17時50分

 現在17時50分。

日が傾き始めた街で空白を取り戻すかのように近況報告が始まる。

ほんの二か月前までは毎日毎日顔を合わせていたのでどこか不思議な感じだ。


 お互いに見慣れない制服に驚き、学校がどうだの部活がどうだの喋り、思い出話に花を咲かせ、意味のないふざけ合いをし、息もできないくらいに笑い合う。

どんな時でも誰かしらがしゃべっているし、話題は行ったり来たりいきなり飛んだりする。“いつも”が戻ってきたようだった。


 この三人でいるといつも時間を忘れてしまう。というか本当に忘れていた。

ふと気づくと辺りは真っ暗で完全に日が沈み切っていた。

慌てて時間を確認するためにスマホを開く。何時?と彼が顔を覗かせてくる。


「え、やば。20時30分なんやけど。」


「うぉ結構喋ったな。二人門限とか大丈夫なの?俺は家すぐそこだからいいけど。」


「私やばいかも。」


「じゃあお開きにすっか。」


「の前に写真撮らん?ほら、全員制服だし。」


そんな私の提案に二人も賛同する。

あいつ、彼、私の順に立って内カメにしたスマホを構えてみるけど二人とは身長差がありすぎて画角に納まらない。ギュっと寄ってみたり背伸びしてもダメだった。


「じゃあチビを真ん中にして端っこの俺がカメラ持つか。」


「チビじゃないですー--っだ。」


「ほら、チビだから写っとらんで笑」


 ドジという生物はこういう時にこそやらかすものである。

高校生三人がぎゅうぎゅうに寄っている状態でドジな人間がジャンプするとどうなるか。案の定着地で後ろにいた彼の足を踏み、バランスを崩してそのまま後ろに倒れた。いや、正確にはだった。


「っあぶっねー。」


そんな声と共にギュっと瞑っていた目を開く。

お腹には彼の腕が回っており、私自身は彼の胸の中だった。


そう。世界はこの状態を“バックハグ”と呼ぶ。


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