第2話 早朝営業のお店
F件F市の中央区にある西日本最大ともいわれる歓楽街、ここは、JRの玄関口である街とさらに、中心街と呼ばれる繁華街とは、二キロほど離れて存在していた。飲み屋から性風俗街といわれる歓楽街は、その二つの都市の間に存在していた。
その地域の南部、いわゆる、一丁目と呼ばれる地区だけが、ソープランドを営業できる地域となっているので、そこには、数十件というソープが所せましと営業していた。
一つのビルにいくつものソープが入っていたり、中には系列店を持っていることで、一つのビルが、すべて系列店というところもあるようだ。
無料案内時も、数か所あり、大通りに面した目立つところから、街に入った途中にひっそりと営業しているところもある。
中には、店舗が副業の形で、無料案内所を設置しているところもあり、そこで聞くと、当然のごとく、自分の店に客を誘導するということになるだろう。
それは別に悪いことではない。自分たちの店に誘導するのは当たり前のことであり、もちろん、虚偽の広告があったり、客を騙すようなことがあれば問題だが、そんなことをするところもないだろう。
今の時代は、ネットも普及しているので、下手な商売をやっていると、ネットでウワサニなってしまい、営業もままならなくなってしまう。
このような業界なので、ネットに投稿する連中も、いろいろあることないこと書きたてるかも知れない。経営者側も、下手な対応はできないだろう。
今は、店のスタッフも従業員の女の子も、健全でなければ、まず客は来ないといってもいいだろう。
なんといっても、安いものではないのだ、ソープの利用料は、どんなに安くとも、二万円以上というのが相場だ。高級店などになると、十万単位というのも珍しくはない。予算にあった店を探すのも利用者にとっては大切なことなのだ。
一口にソープランドといっても、いろいろある。
まず価格帯によって、数種類があるのを覚えておいていただきたい。
まずは、昔からのソープランドで、高級店と呼ばれるものだ。一通りのソープのサービスはすべてあり、金額も六万円以上というのが相場だろうか。
待合室も高級で、スタッフからも、女の子からも、まるで王子様扱いされるようなところである。
今は受動喫煙の問題があるので、待合室で大っぴらにタバコを吸えないが、昔は、高価なシュガレットケースにタバコが置かれていて、吸い放題だったのだ。スタッフが火をつけてくれるところもあり、本当に王様気分を味わえるくらいだった。
ただ、さすがに今は、そんな高級店ばかりではない。大衆店と呼ばれる店も出てきた。
大衆店というと、予算とすれば、三、四万円くらいが相場になるだろうか。高級店のような感じというよりも、どちらかというと、フレンドリーな感じで、待合室なども明るく、テレビなどが映っていたりして、本当に、
「大衆食堂」
のような活気のようなものを感じることができるだろう。
さらに、大衆店よりも、さらに安い、
「格安店」
などというものもある。
「性風俗を味わいたいが、お金がない」
という人が手っ取り早く利用するという意味で、三万円以下で利用できるというお店である。
そういうところでは、よほどテキパキやらないと、時間が迫ってくる。充実した会話など、なかなかできないのが実情だったりする。
そんな大きく分けて三つの価格帯のソープランドであるが、それもいろいろと趣向が違っているといってもいい。
昔のように、本当に高級店しかなかった時は、
「ソープというのは、特別な空間」
というイメージだったが、今では、
「本番なしの性風俗」
ということで、ヘルスや、出張ヘルス、いわゆるデリヘルなどという商売もあり、ソープも多様性を求められるようになってきたというのが実情であろう。
店舗型の性風俗をよく利用するやつから聞いた話として、
「ホテルや自宅に呼んでサービスを受けることの何がいいんだろうな?」
ということを言っていた。
自分がいるところに女の子が来てくれるということで、ドキドキ感が味わえるというのであれば、確かに、自分が女の子のところに行くのも、同じようなドキドキである。
「風俗の醍醐味は、最初の対面の時だ」
と思っているが、その楽しみというのは、長いほどいいだろう。
そうなると、相手を決めて、予約を入れるところから、そのドキドキは始まっている。ということは、店舗型だと、数日前から予約をして、その日のその瞬間が来るのを楽しみに待っているが、出張の場合は、イメージとしてであるが、いきなり店連絡することの方が多い気がする。もちろん、店舗に向かう場合も、急にムラムラして店に行きたくなる気持ちになることもあるだろうが、経験上、そういう時は、
「地雷を踏んでしまう」
ということが多いような気がする。
「地雷」
とは、外れを引くというような意味で、自ら引いたものが外れだったということだ。
特に、風俗店というのは、パネマジと呼ばれる「パネルマジック」があるため、仕方のないところもある。
数日前から予約しておけば、まだほとんどの女の子は予約が入っていないだろうから、選び放題だ。いきなり言って。
「今から」
などというと、人気嬢は、すでに予約がいっぱいなのもしょうがないだろう。
そういう意味で、ソープに行く時は、数日前からの予約を当然のこととしている。ただ、数日前から予約をしている場合のデメリットも考えないといけない。
というのは、数日前から、行ける時を物色した時、一番気に入っている女の子が、休みだったり、予定を入れていないこともある。だが、前もって予約を入れてしまっていると、その後に、ちょうど自分が行けるそのタイミングでお気に入りの女の子が予定を入れて、
「しまった」
ということになりかねない。
さらに、あまりにも早く予約をしていると、急な何かで行けなくなったりした場合、分かったのが前日だったり、当日だったりして、店側の話として、
「当日、前日のキャンセルは、キャンセル料が、80%などということもある。ひどい時は全額などというのもあり、さらに、次回から予約ができなくなる可能性があると、店からくぎを刺されてしまう」
ということがあるからであった。
それでも、よほどのことがない限り、そんなことがないようにはしている。仕事が休みで、呼び出しなどないとか、そんな時にしか予約はしないからだ。
ちなみに、先ほどのパネルマジックこと、パネマジのことだが、これには二つの理由があるという。
一つは、
「店側が、女の子を綺麗に撮影して、言い方は悪いが、客を欺こうという魂胆が考えられる」
というもので、客の多くはこの理由を忌々しいと思っているかも知れない。
しかし、もう一つの理由を聞けば、
「それも仕方ないことなのかも知れないな」
と感じることだろう。
というのは、二つ目の理由として、
「身バレしないようにするため」
というものである。
写真を合成することで、写真を見ただけで、知り合いが見れば、本人だと分かってしまうというのは、こういう商売をしているとまずいこともあるだろう。
昼職を持っていて、その会社が、
「副業禁止」
などといっていれば、風俗でなくとも、会社を首になってしまう可能性もあるだろう。
さらに学生だったりすると、大学を除籍などということもありえる。高校生なら、退学処分と同じであろう。
また、風俗嬢が主婦だったりすれば。離婚問題に発展もしかねない。中には、家計のために、働いている人もいるだろうが、中には、ストレス解消に、たくさん買い物をしてしまって、その払いにサラ金を利用してしまったという場合。さらには、
「ホストに入れあげてしまって、ホストに通うためと、お気に入りの男に貢ぐための金欲しさ」
という目的で、風俗嬢になる女性も決して少なくはないだろう。
つまり、決して旦那や家族にバレてはいけないことである。家庭崩壊に繋がりかねないことであり、その人からすれば、
「自業自得」
なのだろうが、家族とすればたまったものではない。
家族の中には。
「そんなお母さんなんか、いらない」
という子供もいるだろうが、家族を裏切ったことに変わりはなく、自業自得というだけでは済まされないことになるだろう。
結果、慰謝料問題に発展し、離婚されてしまうと、生活できなくなることで、風俗を続けなければいけないということになり、それこそ、本末転倒だといってもいいだろう。
風俗嬢になる人には、いろいろな事情もあるだろう。昔から言われているような、家族の借金、それも、父親が自営業をしていたりして、倒産の憂き目に遭い、借金だけが残ってしまったのを見かねた娘が、風俗嬢になって、借金を返すというような話も少なくはないだろう。
そして、先述のような、ホストに狂ったり、衝動買いをするなどと言った、
「自業自得的」
なことで、風俗嬢になる人もいる。
しかし、最初から目的をもって、風俗嬢になった人もいるだろう。例えば、
「ここで金を儲けて、自分の店を持ちたい」
なとどいう目的を持った人である。
それはそれで素晴らしいと思う。客もそんな女の子であれば、素直だろうし、律義だと思うことで、同情ではないが、応援したいと思うかも知れない。前述の二つのパターンに比べれば、健全で、しかも、同情のようなジメジメした感情にならない分、実に接しやすいというものだ。
最初の、借金がらみであれば、同情をしてしまうと、せっかく自分が風俗に来ているのに、何か後ろめたい気分になりそうで嫌だった。
いや、今のは正確ではない。本当は後ろめたさなどない。後ろめたい気分にさせられそうで、そんなあざとい話に対して、自分の気持ちが冷めてしまうことが嫌なのだ。
苛立ちを覚えるといった方が正解で、本来なら、
「そんな話は聞きたくない」
と感じることだろう。
そのために、
「お互いにプライバシーにかかわりたくない」
というのは本音であり、世間話くらいならいいが、下手にプライバシーに入り込んだり、ましてや説教などを垂れると、本当に嫌われてしまうことになるだろう。
中年くらいの人に多いらしいのだが、
「どうして、こんな仕事をしているの?」
であったり、
「家族は知っているの?」
あるいは、仕事や学生であれば、どこの大学なのか? などということを聞くのは、本来ならタブーである。
それでも、中にはそんなことを聞いてくる連中も中にはいるのだろうか? 風俗を利用している人間からしても、そんなやつがいまだにいるのだとすると、
「同じ人種だと、女の子に思われたら迷惑だ」
と感じてしまうのだ。
風俗嬢の中には、本当に男性に奉仕をするのが好きだったり、単純に、セックスが好きだという女の子も結構いるだろう。ひょっとすると、それが一番健全な理由なのかも知れないと思うのだが、それあれば、お互いに遠慮などいらない。思い切り、ルールの中で楽しめばいい。
もちろん、サービス業なのだから、他の業種と同じで、NGなことはたくさんある。
「女の子の嫌がること」
「連絡先を強引に聞き出す」
「店の外で会うことを強要」
などというのもあれば、
「不潔などという生理的に受け付けない」
というようなものもあるだろう。
風俗というのは、一種の、
「遊び」
であり、そこには、
「お金で時間を買い、その時間内に、サービスを受ける、そしてそれが肉体的に、そして精神的な癒しを受けるということにつながるのだ。それが、疑似恋愛という形である」
風俗というのは、最近ではいろいろなバリエーションも増えてきて、店も増えてきている。
店の業態として、値段で切り分ける、
「大衆店、格安店」
そして、
「高級店」
に分かれているというのも、その一つだが、実はそれ以上に大切なのが、
「店ごとにコンセプトを持っている」
ということだ。
いろいろあるのだが、ソープならではのサービスを売りにしているところである。たとえば、
「マット専門店」
「コスプレ専門店」
「SM専門店」
などという、店も結構ある。
分かりやすいコンセプトを持っていると、それぞれ、その人の性癖であったり、求めているものがハッキリしていることで、お店選びに困ることはない。
ネットや、風俗雑誌で探すというのが、主流だが、実際に、現地まできて、無料案内書で相談してみるという人も多いことだろう。
すると、相手はまず、
「どういったお店をお探しですか?」
と来るはずだ。
そこで、コンセプトがハッキリ決まっていないと、
「じゃあ、どのような子がいいですか? 若い子がいいか、ベテランの人に任せるのがいいか?」
などと言った、相手に求めることを聞いてくる。
だから、最初にコンセプトが決まっていれば、それに似合う店をピックアップしてくれるので、あとは自分の好みの女の子を伝えるだけだ。
例えば、
「キレイ系よりかわいい系だ」
とか、
「胸は大きいに越したことはない」
などと言った、恋人選びをすればいいのだ。
お金を払って遊ぶのだから、遠慮などする必要などない。下手に遠慮して、
「地雷」
にでもあたってしまうと、取り返しがつかない。
その時、嫌な思いをしたりすると、
「もう二度と風俗を利用しない」
と思うだけではなく、女性に対して、トラウマになってしまうことだってありえなくもない。
それが、本当は一番恐ろしいことなのかも知れない。
これは、最近感じたことだが、風俗店のスタッフや、パチンコ屋などの遊技場のスタッフというのは、結構話が合う人が多いような気がした。
どうしても、一部の人から煙たがられることがしょうがないという業界にいることで、なるべく仲間がほしいと思っているのかも知れないが、どこか、人懐っこさが感じられ、パチンコ屋にしても、風俗にしても、時間が空いた時など、スタッフさんと話をするのが、楽しかったりするくらいだ。
さすがに、裏の話までは教えてくれないが、ちょっとした話題くらいなら提供してくれる。それを聞いているだけでも結構楽しいし、パチンコなどでは、注目台くらいなら教えてはくれる。
もちろん、どの台が出るかなど分かるわけもない。特にスロットのように、設定のある台は、基本的に、店長しか知らないものだ。下手に教えると、死活問題になる。
「あの店の店長から設定を教えてもらった」
などと評判にでもなれば、その店を首になるのはおろか、業界にも知れ渡り、二度と、パチンコ業界で職に就くことはできなくなってしまうことだろう。
話がそれてしまったが、スタッフと仲良くなるのは、普通に会話する分には何ら問題はない。それが、楽しみで店に行くという人もいるかも知れないと思うくらいだった。
最近では、コンセプトというのも多様化してきていて、恋人気分になれるようなコンセプトの店であったり、昔の遊郭のような店であったり、あるいは、主婦専門で、夫婦のようなプレイを楽しみたいという人もいるだろう。
現在は、結婚する人が減ってきて、中年でも、独身という人も多い。
中には、
「一度も結婚経験がない」
という人も結構いて、それは男性だけでなく、女性にも結構いたりする。
昔であれば、結婚適齢期というものがあり、結構を考えるのが、人生のうちに何度かあるというのが普通なのだろうが、実際に結婚する人も少ないのも事実だ。
「結婚しても、どうせ離婚することになるんだったら、最初からしない方がいい」
という人もいるだろう。
中には、
「一生、同じ人とずっと一緒というのもねぇ」
という人もいる。
それは身体も関係という意味では切実ではないだろうか?
たとえは悪いかも知れないが、
「毎日同じものを食べていると、そのうちに嫌になってくる」
というのは、人間の生理としてしょうがないところがあるだろう。
見るのも嫌になってくると、近づいただけでもダメになってしまう人もいるだろう。実際に役に立たなくなってしまい、悩んでしまう人もいるに違いない。それは、自分が悪いというよりも、
「相手の身体に飽きてしまった」
ということで起こるものだとすれば、離婚して、また他の女性を探せばいいだけのことだ。
離婚の原因にはいろいろ考えられるが、こういうパターンも結構多いのではないだろうか?
飽きがきて、役に立たないということで悩むことを思えば、最初からフリーでいて、誰かを好きになった時、付き合って、
「飽きてしまえば、別れればいいんだ」
という、割り切った考えの人もいるだろう。
これは、男だけに限らず、女性でも同じことで、最近の若い男女は、あまり肉体関係になることはないカップルもあるという。お互いに精神的な綱がりで、
「愛情というよりも、友情」
といった付き合いもあるかも知れない。
昔であれば、
「男女間で、友情なんてありえない」
と言われてきたが、恋愛感情よりも、パートナーという感覚の方がいいと考えると、いいのではないだろうか。
少し前には、
「草食系男子」
などという言葉もあった。
女性にも言えることなのだが、聴き方によれば、
「健全なお付き合いができる男子」
と感じるのだが、実際には、
「セックスをまともにできない小心者の男」
という、悪いイメージで見られてしまうだろう。
女の子から見れば、どう見えるのだろう?
「まあ。かわいいわ」
とお姉さんが、童貞の少年を相手にしているような感覚になるのか。それとも、
「何よ。せっかく、こっちはその気なのに」
と、誘いをかけて、相手がその気になってくれるのを待っているのに、まったくその気にならないことで、苛立ちを覚えてしまう女性、それぞれにパターンがあるのだろうが、今の時代であれば、圧倒的に後者の方ではないかと思うのだった。
そんなことを考えていると。ある意味、風俗というものが、社会に与える影響は、いい意味で大きな意味を持っているのではないかと思えてきた。
中には、風俗に通うのを、
「本当にお部屋でデートしている感覚だ」
と感じたり、老人に近い男性も行くことを思うと、
「一緒にいるだけで癒される」
と感じている人もいるに違いない。
この事件は、そんなソープ街で起きたことであるが、ちょうど、時間帯が早朝だということもあって、話題にもなった。
そう、まだ、表は真っ暗で、車の数もまばらであり、トラックか、タクシーがほとんどの時間帯だった。
その日は、結構寒い日で、歩く人は、少ない時間であるが、見かける人のほとんどは、背中を丸めて歩いていた。
そのあたりは、電車の駅からは遠い位置にあり、地下鉄の駅から五分くらいかかるところであるが、時間帯としては、始発が動き出した頃で、地下鉄に乗る人も少ないだろう。
さらに、JRの駅も、私鉄の駅も、それぞれ、十分くらいかかるところであり、こんな時間に来る人というと、前の日から、二十四時間の飲み屋で飲んだりしていた人ではないだろうか。
真っ暗な中で、繁華街は、それなりにライトはついているが、性風俗街というのは、ほとんど電気は消えている。
申し訳程度のライトがついている程度で、無料案内所も閉まっている。開いているのは、大通りに面したコンビニくらいであろうか。
だが、そんな風俗街でも、営業時間が、深夜でなければいいということで、早朝サービスを謳っている店もあった。
「早朝六時から営業」
という店も数件あり、普通、早朝営業というと、七時、八時からというところもあったりする。
基本的に普通の営業というと、十時からくらいになるであろうか。店によってまちまちだし、何よりも。六時から営業といっても、相手をしてくれる女の子が、六時から出勤できる子がいなければ、開店休業状態だといってもいいだろう。
当然、女の子だけではなく。店の受付担当の人もいなければ、店を開けることができるわけもなく、五時半にはスタンバイしているのだ。
それはなぜかというと、六時から女の子を予約しているとすれば、事前に、当日キャンセルなどがないかという確認のために、
「当日、三十分前に、当店まで、ご連絡をお願いします」
と、言っているからだ。
キャンセルになると、せっかく用意している女の子もかわいそうだし、店側もせっかくのお客だったのが、穴が開いたことになる。
もっとも、他に客がいれば別だが、おしその時間の女の子の予約状況をネットで確認していれば、わざわざ開いていない六時にやってくることはない。したがって、ほぼ、穴が開くといってもいいだろう。
その日も、お客さんが一人、六時からの女の子を目当てに予約を入れていた。
彼女も、出勤体制をとっていて、店に時間までに入れる体制をとっていたようだ。
その日は、八時まで、女の子はその子一人だったので、早朝の部の受付や諸々のスタッフは一人だけで賄うことになっていた。
彼は、数か月前に入った、
「まだ新人」
といってもいいくらいで、まだ若干二十歳くらいの少年といってもいいくらいだった。
端正な顔立ちといっていいのだろうか。まだ、あどけなさの残る顔で、しかも、笑顔がかわいいとなると、女の子からも人気があった。
だが、ちょっと自信がなさそうなそぶりがあるので、女の子から、かわいいといわれながらも、バカにされているところもあった。
それでも、イケメンは得だというべきか、女の子のほとんどから、嫌われていることはないようだった。
仕事は真面目で、潔癖症なくらいなところがあるので、細かいところに気が付くところが、彼の一番のいいところだと、女の子から言われていた。
それだけに、彼のファンの女の子もそれなりにいて、
「やはり、女の子って、清潔な男性が好きなものなのよ」
と女の子同士でウワサしていた。
「私たちのように、こういう商売をしていると、たまに不潔な客もいるから、清潔感のある男性に、自然と惹かれるのよね。そういう意味では、彼なら合格だって思うわよ」
と一人がいうと、
「それはそうなんだろうけど、あんまり潔癖症な人は、疲れるだけで、精神的に重くなってしまうんじゃあないかしら?」
ともう一人が言った。
「それはそうなんだろうけど、私はそれでも、清潔な人がいいと思うわ。だって、それだけ素直だってことだと思って、信じられる気がするの」
といった。
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