第九話 雨宮笑舞の嘘はありきたりだった。

 雨宮の腕にある無数のあざを見つけてから生物部の教室内には、不穏な空気が流れる。

 そんな中、俺が笑舞に聞く。


「コレって何?」


 俺がそう聞くと雨宮は手の前にあった手を少しずつ下に持って行き、目を覗かせた。

 それと同時に雨宮も話し出す。


「コレは、ちあ……」


 雨宮が何か言いかけた時千秋はそれを遮るかの様に言う。


「笑舞はDVを受けてるのぉ。だからこんなに痣があるの」


 千秋《アイツ)嘘の吐き方は上手いのにその吐いた嘘が下手くそだな。

 嘘と分かっていても本当にDVを受けていたらそれは事件だ。なので一応確認として雨宮に聞く。


「雨宮、それは本当か?」


 雨宮は俺と千秋を交互に見た後に話し出す。


「……そう。コレは、父親にやられたもの……」


 そう来ると思っていた。

 だって雨宮は千秋に従って居るんだもの。

 奴隷って奴だ。

 犯人が千秋だって事は分かっている。

 あの千秋の雨宮に対する態度、言葉。

 絶対雨宮の事大事に思ってねぇじゃん。

 っあそういえば、『〜〜じゃん』って神奈川弁らしいね。クソ情報じゃん。

 チッ。どうやって嘘だって吐かせ……そうか、その手があったか……!

 どんな方法だって? 行動で見とけ。


「そうか、父親にやられたのか。仕方ないな、じゃあ通報するしか無いね」


 嘘なんだから通報なんてされたらひとたまりも無いだろう。

 だから俺はそう言った。

 そして思惑通り雨宮は動揺する。


「え、嫌、なん……で、通報……する……の?」


 雨宮が声を震わせながら言う。


「決まってるじゃん。だってDV受けてるだろ? そんなクソ親父なんて通報しちまってサヨナラバイバイしか無いだろ? あれ? 俺変な事言ってるか?」


 あれ? もしかして僕、かなりキショい?

 …

……

………

…………キショいな。それもかなり。

 そして雨宮は泣き出した。


「なんで泣くんだよ。そんなクソ親父——」


 俺がそう言うと、雨宮は大きな声を上げる。


「お父さんは悪く無い!」


 雨宮には可哀想だが俺にはこんな事しか出来ない。

 

「DV受けといて? 親父は悪く無いって? 何でそんなクソ親父構うんだよ」

「お父さんをクソ親父って言わないで! お父さんは……お父さんは……!」


 俺と言う雨宮の話には何故か千秋が入ってこない。こう言う時こそ入って欲しかったんだけどになぁ。

 まぁ良い。

 雨宮が少し間をとってからまた話す。


「実は……全部……嘘」

 

 おおむね予想通りだった。

 だってサァ、そんなクソ人間普通庇うか? あんなに。※個人の意見です。

 累花は生物部の看板ーー兎を触っていた。

 それは俺のウサ太郎なのに!

 っあ今は雨宮と千秋の話だから、そっちに移らないと。


「じゃあ逆に聞いちゃうと誰にやられたの?」

「それは……」


 雨宮がなにか言いかけている中、1人の女子が机を強く叩く。

 ……それは千秋だった。


「なぁ笑舞、どう言う事だよ」


 千秋は見た感じ、かなり怒っている。と、見られる。

 はぁ。めんどくせぇ。

 水野先生来ないかな……

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