第14話 特訓開始
《レベル二百越えてやばいなぁ》
《俺達なんて豆粒やん》
《ユーイ以外いけないだろあんなとこ》
《そういえば攻略組どうした?》
《あいつらまだ七十層らしいぞ?》
《まじか………》
「いやまじか………あいつら元気にしてるんか?」
コメント欄を見て反応する。
すると、彼女にほっぺをつねられる
「いででででで」
「コメント欄見てる場合じゃないのじゃ! その調子じゃ千層なんて夢のまた夢じゃ!」
「ふぇい」
へいと返事しようとしたが変な声が出てしまった。
彼女に右腕を掴まれながら森の奥へとどんどん入っていく。
突然彼女が止まると、急に全身に寒気がする。
「な、なんだここ………」
「来たようじゃな」
木々が揺れ、地面も揺れているのを感じる。
木々が突然倒れ、俺達の目の前に、緑色の鱗を持つドラゴンが現れた。
「ママ!」
猛スピードで彼女向かって走り出す。
すると、誰かに背中を押され俺はドラゴンの目の前に立たされる。
「よいか? 童の子を旦那様の今の全力で受け止めてみるのじゃ!」
「そういわれてもなぁ」
ドラゴンが俺に覆いかぶさるかのように俺の前に飛んでくる。
俺は咄嗟に両手に力を入れ、ドラゴンに向かって両手を伸ばす。
ドーンという衝撃波と共に、骨が折れたような音が響く。
押しつぶされそうになる。
すると、白いオーラが俺の両手を包み込む。
「軽くなった???」
《おい。あのオーラ》
《ヤマタノオロチ戦で一瞬出てたやつだよな》
《あれやっぱなんか効果あったんかなぁ》
《魔法使いなしのバフとか強すぎだろ》
一瞬コメント欄に目が行く。
やはり、白いオーラが出ているようだ。
「今じゃ!」
彼女のその声と共にドラゴンを地面におろす。
なにが起こったのか分かっていない様子のドラゴン。
その足元で俺達はドラゴンの顔を見つめていた。
「ママ………こいつ誰?」
「童の夫じゃ、今お主を受け止めた力が何よりの証拠じゃしの」
「へぇ………ママが認めたんだ」
俺達の数倍の大きさのドラゴンがこっちをじっと見つめてくる。
俺は首を真っすぐにしてドラゴンの瞳をじっと見ていた。
青い瞳に緑色の鱗………フォレストドラゴンてとこか?
「紅羽、今の何だ」
「そうじゃのう。旦那様が眠っていたときに、飲ませた童の血の力と言っておこうかのう」
彼女は自分の腕に俺と同じ白いオーラを身に纏わせて言った。
その姿が、まるで神の様だと思ったのは俺だけでない。
《紅羽ちゃんて、神様?》
《あのオーラ身に纏った紅羽たん神々しいなぁ》
《一瞬女神に見えたのは気のせいか?》
《俺も見えたぞ》
《私も》
「血の力か」
「旦那様には人間の血と童の血が適合した特異体質になったわけじゃ」
「いやいや、検査でなんともなかったろ?」
「そうじゃな。でも、そのへん色々と調整できるから大丈夫じゃぞ?」
「そういう問題じゃねー!」
俺いつの間にか、人やめてたのか………。
コメント欄を見ると、
《そういえば、ユーイに自分の血を飲ませてたな紅羽ちゃん》
《毎日飲ませててよなぁ》
《血を抜くとき痛がっててのを俺らは知っている》
《三人とも古参やん》
《当たり前だろ! 今じゃリアルでたまに話す中よ!》
《まじかああああ》
《いいなぁぁ》
《そういえば紅羽ちゃん昨日ダンジョンの入り口前で見たよ》
《私も》
ほんとに飲まされたみたいだ。
落ち着こうとした途端、両腕に激痛が走る
「っ………!」
あまりの痛さに声が出なくなり、その場で倒れこむ。
「オーラを出して両腕を覆ってみるのじゃ」
かすかに彼女の声が聞こえてきた。
あまりの激痛に意識が飛ぶも、すぐに目覚める。
両腕を先ほどみたいに、力を入れる。
「その調子じゃ。治れでも元に戻れでもよいから思いながら力を入れるのじゃ」
彼女の言うことが分からず困惑する。
元に戻りやがれええええええ!
俺は心の中で叫ぶ。
「あれ?」
気が付くと笑顔で笑っている彼女の顔が近い。
頭の後には柔らかい感触が二つほどある。
また、膝枕されているようだ。
「よくやったぞ! その調子ならこの層は大丈夫じゃ」
と彼女は言うと俺の頭を撫でた。
撫でられるのに慣れていなく、反応に困る。
「頑張ったの」
彼女のその言葉と共に、なぜか俺は泣いた。
彼女の膝で何度も俺は声を上げて泣いた。
まるで、何かを訴えかけているかのように。
「ママ、僕もう帰るね」
「すまぬな、旦那様の相手になってもらって」
「いいよ。じゃまたね」
いつの間にか緑色のドラゴンが周りから消えていた。
彼女の隣で気にもたれかかって、葉っぱの間に入ってくる光を眺める。
《今回色々起こりすぎだろ》
《ホントそれ、まだ二時間ほどしかたってないだろ?》
「ほんとそうだよなぁ。さすが最新層」
と俺はコメント欄を見て反応する。
「お母様、レベリングはもういいのです?」
妖精たちが俺達の周りに集まりだす。
「もうやらなくてよい。旦那様のレベルは今、百を超えておる」
「は? いやそんなわけ」
ステータスを開くと、レベル百六と書かれていた。
見て思わず声が出てしまう。
「な、なんじゃこりゃ!」
「オーラの解放と汎用を教えたことで成長の枷が解けたにすぎぬぞ?」
「いやいや、もっとモンスター狩るのか思ったわ」
「む? その方がよかったかの?」
「え………いや、結構です」
「あ、それとも童が相手になればよかったかの?」
「それはそれで、やりにくんだが」
「安心せい、旦那様のレベルでも童に傷をつけるのはまず不可能じゃ」
彼女に俺の頭をポンポンと優しく叩かれながら言われる。
ちょっと安心する反面、彼女の強さを実感する
「さて、雑魚掃除じゃ」
と言って彼女は立ち上がる。
俺も立ち上がり、森の出口の方へと向かい歩き出す。
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