンジョン攻略を切り上げるよう指示する。
腹が立つこともあったが、流石プロ。
ダンジョン攻略におけるタイムマネジメントを心得ている。
「それでは、転移装置を使って帰るぞ。使い方は覚えているな?」
転移装置。
ダンジョン研究で世界一有名なジーニアス博士が開発した瞬間転移装置。
その装置に触れると入り口や、自分が行ったことのある他フロアに瞬間転移できる。
高級品で1台数億円するが、開発当初は1台数兆円した。
長年の研究によりコストカットに成功。
人類の進歩は凄い!
ダンジョン内の魔素を使用して瞬間転移を可能にしているとのことだったが、僕の頭では何を言っているのか分からなかった……。
そして、クラスメイト達がモンスターを倒せるようになってきて、僕はおいていかれている気になった……。
だが、それとは別に気になったことが、クラスメイト達がダンジョンの魔素による人体への不調を訴えているのに、僕には何の不調の自覚症状がなかった。
ダンジョン外にいるのと全く一緒。
初めてダンジョンに足を踏み入れた時には、人によって耐性が違うのでたまたまその時には症状が出ないだけと思っていたが、もう何度かダンジョンには足を踏み入れている。
それに僕は【ダンジョン適性零】、初めてダンジョンに足を踏み入れる時には魔素の影響によって体が消滅してしまうのではないかと脳裏をよぎったが、完全に杞憂で、逆に全く影響がなかった。
分からないことばかりだが、僕にとっては悪い影響ではないのでポジティブに受け止めることにした。
なんたって僕は世界一のダンジョン攻略者になる男なんだから!
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