05 織姫さんに見てもらえるよーに




(駅ビルのようなビル型の商業施設。上階の本屋から出てくる2人)


「参考書選ぶの、付き合ってくれてサンキュー」


「やっぱ英語が鬼門だな。マジでなんとかしないと……」


「あ! 見て見て、笹かざり! そっか、今日七夕かぁ」


「ねぇ、短冊に願いごと書いてつるしていいんだって!

 書こう書こう~」


(マジックで、きゅ、きゅ、きゅ、と短冊に文字を書く)


「できたっ! 『キミとアタシが、志望校合格しますように』」


「キミは、なんて書いたの?」


「え、ナイショって、なんで! 教えてよぉ~」


「言っちゃったら叶わないって、マジ? それって初詣のときじゃない?」


「……一番目立つとこつるしてー! 織姫さんに見てもらえるよーに!」


「あ? 乙女ちっく?

 アタシは乙女だよ! 野獣かなんかと勘違いしてない!?」


「さんきゅー。お腹すいたし、早く帰ろ~」


(ピンポン、とエレベーターの扉が開く)

(エレベーターに乗り込む)

「あ」


「今日、触診もチューもしてない」


「大事なことだし! ご褒美のために勉強がんばってんのに」


「……大殿筋だいでんきん、さわっちゃえ」


「おしりじゃないよー、大殿筋!

 ……ふふ、痴漢されてるみたい? 同意のもとだからいーじゃん♪」


(少し間をおいて、ちゅっとリップ音)

「んっ」


(そのまま少し強引にキスを続ける「俺」)

「ふっ……んっ!」


「ちょ、こんなとこでっ……む、ん……」


(ピンポン、とエレベーターが止まる音)

(エレベーターの扉があき、人の声が聞こえる)


「お、降りますっ」


(慌ててエレベーターを降り、息を切らす主人公)

「はぁ、はぁ……!」


「あんなとこでするの、反則!」


「し、仕返し!?

 ……ってそぉか、アタシが先におしり……じゃない、大殿筋さわったのか……!!」


「でも、でも、ドア開いたらどうしようってドキドキしたんだから! もうっ」


「……じゃあ、願いごと、なんて書いたか教えてくれたら許してあげる」


「え……あ、アタシと、ずっと一緒にいられるように……?」


「……もうっ、バカ! ずるいやつ!!」


「もう、そんなの……もっと好きになっちゃうじゃん……」


「耳まで真っ赤って、うるせーっ!!」






 05 織姫さんに見てもらえるように fin.

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