第17話 『今』を捨てて来て下さい

愚かだと思う。

長谷川と長山が、だ。

そう思いながら俺は.....目の前を見る。

すると長谷川がこう切り出してくる。


「.....一体、何故貴方だけが幸せなんですか?」


と。

俺は、?、を浮かべながらその姿を見る。

すると長谷川は笑顔のまま寄って来ながらニコニコしてくる。

貴方は絶対に許しません、とも。

今仲良くするって言った癖に。


「今の人達を捨てて私達と仲良くなりましょう?」

「.....何故そんな事を言う」

「私は貴方という人材が欲しいです。.....私は大金持ちなんです。実は。.....だから一生養う事が出来ますよ。貴方を。1億でも2億でも積みます。だから全てを捨てて私と仲良くなってくれませんか」

「.....断るって言ったらどうなる」

「身の保証が出来ません」


そう言いながら長谷川は笑顔になる。

俺はその姿に汗を一筋流す。

それから見ていると、穢らわしいですね、と声がした。

背後を見ると.....何故が美兎が立っている。

そして俺達を見据えている。


「先輩がそんな言葉に乗ると思いますか」

「.....貴方は美兎さんですね?.....貴方にはご用事は無いのですが」

「いえ。私に用事が無くても私が貴方に用事があります」

「.....そうですか?.....でも私はこのお方と2人きりで話したいです」


そういう事をさせると思いますか、と俺の手を握る美兎。

それから警戒心を露わにした。

よく見ると汗をかいている。

つまり走って来たのだろうけど。


「.....貴方もしつこいですね。.....美兎さん」

「.....私はしつこい人間ですから」

「そうですか.....じゃあまた今度話しましょう。隼人さん」

「.....」


それから隼人さんと言った長谷川は俺の元から去った。

手を振りながら.....みうには一切触れず。

そして俺に声を掛けてくる美兎。

不安げな顔をする。


「先輩.....その.....飲まれないですよね?.....あんな女の言葉に」

「.....お金に目が眩んで全てを捨てるなら今を生きる」

「.....先輩が飲まれないか心配です」

「俺は絶対にあんな女の言う事は聞かない。そもそもこの世に楽して生きる価値は無いと思うから」


そうですよ、と言ってから俺を見てくる。

それから俺を見たまま手を握ってくる。

俺はその姿を見ながら、ああ、と返事をしながら真剣な顔をする。

すると、先輩がそう言ってくれて安心しました、と涙を浮かべる。


「.....私は.....貴方を失ったら.....」

「.....凛子も丹生もそうだが.....俺は絶対に失わない」

「.....そうですね」


そして俺を見ながら手を離す美兎。

俺はその姿を見ながら頷く。

それから窓から外を見てから美兎を見る。

美兎。取り敢えず攻撃はまだ続くと思う。.....だからお前も気を付けてくれ、と言いながら向く。


「.....そうですね.....」

「俺は絶対許さない。こんな攻撃を」

「.....はい。.....また後で来ますね。先輩」


それから俺をニコッとしながら見てくる美兎。

俺はその姿に、じゃあな、と別れた。

美兎はその言葉に、はい。じゃあまた後で、と笑顔になって去って行く。

それを見つつ俺は教室に戻ろうとした時。


「初めまして」

「.....お前は誰だ」

「私の名前は長山翔子と申します」

「.....長山さんね。.....でその長山さんが何の用事だ」

「単純に言います。.....お嬢様にご協力下さい」

「.....断る」


またこういうのが来るか。

思いながら長山の横をすり抜ける。

だが長山は、貴方に拒否権はありません、と言ってくる。

俺は眉を顰めながら長山を見る。

すると長山は、私は貴方が何かを否定しても貴方の人生はお嬢様が握っています、と答える。


「何様だお前は。俺は人生を金庫に預ける様なお前らなんかに託した覚えはない」

「.....いえ。強制的でも従ってもらいます。私達は貴方が欲しいので」

「.....強制的.....ね。まあどっちにせよ.....断るよ」

「貴方に拒否権はありません」


そのお嬢様に伝えておいてくれ。

俺はお前の思い通りにならないってな、と俺は言葉を発する。

それから俺は長山を見る。

長山は俺の瞳をずっと見ながら、分かりました、と答える。

そして歩いて去って行った。


「全くどいつもこいつも.....」


そんな事を呟きながら俺は悪態を吐く。

それから俺は階段の手すりを触ってから登って行く。

そして自らの教室に戻って来た。

そうしてから俺は椅子に腰掛けてから頬杖をつく。


「.....金.....か」


1億だろうが2億だろうが。

今の幸せをぶっ壊すぐらいなら.....俺は受けられない。

思いながら俺は教室内を見る。


そして授業のチャイムが鳴るのを待った。

正直.....この先も安定してないだろうな。

そう思いながら俺は複雑な顔をした。

長谷川も長山も反省すれば良いが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る