Day17 砂浜

 早朝の淡い光が涼やかに辺りを満たしていた。

 立ちこめる朝靄が、夢の続きのような幽玄さで照らし出される。

 旅人はテラスに立ってぼんやりと外の景色を眺めていた。

 ザザーン……ザザーン……。

 波が寄せては返す。

 しかし、ここはもう海の上ではない。

 びょうっと強い風が吹き、細かな砂が旅人の足元に吹き寄せられてきた。

 テラスの外は砂浜らしい。

 

 どんどんどん……どんつくどんつく……ぴーひゃら……ぴぃぴぃ……。


 太鼓を打つ音。笛の音。お囃子の如き音が風に乗って流れてくる。

 祭りの最中なのだろうか?

 こんな早朝だというのに?

「到着したようですね」

 突然、声をかけられて旅人はびくりとした。

 振り向くとイガタが、いつものように人工的な微笑みを顔に貼り付けて立っていた。

「ここは死者の国の浜辺です。旅人様が出会うべきお方のいらっしゃる国です。この国にいれば旅人様のいのちもいずれ取り戻せるものと存じます」

 イガタの口の端が耳元までキッと上がる。その瞳は朝焼けの色を反射してぎらりと鋭く輝いていた。

 

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