第4話 スタッフの対応
扉を開けた瞬間、ムッとするような悪臭を感じた。それは、鉄分を含んだ匂いで、それが血の匂いであることを、彼は一瞬にして悟った。そして、悟ったその瞬間、自分がこれから何を見るのかということの想像がついたことに、恐怖を感じた。
「一生のうちに体験できるかできないかということを、これから見てしまうんだ」
と思ったのだ。
しかも、それは、招かざるものであり、できるなら、見ずに済ませられるに越したことのないものだった。
そこにいたのは、胸をナイフで抉られ、仰向けになって、腕は何かを掴もうとしているのか、上に向かって何かを指さしているようにも見える。しかし、死後硬直の影響か、凍り付いたように見えるその腕が、不気味に伸びているのは、怖いだけではなく、他にも不気味さを醸し出しているかのように感じられた。
死んでいるのは、男性で、その苦痛に歪んだ表情で、最初は誰なのか分からなかった。
かっと見開いた目は、断末魔の様相を呈していて。半分開いた口が、さらに断末魔を決定づけるかのように歪んでいるのだった。その見つめる虚空の先に何があるのか、死ぬ時に自分を刺したであろう相手を見て、果たしてどのように感じたというのか。
「俺はこのまま死ぬんだろうな?」
と男が考えたのではないかと思うと、切なさと虚しさが、同時にこみあげてくるようで、一瞬、思考が停止してしまったが、すぐに我に返ると、
「こうしてはいられない」
と思い、警察に連絡することが先決だと思った。
上着のポケットに入れているスマホを取り出して、警察に連絡を入れた。いわゆる、
「110番」
というやつだ。
しかし、電話を掛けようとした瞬間、彼は躊躇した。
「まず、店長に掛けるべきなのかな?」
と思ったからだ。
彼は、その状況と、腕が空に向かって伸びていて凍り付いた状況になっているのと、かっと見開いた目が、まったく動いていないのを感じると、すでに死んでいることが分かっていたのだった。
それだったら、急いで通報する必要もなく、まずは店長に連絡を取って、指示を仰いだ方がいいのではないかとも思った。
しかし、もう少しすると、女の子も、客も来るではないか、すべてが動き出そうとしている状態で、警察への通報は、第一に考えなければいけないと思い、やはり、警察に通報することにした。彼の本音としては、
「俺一人で、これから動きだす時間を、制するということは絶対に無理だ」
と思ったからだった。
警察に電話をすると、
「事故ですか? 事件ですか?」
と言われたので、
「事件です。人が死んでいるんです」
と伝えた。
一瞬、
「殺人事件です」
と答えるつもりだったが、話をしているうちに、
「死んでいるからといって、殺人事件と決めつけるのは、早急だよな」
と思ったので、急遽、
「人が死んでいる」
という言い方しかできないのだった。
そんな状況でも、自分が冷静になれていることに、彼は少し気持ち悪さを感じていた。
「俺って、こんなに冷静になれる性格だったのかな?」
と感じたのだが、これが本当に冷静だといえるのかどうか、自分でも分からなかった。
なんといっても、警察に通報するなど初めてのことで、これを、殺人事件だといわなかった本当の理由が分かった気がした。
「俺はこの瞬間のこの状況の中にいると、まるで自分が殺したのではないかという錯覚に陥っていたのではないか?」
と感じたのだ。
確かに殺したのは、自分ではないというのは、誰よりも自分が分かっていることだが、この人が死んでいるのを見るのは、この俺が一番最初だということを感じると、気持ち悪くなってきた。しかも、一人で発見したことによる気持ち悪さがあったのだ。
だが、これがもし、他の誰かと発見したとしたらどうだろう? お互いに気が動転してしまい、相乗効果で、どんどん気持ち悪さがこみあげてくることもあるだろう。人はこういう時、
「誰かと一緒だったら、気が楽ではないか?」
と思うのだろうが、実際に一人で死体を発見し、
「もし、誰かと一緒に発見していたら?」
と思った時、冷静になれるようで、
「他の人と一緒でなくてよかった」
と思うのだ。
それは、今まさに冷静になっている状況に、決して人と一緒にいると、なれるはずはないと思うからだった。
警察に状況を説明している時は、淡々とした状況が続いた。空気は乾燥しているように感じ、自分の喋っている声が、かすれてしまっているのが分かると、
「こんな状態で冷静になれるはずなどないよな」
と思った。
状況を一通り説明し、
「分かりました。それでも、所轄から、捜査員を現地に向かわせます」
ということで電話を切った。
「フッ」
とため息をついたが、その時、急に冷静になった彼は、自分が警察に最初に連絡したことが正解だったことを感じた。
それまで本当に気が動転していたからなのだろうが、電話口で、
「捜査員」
という言葉を聞いた時、
「待てよ」
と感じたのだ。
それまで考えもしなかった自分の立場を考えたからだ。
今の自分は、
「死体の第一発見者であり、通報者という立場だが、警察の捜査が入れば、まず最初に疑われるのって、第一派遣者なんじゃないか?」
と思ったからだ。
もちろん、被害者の人間関係や、人間性が捜査され、そこから犯人が割り出されることになるのだろうが、怪しまれるのは自分であろう。ただもっと冷静に考えれば、鑑識が死亡推定時刻を割り出すことになるだろうが、死後硬直から考えて、自分が店に来る時間よりも、相当前に殺されていて、放置されたことになる。ただ、それでも、上限は、昨夜の0時以降であろう。それまでは、スタッフ、女の子、さらには客もいただろうからである。最後、その部屋を使った女の子が、自分が使った分を綺麗にして、帰宅するということなので、もし、昨日その部屋を使った人がいるとすれば、その女の子が掃除をして、帰ることになるだろう。
ただ、もし、殺されたのだとすれば、悲鳴くらいは聞こえたはずだ。それでも、扉を閉めていて、密室だったとすれば、防音効果で声が漏れなかったかも知れない。何しろ、ここは、声に関しては漏れる可能性の限りなく大きなところだからだ。
店によっては、わざと聞こえるようなコンセプトにしているところもあるようだが、この店はそういう変態チックなことを、店ぐるみでしているわけではないので、防音はしっかりしていた。
「じゃあ、殺した時は。しまっていなんだろうか?」
と思ったが、今は開いていた。
だからこそ、今の発見になったのであって。
「ひょっとして犯人は、この時間に見つけてもらうように、最初から計画をしていたということだろうか?」
と、彼は思った。
そう思うと、ゾッとするものを感じたが、そのゾッとする気持ちがどこからきているのか、彼には分からなかったのだ。
とにかく、警察が来るまで、何もするわけにはいかない。
「そうだ、店長に報告しないと」
と、さっきは自分で分かっていたはずなのに、警察への連絡で緊張が再誇張に達したのか、店長への報告ということが頭の中から飛んでいたのだ。
さっそく店長に電話を入れてみると、まだ寝ていたのか、眠たい目をさせて、
「警察を呼んだのなら、警察のいうことにしたがっていればいい。それに、余計なことは言わないように。後で経過報告をすればいい」
というだけだった。
もっとも、それ以上のことを、何もわかっていないこの時点で言えるはずもなく、スタッフは警察を待つしかなかった。警察がいつ頃来るか分からないが、とにかく、女の子と、お客さんの方が先に来るのは分かっていた。女の子はとりあえず、事情聴取もあるだろうから、そのまま待機してもらうしかないだろうが、お客さんには、何とか言って、キャンセルにしてもらうしかないだろう。
「あっ、そうだ」
スタッフは一つ思いついた。
というのは、サイトをこのままにしておくと、予約が入る可能性があると思ったのだ。
かといって、サイト全体を、
「ただいま、メンテナンス中」
としてしまうと、客とすれば、
「何があったんだ?」
となるだろう。
いずれは、ニュースになるだろうが、店の名前が出るかどうか分からない時点で、このままサイト全体を封鎖してもいいのだろうかと考えたが、とりあえず、ネット予約だけは受け付けていないようにするしかなかった。
その方法は、以前、伝染病が流行った時に使った画面があった。最終的には、
「伝染病蔓延による急遽受付停止」
ということにしたが、最初は、
「諸事情により」
ということで、ハッキリとした理由を明かしていなかった。
というのは、他の店のサイトも皆、諸事情ということを謳っていたので、とりあえず、足並みを揃えるということで、合わせたのだった。
それを思い出した彼は、アップのテンプレートを探し、張り付けたのだった。店長もこれでいいと判断してくれるだろう。
ただ、このため、電話が結構多くなるかも知れない。それはしょうがないことであるが、まずは、お客さんに迷惑をかけないことが先決だった。
そもそも、この店の一部の女の子で、当欠が多い子がいた。まあまあの人気の子だったので、そんなに店から言われることもなかったが、客の中には、嫌気が差して、他の店に流れた人も多いという。SNSなどで、風俗店などの情報交換と言って、その実、店に対しての、誹謗中傷を書いたりして、それを見るのを楽しみにしている一部の常連もいるようだが、常連の中にも、
「さすがに、そろそろこの店も終わりなんじゃないか?」
と書き込んでいる人もいるようで、今回の事件が、そんな客に対してどのような影響を与えるのかというのが、大きな問題であった。
彼もそのサイトをよく見ていた。最初はそんなサイトがあるなど知りもしなかったが、店の女の子から、
「悪口をここで書かれないようにしないとね」
と言っている話を聞いて、最初はただの興味本位で見ていただけだが、そのうちに、他人事で面白がってばかりもいられないと思うようになってきたのだ。
その内容は、下手をすると、ネットの削除対象にならないかと思うほど、リアルであったり、過激なものもあったりした。
さらに、下手をすれば、
「個人情報が漏れたりしないか?」
と思うほどの書きこみもあったりして、さすがに少し怖く感じたほどだった。
だから、今回の事件において、何を書かれるか分かったものではない。たぶん、明日には、
「お店で殺人事件だってよ」
と当店のスレで、話題になっていることは必至な気がする。
なぜなら、少なくとも最初の客はここに来るのだからであるが、今日以降をネットや電話で予約をしている人は、
「30分前に、確認のご連絡をお願いします」
と言ってあるので、その時点で、断りを入れればいいだけだった。
「なるほど、こんなことが起こった場合という意味でも、三十分前に客に連絡をさせるというのは、いい対応なのかも知れないな」
と彼は思った。
だが、実際には、その連絡があった時、なんといえばいいのか、そのあたりを、店長を交え、協議する必要があるということだろう。
この店のスタッフは、店長を入れて、十人だった。
マネージャーと呼ばれる人も二人いて、いわゆる管理職以上は三人ということだ。
今回のスタッフは、まだ新人のようなものだとは言ったが、半年は経っているので、完全な新人ではない。彼の後輩になる人が入ってきておらず、彼が一番の下っ端ということで、便宜上、新人と呼んでいるだけだった。
スタッフも一番の新人ともなると、女の子のベテランなどからは、どうしても、舐められるところもある。ただ、この業界の女の子の入れ替わりは結構激しいので、彼が入店してきてからでも、数人が辞めていき、新人として入ってくる女の子も数人いた。そういう意味では、
「辞めた分だけ、新人で補充できている」
といえるだろう。
だが、そんな女の子でも、入店してから、ひと月もしないうちに、すでに慣れてしまっていて、下手をすれば、彼よりも詳しくなっていて、しっかりしているように見え、
「どっちが、ベテランかわかりゃあしない」
とばかりに、他の男性スタッフから言われることもあったりした。
だが、それもある意味仕方がなかった。女の子は新人といっても、この業界未経験という子は少ないだろう。
「他の店からの移籍」
というイメージの子もいれば、
「以前は、デリをしていました」
と、デリヘル嬢だったということを明かす子もいた。
別にスタッフに隠す必要はない、女の子も面接で履歴書を持ってきているのだから、そこには、正直に書いている人が多いだろう。隠すことのメリット、デメリットを考えれば、経験者という方がメリットはあるに違いないからだ。
だが、そんな女の子でも、店にあるパネルや、ホームページの紹介ページ、さらには、無料案内所での広告などには、
「業界完全未経験」
と書かれていたりする。
「君のような清楚で素直(に見える)な女の子は、業界完全未経験で売った方が、お客さんが喜ぶんだよ」
ということで、店内のみが知っているという、
「お約束」
となっているのだ。
ただ、客の中には風俗でいろいろ遊んでいるツワモノもいる。そんな連中であれば、
「この子は、あそこの店にいた、〇〇ちゃんだ」
ということがバレるだろうが、だからといって、それを知った一般客が、
「詐欺ではないか」
ということはないだろう。
それくらいのことは、
「公然の秘密」
であり、業界未経験という言葉を一切信用していない輩も多いことだろう。
だから、店側もそれを承知で敢えて書く。客としても、その子に興味を持って、予約を入れてくるかも知れない。
その理由として、
「バレるかも知れないというリスクを負ってまで、未経験を押すのであれば、それだけ彼女の客に対しての対応が、清楚で素直さを前面に押し出しているのかも知れない」
と感じるからだ。
客としても、別に女の子を本当の彼女のように思っているわけではない。あくまでも疑似恋愛を楽しむという感覚で、
「楽しい時間を、お金で買うのだ」
と割り切っているから、相手に彼氏がいてもおかしくないと思いながらも、
「お気に入りの女の子だから、自分が買った時間だけは、疑似恋愛ができればいい」
と思っているのであろう。
そうでないと、風俗遊びはできないのではないか。できたとしても、変にまじめに考えてしまうと、苦しい思いをしたり、傷つくのは自分だけだからである。
客がそんな思いをしているとしても。女の子たちが同情などしてくれるはずはない。女の子たちは、どうしても、商売でしているわけで、二人だけの時間、癒しになってあげられればいいという考えは持っているので、それ以外の時間、過度に期待を持たせるようなことをしてしまうと、女の子側としても、
「罪作りなこと」
をしてしまうという考えから、接客の難しさと、プライベイトでは、いかに客を本気にさせないかというのも、彼女たちにとって重要なことではないだろうか。
これが、キャバクラなどになると、犯罪が多くなるのだろう。なぜなら、性的交渉をしていない場合が多いからだ。キャバクラなどでは、
「いかに男をその気にさせて、金を貢がせるか?」
ということが問題なのであろうが、ソープなどのような性風俗特殊営業となると、
「男の肉体的な最終目標は、お金を伴うということで満足でき、さらに癒しを貰うということで、精神的にも成就できる」
だから、それ以上を望まない限りは、男性も満足できるのだろうが、中にはそれ以上を望む人もいるかも知れない。
この場合のそれ以上というのは、どういうことであろうか?
いわれる、
「疑似恋愛の疑似という言葉がとれたような感情になり、自分のことだけを好きになったのではないか?」
と思うことであろう。
癒しを貰ったことで勘違いをするということであろうが、ソープの客には、キャバクラほどは多くないような気がする。これは人によるものかも知れないが、
「自分のものになってしまうと、急に覚める人もいたりする」
ということがあるからだ。
恋愛をしていて、好きになり、結婚したとしよう。付き合っている時は、
「毎日でも、セックスをしていたい」
と思い、実際に毎日会って、セックスをする仲であったとして、これが結婚してしまうと、急に改まって考えてしまうこともあるだろう。
「恋愛の時はできたのに、結婚してしまうと、急に冷めたり、萎えた感情になるのはなぜなんだろう?」
と思うかも知れないが、それは、一種の、
「満足感の飽和状態」
といってもいいかも知れない。
人間というのは、目標を持ち、その目標を達成してしまうと、急に脱力感に見舞われることがある。
例えば、大学受験などを目標に、
「この大学に入りたい。そして、入学してから、ここの大学生として勉強に勤しもう」
と思っていた人が、相当な努力をして、目標の大学に合格したとしよう。
有頂天になり、友達をたくさん作り、最初は夢のような毎日を送っているのだが、ある日突然、何かがブチっと切れたかのような感覚に陥るという。
それは、自分でも分からないし、まわりも、彼が変わったということすら気づかないだろう。
そのうちに、大学受験を目指していた時の気持ちをすっかり忘れてしまい、脱力感から、人によっては。まるで五月病に罹ったかのような、うつ状態になるかもしれないのだ。
その時になって、まわりもやっと、
「あいつ、何かおかしい」
と感じるだろう。
いつからおかしかったのかということを誰もハッキリと認識していない。なぜなら、本人にも、おかしくなったのがいつなのかという自覚がないからだった。
そう思っていると、そのうちに、友達と遊ぶことが大切になってきたりして、
「勉強に勤しもう」
などと思ったことを、もし思い出したとしても、それを感じたのが、相当昔だったのだということを、感じるだけでしかないだろう。
自分が目標にしていることが達成されると、それが困難であればあるほど、ギャップというものが絶対にやってきて、その時に、自分をどこまでしっかり持っていられるかということで、それ以降の自分の人生を左右することになりかねないというのは、決して大げさなことではないだろう。
それが、自信過剰であったり、自己嫌悪に似たような感情を持つことで、
「一体、自分はどうなってしまったのだろう?」
と感じてしまうだろう。
遅かれ早かれやってくるもので、それが早ければ、
「五月病」
と言われるに違いないのだ。
そんな状態において、自分が分からなくなってしまうことで、躁鬱症の入り口に立ってしまう人もいる。
理由ははっきりと分からないが、そこには、ギャップのようなものが潜んでいるような気がするのだ。
目的達成のためには、生みの苦しみともいうべき、相当な苦痛を伴う。それが受験勉強であり、受験のために、欲望を断絶することが求められる。宗教のように、悟りを開くために、死ぬ思いをするほどの修行に耐えなければならない場合もある。宗教によっては、断食をしたり、一か月近くも一人で籠って、自分を見つめなおすというような、普通に考えただけで、地獄の苦しみだと感じるようなものを味わうことになる。
そんな思いをして目的が達成されれば、その後に待っているのは、極楽浄土のような感覚ではないだろうか? 足が地についていないかのような状況に、満足感で溢れている自分を感じる。
しかし、それが、本当に自分が求めていたものなのかどうか、その時は疑うこともないだろう。
しかし、次第に冷静になってくれば、
「何かが違うような気がする」
と感じるのだ。
きっと、夢に見ている間は、その満足感を不変のようなもののように感じていて、足が地についていない感覚が、永遠に続くと思っていたことだろう。
しかし、人間はいつかは冷静になるというもので、言い方を変えると、
「飽きてきた」
ということも言えるのではないだろうか。
極楽だと思うことが、これから永遠に続くと考えた時、それを手に入れたのは自分の努力であるはずなのに、努力した結果と、自分が思い描いていたことに差が出てくれば、今度は自分の感覚が、どこか信じられないものになってくるのではないだろうか。
このギャップが、結婚という女性との関係で最高潮のゴールだと思っていると、実際には、そこからが始まりであることに気づく。
そう思うと、自分が考えていた男女関係のその先にあるものを想像してしまう。。
実際には、男女関係としては、それ以上のものはないのだ。
好きになって、恋愛して、身体の関係になって、婚約し、結婚する。男女の関係としては、それがゴールなのだ。
しかし、二人の関係はそれからも続いていく。
むしろ、ここから先は重要なものであり、それが何であるかということを理解しておかないと、ここから先は、坂道を転がり落ちるような転落が待っていることになる。
平成の頃には、
「成田離婚」
という言葉が流行った。
新婚旅行に旅立った二人が、帰ってきてから、その場で離婚を決めるということからついた言葉であるが、それこそ、初めて二人で結婚したという立場で、数日一緒に過ごしてみて、そこで初めてお互いのギャップに気づくのであろう。
それも、無理もないことであった。
なぜなら。どちらも男ではないし、女でもない。男と女だからである。
今まで同様に、二人の関係を。
「男女の関係」
と思っていると大間違いである。
どちらがどっちらとは言えないが、片方がいまだに夢を見ている状態で、片方は、すでに次のステップに進んでいると、気持ちがうまくいかないことだってあるというものだ。
これは、肉体の関係に限ったことではない。むしろ精神的なことの方が、奥が深いということになるだろう。
新婚旅行先で喧嘩の一つでもしていれば、それが引き金になることもあるだろうし、逆に喧嘩をしたことで、お互いに、気持ちの整理がついて、同じ先を見ることができるようになるという稀なパターンもあったりする。
だか、これはあくまでも希少なもので、皆がうまくいくとは限らない。
「成田離婚」
というのも、稀な例なのであろうが、社会問題になるほどなので、そんな簡単な問題でもないだろう。
離婚が多いというのは、意外と、結婚してすぐの人が多いのかも知れない。
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