第十話 小倉千秋は悩みを抱えていた。
「えっ」
雨宮が小さい声でそう呟きながら後退りする。
ゆらゆらと顔を青くしながら3、4、5歩と下がる。
下がって行く雨宮に机がぶつかり、「ガタッ」と言う音と共に体を小さくしていく。
「あぁ、あぁあぁあぁあぁあぁぁぁ」
雨宮がうめき声を上げながら、次第に頭を抱え出す。
すると千秋は大きな声で言う。
「あぁあぁ言ってないでどう言う事だが説明しろよ!
今ここに俺が
入ったとて、俺も『あぁあぁ』言うだけだろうし。
「————————」
雨宮が何か言うが、声が小さ過ぎて良く聞こえない。
またそれにもキレたのか、もともとキレてたのかは知らんが、またまた千秋は大きな声をだす。
「そんなちっちゃい声で言われても聴こえねぇんだよ!」
次第に千秋は歩いて雨宮に近づいて行く。
雨宮の前に立つと、千秋は片足を後ろに下げる。
まて、それは……
「やめろ!」
「やめて!」
不意に累花とハモる。
そんな言葉に聞く耳を持たないまま、千秋は雨宮の足を蹴る。
「んっ!」
雨宮は小さな悲鳴をあげる。
すると千秋はしゃがみこんだと思うと、雨宮の髪を掴み、上に持ち上げる。
千秋は強制的に上を向けた雨宮の顔に覗き込む。
「なぁ! どう言う事だよ! 笑舞!」
「どうもこうもないよ。そろそろケジメ付けなよ、千秋」
雨宮は小声でそう言い放った。
「知らねぇよ! 知らねぇよ‼︎」
千秋は雨宮の髪を離した。
「あー! イライラする! あー!」
そう言いながら千秋は雨宮を殴り出す。
腕、顔。至る所を殴る。
「ん、っ! ん」
バシッ、バシッ、バシッ……
雨宮は頭を守る為に手で頭を守って居るが、そこを狙って雨宮を殴る千秋。
「おい! 笑舞ァ! おい! おい‼︎」
マジで見逃せない。
俺も殴ったら立場が同じになる。
取り敢えず深呼吸をする。
「すぅー、はぁー」
そして一歩、千秋に向かって歩く。
その間に雨宮はまた一発殴られる。
そしてまた一歩、一歩。
少しずつ、少しずつ千秋に近づく。
「おい千秋」
俺は千秋を呼ぶ。
「お前は何がしたい」
「はぁ? 何がしたいって、腹が立つから」
「殴るんだ」
これはあれだ。頭のネジが外れてる人だ。
そんなやつは月に変わってお仕置きよ! サービスサービスぅ〜
「んだよ、笑舞(コイツ)は嫌といってねーから良いだろ、それに先輩にもされた。先輩がいない今は私がやりたい放題なんだよ!」
「先輩にされたってどう言う事だ?」
「入学当初、私は先輩に殴ら蹴られだったんだよ。そんで、その先輩はもう退学されてるし今は私の番だっつーの」
いや、だったつーのって言われたってそれ初めて聞いたし。
何だし何だしAG○。素材の会社A○C。
とりま、俺と同類って事な。
いやあのクソ先輩、俺の他にもやってたのかよ。それも女子に。
ま、別人って可能性もあるかもしれんがな。
「俺もそれ、やられてた」
「は?」
俺はそう言ったが、声が小さ過ぎて千秋には聞こえなかったらしい。ので、先程より大きな声でまた言う。
「俺もそれ! やられてたんだ!」
俺がそう言うと、千秋も千秋とて大きな声で話した。
「じゃあわかるだろ! 私の気持ち!」
「でもそれは違うと思うんだ!」
俺もやられて一週間も経たずに精神逝かれた身だからね。千秋のメンタルの強さは尊敬するよ。
何度も何度も、何度も何度も何度も何度もやられても、君はメンタル壊れることは無かっただろう。
だけど、精神面が壊れちゃったら元も子もないよね。
「何が違うんだよ! だって私、私!」
千秋は泣き出す。
「頑張って我慢したのに誰も褒めてくれないし、誰も助けてくれないし、誰も……誰も!」
「……そしてストレスの吐口が雨宮だった。と。でもさ、それが許されると思うの? 別の人にその苦痛を共有するの?」
「……」
「違うよね? 違うよね!」
「…………」
千秋が黙り込んだ。よし、言い負かしたぞ。と言う事で後は雨宮に任せる。
「雨宮、後はお前が頑張れ……がん、ば、れ……」
ハイだったこそ出てこなからったコミュ症がここに来て帰って来やがった。おかえり! いや帰って来なくて良いよ、出て行きな!
と言ってもまだコミュ症君はガキらしく、親離れが出来ない為まだコミュ症君はここに止まるらしい。早く巣立ちしてくれ。
「ねぇ、千秋」
雨宮が千秋に話しかける。
すると、千秋は返事する。
「ん、何」
千秋は今、あまり怒ってないよう。
根拠は? ねぇよ。
「もうこんな事、辞めようよ」
「うん」
「昔みたいに仲良くやろうよ」
「うん」
「…」
「……」
「………」
そして雨宮、千秋は2人して黙り込む。
最初に口を開いたのは笑舞だった。
「ごめんね、千秋。千秋が悲しい思いしてたのに支えてあげれなくて」
「いや、笑舞は謝らなくて良いよ。謝るのはこっちだよ。ごめん。ごめん。……ごめん!」
千秋がそう言うと、雨宮は千秋に近づき千秋を撫でる。
「大丈夫、大丈夫だよ。これからも宜しくね」
そう言って雨宮は千秋に微笑みかけた。
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