最高の形で湊と夏祭り行くからね!
◇数分前◇
もうすぐ、カナデとしてのモデルの人生と、星宮奏としての人生が大きく変わるファッションショーの私の出番が来る。
湊に緊張をぶつけて、湊が応援の気持ちを込めてキスしてくれた。
大丈夫……私は絶対一位を獲る!
「それでは!モデルたちを皆さん拍手でお迎えください!」
来た……!
私の前の九人がどんどんランウェイを歩き始めて、すぐに私がランウェイを歩く時が来た。
「きゃああああっ!本物のカナデだ〜!」
「浴衣!?超可愛い!」
こんなに大きな拍手と歓声の中でも、不思議と私に向けられる歓声の声だけは自然と耳に入ってくる。
私は左右に今の感情、楽しい感情を表情に出して、笑顔で手を振る。
今、私は湊に見られてる……湊に、湊に。
そう思うだけで、どれだけでも嬉しい感情と楽しい感情が湧いてきて、もう何も不安なんて無くなる。
「っ!湊居た!」
観客席の一番後ろ、私は湊が居る方面に手を振った。
湊は特に何も反応を示してくれなかったけど、きっと私のことを見てくれてるはず。
私含めて十人のモデルがランウェイを歩き終えると、その十人が舞台に横並びになって、順番にスポットライトを浴びて、それと同時に拍手と歓声も浴びていった。
私は最後だから、その前に九人の人たちが拍手と歓声を浴びることになる。
……もし湊が居なかったら、ちょっとは不安な気持ちになってたかもしれないけど、私は。
湊が私のことを可愛いって思ってくれるだけで、それ以外どうでも良くなる。
私は不安無く私にスポットライトが当てられるのを大人しく待っていると、一瞬……観客席の一番後ろに居る湊と目があった気がする!
……うん、大丈夫だよ、湊。
そして、ようやく私にスポットライトが当てられた────
「おおおおおおおお!!」
「カナデ〜!!」
「可愛いよ〜!!」
「似合ってる〜!!」
その拍手と歓声は、私の前の九人の誰よりも大きな拍手と歓声だった。
審査が終わると、司会の人が結果を報告し始めた。
「最後尾までスポットライトを当て終わりましたので次のファイナルステージに進出できる一名にスポットライトを当てたいと思います!そのモデルは────この方です!」
今度は三つのスポットライトが────私に当てられた!
会場からは大きな拍手が私に送られてきた。
私は素直な感情を口にする。
「みんなありがとう〜!本当にありがとう〜!みな────」
湊、に感謝をするのは口に出しちゃいけなかった!危な〜!
とにかく、私はファイナルステージに進出できたことを喜んで、舞台裏に戻って私用の部屋に戻った……私用の部屋に戻ると、すぐに湊が私に会いにきてくれた。
「奏!やったな!」
「っ!湊!」
私は喜びが表情に表れて、笑顔で湊に抱きついた。
「湊!私とりあえずだけどファイナルステージに進出したよ!」
「あぁ、本当におめでとう……でも、良いのか?浴衣のまま俺に抱きついたりして」
「良いの良いの!どうせまた後で本番直前に着付けし直すし、それに……浴衣着てると普段より太く見えちゃうのが嫌だから、いつもより中薄着なの」
「あ……あぁ、そうか」
私は今湊が私の浴衣の中を想像して照れているのを見逃さずに、しっかりとそこを追撃するように言う。
「もしかして〜?私の下着姿とか想像しちゃった〜?」
「す、するわけないだろ!」
「またまたぁ、なんなら今ここで脱いであげよっか?ここ誰も入ってこないと思うし」
「冗談もそのぐらいにしてくれ、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ?」
「も〜、ちょっとぐらい良いのに〜」
……あ〜!早く湊に私の全部見せてあげて、私も湊の全部見たい〜!
ていうか、湊もちょっとぐらい私に下心見せても良いんじゃない?
もちろん、下心が無いのが湊の魅力の一つでもあるけど、下心が無さすぎるとちょっと不安に────って!
「湊のバカ!こんな時に不安にさせないでよ!」
私は湊の肩を軽く叩いた。
「なんでだよ!?」
湊は突然叩かれて怒ってる。
それは私が感情的になっていきなり叩いちゃったのが悪いってわかってるけど、わかってるけど!
それでも私が感情的になったのも元はと言えば湊のせいなんだから湊が悪いの!うん!そうに決まってる!!
……もう我慢できない!もう一回ちゃんと言う!!
「湊!私、もう一回言うけど、湊のこと────」
「ま、待ってくれ!その言葉は、明日、今度は……改めて、俺の方から言わせて欲しい」
「っ……!」
湊は顔を赤くしながらそう言った。
明日、俺の方から……
私、不安になって、怒って、もうこの感情を我慢できなくなってたのに、そんなこと言われちゃったら……
「うん、良いよ……ちゃんとモデルとしてこの浴衣で一位になって、湊のことを安心させてあげて、一位のモデルとして、そして星宮奏として、最高の形で湊と夏祭り行くからね!」
「あぁ、楽しみだな」
「うん!」
そろそろファイナルステージが始まる十分前になってたから、私は湊と離れて着付けに移って、いよいよファイナルステージ本番が始まろうとしていた。
「奏さん、ファイナルステージの舞台でお会いすることは予想していましたが、まさか奏さんが浴衣姿だとは思いもしませんでした」
ファイナルステージ直前に、トップモデルが私に話しかけてきた。
「そっちこそ、水着なんじゃなかったの?」
「気が変わったのです……それより、このファイナルステージ、私は絶対に負けるわけにはいきません」
「私だって、絶対負けられない」
「……ではお互い、全力で戦いましょう」
「うん!絶対勝つから!」
その言葉を最後に、私たちはファイナルステージに挑むために舞台に上がった。
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