第13話 草原エリア???

『階層を選択してください』

 

 ダンジョンに入ろうとするそれは突然現れた。


「ちょっと待ってくれ、紅羽」

「なんじゃ?」


 俺は、彼女の左手で掴む。

 右手で百一層のボタンを押した。

 

 すると、突然目の前が真っ白になる。

 きづくと、そこは、草原だった。

 

「階層転移か。いつの間にそんな魔法手に入れてたのじゃ?」


 彼女が首をかしげて言う。

 俺はわからず首を横に振った。


「解放者の称号と関係あるかもしれぬな」


 そんなことを話していると、目の前にこちらに向かってくる砂吹雪が見えた。

 刀を構え、臨戦態勢を取る 

 右手の小指で配信開始ボタンを押す。


《待ってました!》

《こん》

《こんにちは》

《こんにちは》

《こんにちは》


「今百一層にいます」

 というとコメント欄が盛り上がった。


《百一層て解放されたとこだよな》

《草原かよ!》

《今一瞬ドラゴン写らなかった?》

《気のせいだろ》

《それ》


 砂吹雪が晴れるいきなり背中を誰かに叩かれる。

 あまりの激痛に背中を片手で押さえ、片手で刀を持つ。

 目の前から棍棒を持ったトロールが猛スピードでこっちに向かってきた。

 刀を構え一気に切りつける。


「がああああああ」


 と雄たけびをあげながらトロールは俺の方へと棍棒を振り落とした。

 棍棒を片手で受け止める。

 だが、その力で刀を持っていた腕の肩が外れる。


「紅羽!」


 咄嗟に彼女の名前を言う。

 すると、目の前に血を全身に浴びた彼女左手で棍棒を掴んだ状態で立っていた。


《紅羽たん。男!》

《紅羽ちゃんすこすこすこ》

《かっこいいんだけど紅羽ちゃん》

《てか、トロール強すぎだろ。こんなに強かったか?》

《いや、百層まではこんなに強くなかったはずだ》


「もう大丈夫じゃ」


 棍棒を掴んでいたトロールごと明後日の方向へと吹っ飛ばした。

 彼女は俺に近づくと、空中からポーションを取りだし、俺の口にぶち込む。


「ありがとう。助かったわ」


 というとニコっと笑顔になる。

 周りを見ると、そこら中にトロールのドロップ品が散らばっていた。

 しかし、生臭い………。


「この血洗い落とす魔法とかあったりするのか?」

「【浄化】」


 彼女が唱えるとあっという間に返り血が消えた。

 生臭くない。


「これでよいか?」

「ああ、すまん。助かった」

「いいのじゃ! それよりも旦那様」


 彼女の表情が暗くなる。

 すると、彼女が俺に向かって腹パンした。


「ぐふっ」


 その言葉と共にきおくがなかった。

 気づくと、木の麓で寝ころんでいた。

 

「どこだここは」


《お、起きたぞ》

《紅羽ちゃんがあんなことするなんてなぁ》

《まぁ仕方なくね? ユーイめっちゃ弱いし》

《それな。このままだと最終層まで持たんだろうしな》


 目覚めるとコメント欄が目の前に現れてにぎわう。


「ほんとすまん。てか個々の層の敵強すぎだろ」


《それな!》

《レベル鑑定出来たらしてみてください》


「すぅ………すぅ………」


 寝息が聞こえ配信画面を眼の前から退ける。

 すると俺の前には、小さな胸とかわいい寝顔の彼女があった。

 ずきっと一瞬腹に痛みが走る。


《紅羽ちゃんの寝顔かわいい》

《わかるわ~》

《てかダンジョン内で昼寝とかのんきだよなぁ》

《それな》


「そういえばそうだな」


 と言って彼女の膝から起き上がる。


《リア充爆発しろ!》

《爆発しろ!》

《爆発しろ!爆発しろ!》


 爆発しろコメが増える中、辺りを見渡す。

 だが、ここは気絶する前の場所ではないことが分かる。

 一面草原だったため、こんな木があるわけないのだ。


「起きたのです」

「人間です」

「怖いのです」

「でもあれお母様です」


 どこからかしゃべり声が聞こえてくる。

 しかし、俺が気付いた途端しゃべり声が聞こえなくなってしまった。


《めっちゃ語尾ですて聞こえたんやけど》

《俺も!》

《私も》


「だよな!」


 と俺は湖面と欄を見て反応する。

 すると、近くの草がカサカサと音を立てた。


「ふわぁぁあ!」


 あくびをした彼女の方を振り向く。

 すると膝の上に羽をはやした小さな人が座っていた。


「お母様。おひさしぶりです」

「「おひさしぶりです」」


 一人がいうと他の子もいう。


「なんじゃ? フェアリーか………」


 彼女は小さな頭を指先で撫でる。

 その様子がなんともほほえましく、ずっと見つめていた。


「旦那様、なぜそんなとこでじっと見つめているのじゃ?」


 と彼女が俺の方を向いていった。

 

「え、いや………」


 反応に困り黙り込む。


《妖精じゃん!》

《ガチじゃん!》

《一千万で買うわ!》

《やめろ! 妖精はみんなのものだ!》

《そうだそうだ!》

《そうだそうだ!》


 コメント欄が妖精の事を触れていた。


「妖精だよな、そいつら」

「そうじゃが………さっきのこと覚えておらぬのか?」

「ああ、殴られたことは覚えてる」


 すると、彼女が突然泣き出す。

 それを見ていた妖精が俺を殴りつける。


「お母様をいじめるなです!」

 

 右頬が腫れたのか痛い。

 すると、泣いている彼女が俺の前に立って俺をかばう。


「紅羽………」

「お母様、何でかばうのです! そこをどいてほしいのです!」


 だが、彼女は俺の前から退かない。

 

「童が悪いのじゃ! だから、だから旦那様を殴らないでほしいのじゃ」

 

 彼女のは震え、尻尾がしんなりと落ち込んでいる。


「お母様………………」


 彼女が地面に泣き崩れるかのようにしゃがみ込む。

 すると、一人の妖精と俺は目が合った。


「紅羽、どうしてなんだ?」

「………今の旦那様だとこの階層で野垂れじぬからじゃ」


 彼女は、俺に背中を見せたまま言う。


《だろうな》

《ホントやばすぎだろここ》

《紅羽ちゃん最初から知ってたんだ》


 コメント欄をふと見てくすっと笑ってしまう。

 妖精の一人がこっちを見て俺を睨みつけてくる。


「だろうな。あのトロールがいい証拠だ。あの威力ヤマタノオロチ並みだったしな」

「そうじゃ。ここはレベルにして二百を超えるモンスターがうろうろしておる」

「に………にひゃくううう!」

「うむ。そして旦那様のレベルは今いくつじゃ?」


 言われるがまま、レベルを確認する。

 そこには、レベル五十一と書かれていた。


「あ、うん………すみませんでしたああああ」


 俺は紅羽向かって土下座する。

 このレベルは、百層の中盤辺りのレベルだった。


「人間頭軽すぎです」

「あんまり揺れすでないぞ」

「はいです!」


 いつまえ土下座すればいいのかわからず顔を上げる。

 すると、目の前にはしゃがみ込んでいる彼女が目の前にいた。


「レベリングするぞ。旦那様」

「ああ」

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