死んでも欲しい
「お前だったら、自分の棺桶に何入れてもらいたい?」
「あー棺桶かあ。なにがいいかな…」
とある中学校の昼休み、眼鏡をかけた少年と短髪の少年が2人で副葬品について話している。先ほどの授業で話に出たことを思い出したのだろう。
「確か昔の人は死出の旅に役立つものを入れてたんだっけ?」
「そうそう、食料とか入れてたり。日本だと三途の川を渡るためのお金も入れてたってね」
「六文銭だね。地獄の沙汰も金次第っていうしね。でもお金は燃やせないだろうなあ」
「お金だけじゃなくて燃えないものも最近は入れられないらしいね。眼鏡とかもだめらしい」
「ええ…。眼鏡が無いと閻魔様の顔も拝めないじゃない」
腕を組んで唸る2人。燃えるもので死後に必要そうなものを考えているのだろう。
「季節ごとの服は欲しいな。向こうが暑いのか寒いのかもわからないし」
「いいね。おれは本とか入れてほしいなあ。暇つぶせるものが無いとつらい」
「たしかに。スマホも…ゲームも持ってけないだろうし。漫画ならいいかな」
「あとは、山吹色のお菓子ならセーフだったりしないかなあ」
「お菓子もいいな。鬼にあげて仲良くなれるかもしれない」
「そうだね」
眼鏡の少年がくすりと笑う。短髪の少年はぼんやりとまだ考えているようだ。
そこに、くせっ毛の目立つ少年がやってきた。
「よう。何の話してたの?」
「お、遅かったじゃねえか。今は自分の棺桶に何を入れてほしいか話してたとこ」
「燃えるもので、かつ死後に役立ちそうなものだよ」
「なるほどね、絶対入れてほしいものは1つあるね」
「お、なになに」
くせっ毛の少年が渋い顔で人差し指を立てる。
「トイレットペーパーだよ。絶対必要」
「…お前、トイレ長いと思ってたけど紙が無かったからか」
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