第12話 事前準備
「嬢ちゃん。食うかい?」
店主がそう言って彼女焼きそばを詰まったパックを渡す。
「いいのか!」
「おう! 嬢ちゃん、紅羽ちゃんだろ? 配信で楽しませてもらってる礼だ」
俺が駆けつけと。
瞳を輝かせながら焼きそばを食べている彼女の姿がそこにあった。
「すみません。俺にもください」
「お、久しぶりじゃねぇか。嬢ちゃんにはもう渡したぜ?」
「ありがとうございます。配信今も見てるんですか?」
「当たり前だろ? 昼間のボス討伐のとこスパチャしただろ!」
「観れませんよ。戦闘中は………」
俺が困っている様子を見せると店主はがははと笑った。
ダンジョンに潜り始めて一年、いや三年前になるのか。
その時に、ここによって焼きそば食べながら仲良くなって配信を見てくれてる古参の一人だ。
「そういや、これやるよ」
店主が表紙に俺達二人が載っている雑誌を渡してきた。
二年ぶりに復帰した俺の事や、ボス戦でドラゴン化した彼女のことが書いてあった。
二年間見守り続けた視聴者たちへのインタビューもそこに書かれている。
「いつ出たんだよこんなの」
彼女に渡して店主に言う。
「今日の朝だな。出版社の人間がこれ持ってきてな、お前に会って話聞きたいんだと」
雑誌に載っている俺達のことを見て彼女は尻尾をパタパタさせていた。
やはり写っているのがうれしいのだろう。
「とりあえず一度家に帰ります」
「そうか、気おつけて帰れよ!」
雑誌を持った彼女を連れて地図に会ったマンションに向かった。
エレベーター付きのマンションで、かなり内装がきれいだ。
入っていたカードキーでマンション内に入り、部屋に入る。
「先シャワー使っていいぞ」
俺は彼女にそういって部屋の中に入る。
ほとんど彼女と出会ったマンションとよく似ていた。
使い勝手がわかっているのか彼女はいつの間にか風呂場に入っていった。
「さてと、とりあえず明日の準備だ」
ヤマタノオロチがドロップして彼女が加工した刀を手入れする。
まだ新品なためか汚れが目立たない。
「旦那様、着替え欲しいのじゃが………」
脱衣所の扉からこっちを見つめる彼女がいた。
白い両肩がうっすらと見える。
慌てて段ボールから俺のカッターシャツをとりだし彼女に渡した。
「すまん。紅羽の着替え買わないとな」
脱衣所に背を向けて俺は言う。
すると、少し冷たい感触が背中全体を覆う。
「これも好きじゃぞ?」
サイズが全くあっていないカッターシャツを着た彼女が俺の前に立っていた。
その姿をみてからの記憶がなかった。
朝日と抱き着いている彼女によって起こされる。
朝風呂に入り、朝の支度を済ませる。
彼女が起きるまでダンボールの整理をしていると、彼女が起きたみたいだ。
「ふわぁ………おはようなのじゃ」
あくびをしながら彼女は言う。
「ああ、おはよ。着替えたらダンジョン行くぞ」
「分かったのじゃ」
ダンジョンという言葉に反応して尻尾がぴくっと動く。
やはりダンジョンに行きたいらしい。
とりあえず鞄に、必要な道具を入れる。
「それ寄こすのじゃ」
彼女が俺が準備した鞄を指差す。
俺は素直に彼女に渡すと空中にしまい込んでしまった。
「どこにやったんだ?」
「む? あ~空間魔法で異次元に入れただけじゃ」
「なるほど、某あのポケットみたいなもんか」
「なんじゃそれは?」
「後で話すわ」
準備を整えマンションからダンジョンに向かった。
いつもにぎわっているダンジョンの入り口前にある列に並ぶ。
その間配信の準備をしている俺。
彼女はいつの間にか、人に囲まれていた。
「紅羽ちゃん。これからダンジョン?」
「うむ。そうじゃよ!」
一人の女性探究者に声を掛けられているのが聞こえてきた。
ダンジョンに入る順番が来たため、彼女を呼ぶ。
すると、彼女が人々を避けまっすぐ俺の隣に向かってきた。
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