第2話初ダンジョン

 今日は実際にダンジョンに足を踏み入れる、初ダンジョン潜入授業だ。

 ダンジョンに初めて足を踏み入れた時に、能力が手に入ると言うことで、皆テンションが上がりきっていた。

 因みに、学校での能力測定は飽くまでも能力測定であり、その時点では何の能力を  獲得するかが分かるだけであり、実際に能力を獲得するのはダンジョンに初めて足を踏み入れた時だ。


 僕は【無能力】だから、何も手に入らないのかな……。

 なんて弱気になっている場合じゃない! 世界一のダンジョン攻略者になるって決めたんだから!


「皆、静粛に! 静粛に! ダンジョンの脅威を授業で伝えたはずだ! 浮かれている場合ではない!」


 浮かれ切っている生徒たちを教官は注意した。

でも、ダンジョンに足を踏み入れたら能力を獲得できるなんて、どうしたってテンション上がるだろって僕は思ってしまう。

 羨ましく思ってしまうが、僕は首をブンブンと振り、弱い心を振り払う。


「では、落ち着いたところで、皆ダンジョンに入りなさい」


 教官に促され、生徒たちはダンジョンに足を踏み入れる。


「お、おれ、攻撃系だ! お前は?」


「俺、補助系だ……ぱっとしねえな……」


 能力が手に入るだけで僕からしたら羨ましい限りだ。

 皆、それぞれ能力の上下はあるものの、獲得した能力に胸を高ぶらせているようだった。

 僕はというと、淡い期待はあったものの、やっぱり能力は獲得できなかった。

 スマホの画面を確認するも、能力獲得表示は出ていなかった。


 でも、落ち込んでいる場合じゃない! 世界一のダンジョン攻略者になるって決めたんだ!

 皆に置いて行かれるわけにはいかない!


「皆、静粛に、静粛に! 浮足立っていると命を落とすぞ」


 再び教官から注意され、生徒たちは静かになる。

 教官からダンジョンについての注意事項を聞かされる。


「以前授業でもやったが、ダンジョンの内部に足を踏み入れることで人体への影響がある。詳しくは割愛するが、肉体や精神への悪い影響だ。ダンジョン内に満ちている魔素が人体へ影響を及ぼしていると考えられている。さらに、ダンジョン壁には絶対に手を触れるなよ。ダンジョン内の大気に含まれる魔素とは比較にならない人体への悪影響があるぞ。脅すわけではないが、ヒヨッコ攻略者の腕の一本や二本、簡単に持っていかれるぞ。長時間のダンジョンへの滞在は命に係わるぞ。今日は数十分で引き上げるぞ」


「俺、ちょっと疲れたかも……」


「私、吐き気が……」


 30分程度ダンジョンに滞在したことで、生徒達は不調を訴えだした。

 これがダンジョンの人体への影響か……怖いな……幸い、僕は何の不調も感じなかった。

 人体への影響は、人それぞれなのかな? それにしても、皆辛そうだな……。

 こんな状態でモンスターなんか出てきたらどうなってしまうんだろう……。


「今日はモンスターは出ないと思うぞ。モンスターは深く潜れば潜るほど出現率が上がり、その凶悪度も増す。ここB1Fは出現率10%だな。このダンジョンは地下に潜って行くタイプだが、他のダンジョンでは上に昇って行くタイプもあるな。このダンジョンでは、1F潜って行く毎にモンスターの出現率が10%ずつ上がっていくぞ。B2Fでは20%、B3Fでは30%といった感じでな」


 教官は僕の心の声を見透かしたように説明してくれた。

 そうなのか……勉強になるな。


「それでは、本日はこれにて引き揚げるとする」


 教官はクラスメイト達の不調を察し、引き揚げるように指示する。

 教官に連れられ、生徒達はダンジョンを後にする。

 これが僕のダンジョン初潜入だった。

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