第4話
学生故の義務である、一日分の学校教育を受けた後、LHRも終わる。今日は“私に対する罰”のある金曜日。
“お願いだから、次の日の事を考えなくて良い金曜にして欲しい”と、ユウの陳情があったので、かつての私はそれを受け入れた。
私としては、身体に痕を残したまま登校して、ドギマギするユウを見るのが愉しかったのだけれど……少しばかりの譲歩は、関係を長持ちさせる秘訣なのだと理解している。
でも今日は、帰るより先にやりたい事があった。なので、ユウにその事を伝えるべく、まだ彼女の取巻きがいない内に彼女にメモを渡す。
「天見さん、これ」
「……ん」
すぐさま離れれば、ユウの友人が彼女を囲うように集まってくる。
私とユウは、クラスにおける所属が違う。クールなユウは友達が多く、所謂カーストトップ。対して私は……誤解を恐れず言うなら、気ままな一人ぼっち。
もちろん、敢えてこうしている。
改めて、帰る為に荷物を取りに自身の席に向かいつつ、耳をすませばほら、こんな会話が聞こえてくる。
「天見、曲輪さんと何かあったの?」
「うん、親が知り合いだから、その事で」
「まぁそんな事だろうと思ったよね。あんなお高くとまった人、ユウの友達な訳ないし」
それから始まるのは、私に向けた罵詈雑言。同じ教室にいると言うのに遠慮のないそれは、私に聞かせる為に憚る事なく続いていく。
私は、ユウが何を思ってもそれらの言葉を遮る事がないように、“お願い”している。
これもまた、ユウの心にステキな罪悪感を与えるでしょう。……それにユウには友達に囲まれていて欲しいと、願っている。きっと彼女の未来の為にはその方が良いと、理解しているから。
気にしていない風を装って鞄を手に取り、足早に教室の出口へ。……少しだけ気になって、ユウの方にちらりと視線を向ければ、困ったように笑う彼女と目があった。
困らないでほしい。これは、私なりに貴方の為を想ってそうしているのだから。
ただその上で、嫌な思い出は良い思い出より強く残ると理解している為に、“この関係”を築いた。
……だから、その交わされた視線を振り切るように、私は教室を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます