第43話
玲架は不安そうな表情をした。その時、ドアがゆっくりと開いた。
てっきり富田がマリトゥ・レゲアを連れて帰ってきたと思い、山村と玲架はドアの方を振に向いた。そこにいたのは、ゲベル・バルカル遺跡で別れたはずのヒナタだった.
今日はトーヴではなく、パリッとしたスーツ姿だ。
「富田は帰ってこないよ、たった今、秘密捜査官によってジャバ空港で逮捕されたわ」
ヒナタは得意げに言った。
「ヒナタ、全く状況がわからない」
山村は混乱した。ヒナタは胸ポケットから警察手帳を取り出した。
「指名手配中の柳村玲架、詐欺窃盗容疑で逮捕する」
ヒナタがそういうと、後ろから警官が現れた。山村の頭は混乱した。一番後ろから初老の男性が現れた。日本を出発した時、山村の万年筆を拾ってくれた男だった。男はゆっくり玲架のそばに行った。
「ご自分のお名前を言ってください」
「柳村玲架です」
「柳村玲架さん、詐欺グループの一人である、あなたを逮捕します」
男は玲架手首に本物の手錠をかけた。首を項垂れた玲架は数人の警官に連れられて行かれた。
山村は時計を見た。放送まであと10分だ。
「ヒナタ、本当に秘密捜査官なの?」
「ヤマムラ黙ってて、ごめん。柳村玲架と富田敬司は、インターネットで窃盗の実行犯を募集して、スーダンから指示を送って、実行犯を操って詐欺や窃盗をさせていたんだ。自分の手は1ミリも汚さずに。ヤマムラは隠れ蓑のために同行させられていたんだ」
「じゃあ、どうしてヒナタは僕を助けたんだ」
「あなたが共犯か、それともただの同行者か確かめるためよ」
「そんな・・・」
「ただし、それは最初だけ。すぐにあなたがタダ同行しただけで、何も知らないとわかった・・・」
時計を見ると、放送まであと5分になっていた。
「どうして、玲架さんは放送局に来たんだ?」
「彼らはあなたを人質にして放送局を占拠して、窃盗の実行犯に釈保を要求するつもりだった」
山村は、時計を見た。放送まであと、3分だ。今から山村が、生まれて初めて書いた放送台本に沿って。音楽番組が始まるのだ。バンドのリーダーが痺れを切らして声を上げた。
「ヒナタ何か歌える?」
山村は思わずヒナタに声をかけた。番組ディレクターがカウントダウンを始める。
「え、なにが始まるの?私が歌うの?」
「そう、君が歌うんだ」
山村は、ヒナタの目をみた。
続く
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