第十一話 憧れの先輩寺田秋さん

 雨宮、千秋騒動から大体4時間が経ち、現在の時刻は7時頃。

 あの後は雨宮と千秋で兎のウサ太郎と触れ合ったが、千秋がウサ太郎に噛まれたので雨宮と共に保健室に行った。

 隼人はどうなったって? すぐ帰ったよ。千秋について行って。マジでリア充死ねよ。

 それから雑談や動物との触れ合いなどして1時間を潰した。

 え? 嘘つくなって? チッ、勘のいいガキは嫌いだよ。

 そうだよ。10分を雑談と触れ合いで潰して、残りの50分はスマホをいじって潰してたよ。

 ……で今はなにをしてるかって? バイトだよ、バーイート。

 はぁ、面倒くせぇ。

 バイトなので、お金は貰える。いや逆に金が貰えなかったら事件だろ。訴えろ訴えろ。

 ここはレストラン『Sow』、どっかのアイスと同じ名前。その場合は『爽』だけど。

 そしてここでバイトを始めた理由、冬先輩に入れられた。冬先輩もやってるらしいんだけど、今日はシフトじゃ無いらしい。

 そしてバイト内容は簡単。注文を聞いてその後注文を客の所持ってくだけ。はぁー、面倒臭ぇ。

 

「おい、累! 注文入ってんぞ! 早よ行って来い!」


 シェフに怒鳴られる。分かりましたよ、はいはい、行って来ます。


「ご注文は何でしょうか?」


             *


 俺が10分休憩して居ると、あちらもバイトさんらしき男性が何度も此方覗いてくる。

 チラチラ鬱陶しいなぁ。……でも駄目だ駄目だ、相手は大人。喧嘩挑んだら逝ってまう。

 体格は少し痩せ気味。いや、モデル体型って言った方がいいだろう。

 そして高身長。おまけにイケメン。

 見た瞬間からわかる。コイツは俺の敵だ。

 俺が先輩の前に座りスマホをいじり始めると、前の方から微かに声が聞こえる。


「少年、少年」


 うっわぁ、イケヴォだ。マジで敵だ。

 うっわぁ、うっわぁ。

 俺が少し無視をすると、先輩は先程よりも大きな声で俺に話しかける。


「少年、聞いてるかね、少年」


 はいはい聞いてますよ、先輩。『わたくし、敵とは話さない主義なんで。それでは……』と言いたい所だが、そんなの言ったらすぐ殺されるので言葉を飲み込む。


「う、聞いてます」

「少年よ。僕も一応大人なんだぞ? 僕は大丈夫だが、他の大人には気を付けるように」


 なんか注意されたし。的確だし。

  

「すみません」

「いやいや、謝れって言ったわけじゃ無いからさ。ほら、頭あげて上げて」 


 そう言い、先輩は手の甲を下に向け、手を上げ下げする。


「そういや、少年は電車。どこ方面なの?」


 凄いグイグイ来るなぁ。妙に馴れ馴れしいってか、懐かしいってか。知らない人に電車の方面教えちゃ駄目って父親が言ってたので。……今知り合ったか。

 教えちゃっても大丈夫だろう。良い人そうだし。


「上り、渋谷方面です」


 俺のその言葉を聴くなり先輩は『ぱぁ』っと笑顔になる。


「そうか! 一緒だね! っあ。すまんすまん……ってか休憩、時間だけど大丈夫?」


 っあ本当だ。準備しなきゃ。

 そして俺はスマホを仕舞い、立ち上がった後にかみさまの所へ向かったのだった。

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