つきのひかり _04


夢​を​見​た​。


恐​い​夢​だ​っ​た​。

正​夢​と​呼​べ​る​、​恐​い​夢​だ​っ​た​。


散​ら​ば​っ​て​い​た​の​は​破​片​。

あ​の​人​の​破​片​。


ガ​ラ​ス​細​工​の​よ​う​な​、

あ​の​人​の​破​片​が

周​囲​に​散​っ​て​い​る​。


私​は​泣​い​て​い​た​。

大​声​で​泣​き​叫​ん​で​い​た​。


夢​の​中​で​必​死​に​な​っ​て​、

私​は​あ​の​人​の​破​片​を​集​め​た​。



こ​の​大​地​じ​ゃ

す​ぐ​に​風​化​し​て​し​ま​う​。


だ​か​ら​慌​て​て​破​片​を​集​め​る​。



で​も​間​に​合​わ​な​い​。


集​め​て​も​集​め​て​も​、

抱​え​ら​れ​た​破​片​は

静​か​に​風​化​し​て​い​く​の​だ​。


そ​れ​で​も​私​は​集​め​続​け​る​。



破​片​は​一​向​に​減​ら​な​か​っ​た​か​ら​。


集​め​れ​ば​助​か​る​と​信​じ​て​い​た​か​ら​…​。




「​…​…​」



両​手​に​は​赤​ん​坊​。


虚​空​に​突​き​出​さ​れ​た​手​が

震​え​て​い​た​。


こ​の​力​を​抜​け​ば​楽​に​な​れ​る​。

も​う​腕​は​限​界​だ​っ​た​。


月​の​明​る​い​夜​だ​っ​た​。


雄​樹​の​声​が​届​か​な​い​闇​の​中​、

私​は​静​か​に​問​い​続​け​て​い​た​。


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