【ダンジョン適性零】、【獲得能力無】のダンジョン攻略者 ~【無能】のレッテルを貼られ、どれだけ馬鹿にされても僕は絶対に諦めない~
新条優里
第1話世界一のダンジョン攻略者になる男 終夜零
突如世界中に姿を現したダンジョン。
各国政府は対応を決めかねていたが、その危険性を鑑み破壊することを決定する。
だが、一切の兵器は効かず、外壁に傷を付けることさえ出来なかった。
そんな折、興味本位でダンジョンに立ち入った者達がおり、発生するモンスターとの戦闘を世間に配信し人気を得てしまう。
ある攻略者は、配信で世界一の有名人になった。
ある攻略者は、モンスターを倒した時に手に入るドロップアイテムを持ち帰り、換金し世界一の富豪になった。
ある研究者は、ダンジョンの謎を解き明かし、それをダンジョン外で発表した。それによって、この研究者は後世に名を残す世界一の研究者になった。
だが、この研究者による謎の解明も、全てのダンジョンの謎の一部でしかない。
各国指導者達は対応に追われていた。
彼らの共通認識として『ダンジョン内のことはダンジョン外の全てのことに優先する』というものがあった。
ダンジョンの全ての謎を解き明かせば、犯罪、貧困、飢餓、紛争、教育格差、医療、自然災害、エネルギー問題などの問題が解決されると考えた。
しかし、彼らはそれ以上の災厄をもたらす可能性があるとは、世界中のダンジョンに対する熱狂から想像力が失われていた。
日本政府も世界の流れに遅れるわけにもいかず、日本各地にダンジョン攻略を目的とするダンジョン攻略学校が続々と建てられた。
とある日本のBクラスダンジョン。
そこの周りに併設された国立ダンジョン攻略高等学校。
そこに本日入学する、ダンジョンで活躍することを夢見る少年がいた。
今日からダンジョン攻略学校に入学するぞ! どんな学校生活が待ってるんだろう? ワクワクするな。
あ、あれは入学手続きかな? あの受付ブースの人が先生かな?
「おはようございます、先生!」
「おはよう。元気がいいね。私のことは教官と呼びなさい」
「はい、教官!」
「よろしい。では、適正と能力を測定する。君の名前は?」
「
「では、ここの場所に立って。そうするとドローンが君のダンジョン適性と、発動能力を測定するよ。詳しい説明は授業でするとして、ダンジョン適性とはダンジョンでどれだけ活躍出来るかということの総合的な指標だね。%表示で表示されるよ。発動能力とは、初めてダンジョンに足を踏み入れた時の獲得スキルだね。攻撃系、回復系、補助系、精神系、その他の内、どれが自分の能力なのかがここで分るよ。それではここに立って」
僕は教官が指し示した場所に立つ。
僕にどんな可能性があるんだろう、ワクワクする。
僕の周りをドローンが飛んでいる。
それが測定しているのだろうか。
「むむ、これはどうしたことか……」
どうしたんだろう? もしかして学校始まって以来のとんでもない才能だったのでは。
やっぱり僕には凄い力が。
「これは……【ダンジョン適性零】、【獲得能力無】だと……そんな馬鹿な……どんなに才能がない者でも20~30%はある。それに漢数字表記とは……何時もはアラビア数字で表示されるのに……それに【獲得能力無】だと……国や学校はダンジョンに初めて足を踏み入れた時、必ず能力を獲得すると説明していたのに……」
え、僕才能ないの……? ダンジョンで活躍することを夢見ているのに……。
「……い、いや、取り乱してすまん……イレギュラーな事態ではあるが入学は許可しよう。どうかね? ここまできて辞めるとは言わんよね?」
正直今は辛いって気持ちはあるけど……。
「辞めません! 世界一のダンジョン攻略者になるって心に誓ったんです!」
「いい返事だ。励めよ」
「はい!」
僕の教室はここか、A組。
早速中に入ることにする。
クラスメイト達から何故か好奇の視線を向けられている気がする……。
僕に近づいてくる2人の男子生徒がいた。
赤髪と青髪の目つきの悪い男子生徒だった。
「おい、みんな聞いてくれよ! こいつ無能力だって! しかもダンジョン適性0だとよ、学校始まって以来の。所謂無能ってヤツだよ! 笑ってやれよ」
「おう、そうだ、無能だ、皆も言ってやれ、アハハ!」
僕が能力測定を受けている時に、こいつらが近くにいた気がする。
それを見ていたってことか……。
クラスメイト達はどうしていいか様子を伺っている。
苦笑いする者や、目を逸らす者。
一緒になって僕を馬鹿にしてくる者がいないのがせめてもの救いだが……。
「やめなさい!」
女性の制止する声。
入学生代表、聖莉音さんだ。
ダンジョン適正82%、入学生で唯一のAクラススキル持ちと教官から紹介されて、入学生代表挨拶を行っていた。
「貴方達、恥かしくないの! 同じダンジョン攻略者を目指す者として!」
「あ~、はいはい、優等生さん、お疲れ様」
「萎えるな~、折角からかってやってたのに」
2人の男子生徒は、自分の席に帰って行った。
「ごめんね、辛い思いさせちゃったでしょ?」
「何で君が謝るの? 何も悪くないのに……」
「クラスの秩序を守るのが私の責務だから」
どんだけ聖人なんだよ……。
良い人過ぎるだろ!
教官が教室に入ってきたので、皆自分の席に戻る。
「今日から皆もこの学校の一員になるわけだが、相応しい行いをするよううに」
「「はい」」
皆元気に返事をするが、先程の男子生徒2人は僕の方を向いてニヤニヤしている。
学校生活も長いのだし、気にしないようにしないと。
今は座学が行われている。
ダンジョンに実際に足を踏み入れる攻略授業はまだだが、実際にその時に命を落とさないように座学も疎かにしてはいけない。
「それでは、今日はダンジョンの人体への浸食について授業を進めていくわけだけど、聖さん、現在ダンジョンの人体への浸食で分かっていることは答えられますか?」
ダンジョンの人体への浸食か……怖い話だな……少し聞いたことはあるけど、どんなことなんだろう……。
「はい、教官。ダンジョン内部へ人が足を踏み入れた時に及ぼす影響は、短時間では肉体の痺れ、痛み、倦怠感、吐き気、長時間では肉体の腐敗、崩壊があります。精神への影響は、短時間ではイライラ、不安、集中力や、やる気の低下、長時間では、幻覚、興奮、恐怖状態になります。」
「よろしい。では、聖さん、理想的なダンジョン攻略とは?」
「はい、人体への影響を最小限に考えて、高適性、強能力者による短時間、複数人による攻略を理想と考えます」
「よろしい。付け加えるなら、ダンジョン適性とは、ダンジョンによる人体への影響を減らせるという側面もあるから、高適性者なら長時間の攻略も可能だね。実際に最近では高適性者が長時間攻略を行っているという報告もあるしね。ただし、短時間攻略が望ましいというのは間違いではないよ」
「はい、教官。畏まりました」
「では、座って」
「はい」
聖さん、流石だな。
僕には全然考えつかないや……。
でも、僕にも世界一のダンジョン攻略者になるという夢がある。
諦めるわけにはいかない。
休憩時間がくる度に2人の男子生徒は、僕のことを『無能、無能』と蔑んできた。
聖さんがいるときは大人しくしているけど、彼女が教室から出ると相変わらず僕を馬鹿にしてきた。
「知ってるか無能? この学校のクラス分けは能力毎ではなく、ランダムだとよ。お優しいこって。他の学校ではA組に優秀な生徒が集められて、Z組に無能が集められてるんだってよ、お前だったら確実にZ組だな、わははは!!!」
「はははは!!! 無能、無能!!!」」
「………………」
こんな奴ら相手にしてもしょうがない。
無視するに限る。
「無能は優秀な人間の言ってる事が理解できないってか? やっぱり、無能だな!!!」
「無能、無能!!!」
座学期間中は、2人はこうして僕を蔑みに来ていたが、無視していると帰って行くという日々を送っていた。
でもやっぱり世界一のダンジョン攻略者になるのは諦められない! 必ず見返してやるんだ!
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