02 ぜんぶキミにあげる



(放課後の教室。パタパタパタと廊下を走ってくる音)

(ドアがガラッと開く)


「お待たせー」


「ごめんね、ちょっと話し込んじゃってた。

 また勉強してたの? ちょーエライじゃん」


「ん?」


「なんか機嫌、わるい?」


「別にって……

 キミがそんな言い方すんの、絶対なんかあるでしょ」


「もしかしてさっき男子と話してたから?」


「そんなんじゃないけどって、絶対そうじゃん!」


「あの子、中学の部活の後輩なの。

 友達があの子のコト気になってるみたいで、連絡先とりついだだけ」


「……アタシがほかの男子と話してて、さみしかったの?」


「……うん。

 ……うんうん、そっか、キミが知らない男子だから、か。

 それはたしかに、心配しちゃうかもね」


(ガタン、と椅子をならして隣の席に座る)


「どうやったら、アタシがキミのことしか見てないって、信用してくれる?」


「……キス、してほしいんでしょ。当たり?」


「無言は、肯定ってことだね。

 ね、こっち向いて」


(ちゅ、と軽いリップ音)


「……ふふ、キミのくちびる、やらかいね」


(ちゅ、ちゅ、とすこしねっとりと唇を重ねる)


「ん、……っ、すき……っ」


(くりかえし重ねた唇がようやく離れて、息を漏らす)


「……かわいい、顔まっかっか」


「キス慣れてるって? ふふ、んなわけないじゃん」


「だって、キミがアタシの初カレだもん」


「キスのしかたくらい、ドラマでも映画でも観るでしょ」


「(耳元でささやくように)

 ……アタシが処女ってわかって、うれしい?」


「……ぶはははっ!!

 ダメだ、ほんとキミをからかうの、楽しくって……!!」


「ゴメンゴメン。

 でも、ウソじゃないから」


「アタシのこと信じてくれるなら、約束してあげる」


「(耳元でささやくように)

 ……アタシの初めては、ぜんぶキミにあげるよ」


「ふふっ。つぎはなにが欲しいか、考えといて♪」






 02 ぜんぶキミにあげる fin.

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