第16話 破滅への一歩

美兎と凛子達と一緒に俺は歩いて行こうと思う。

それがこの今の坂を越える唯一の手段だろう。

そう思いながら俺は授業を受けていた。

正直.....授業はまるで集中が出来ない。


だが俺はゆかなと同じ様にはならない。

そしてゆかなと同じ様な環境にはしない。

だからこそ頑張りたい。

その一心で俺はノートを一生懸命に取っていた。



「先輩」

「.....?.....美兎。どうしたんだ?」


そんな勉強をしているとまた美兎が教室にやって来た。

それから何かを差し出してくる。

それは風呂敷に包まれた箱の様なものであるが。

俺は?を浮かべて俺は開く。


「.....これは?」

「ブドウ糖を増やす為のクッキーです」

「.....成程.....もしかして俺が勉強していたの分かったのか?」

「はい。それ以前にも一生懸命に頑張っていましたよね。先輩。だから頑張っている先輩に、と思いまして」

「.....それ以外にもあるな?」


え?.....あ。バレちゃいました?、と小さな舌を出す美兎。

俺はその姿を見ながら苦笑いを浮かべる。

美兎が来た理由。

それは、俺に会いたいから、だろう。


「.....だって先輩が好きですし」

「ちょくちょくやって来ていたのはそれが理由だな」

「そうですね。.....アピールですよ。先輩」


言いながら俺に笑みを浮かべる美兎。

それからウインクをした。

俺はその姿に少しだけ赤面する。

そして俺は、全く、と呟きながら苦笑いを浮かべた。


「私は.....先輩を全力でサポートします。これからもずっと」

「ああ」

「これは何というか先輩も私をサポートしてくれたら嬉しいです、という言葉の表れですね。1つは」

「そうなんだな.....」

「そうですよぉ」


言いながら後輩は笑顔を浮かべる。

すると周りが、何だ何だ、という感じで、いちゃいちゃすんなよぉ、と手を叩いてから茶化してくる。

俺はその事に、いやいや。イチャイチャじゃ無いって、と苦笑い。

だがその言葉に反発して美兎は、はい。イチャイチャです、と笑顔になる。


「.....収拾がつかなくなるぞ。美兎」

「良いですよ。別に。先輩とならどこまでも収拾がつかなくても」

「.....やれやれ」


そんな感じで俺は顔を引き攣らせながら額に手を添える。

それから暫くその景色を眺めていた。

するとチャイムが鳴る。

その音に美兎が、あらら。チャイムが、と言う。


「じゃあ先輩。戻りますね」

「いや戻りますって手遅れだろ」

「アハハ。まあでも先輩とイチャイチャ出来ましたしね」


そして手を振ってからそのまま美兎は帰って行く。

やれやれなもんだな。

因みに俺達の次の時間は先生の急病による自習だった。

俺はその事もあり美兎や凛子や丹生の事を考える。



美兎と凛子の事を考えていたら時間があっという間に経った。

俺は、ふむ、と考えながら昼飯を食おうと思いその前に教科書の整理を、と思って鞄を開けるとそこに何か入っている。

それは.....凛子の仕業の様だった。

俺は、?、を浮かべてゆっくり取り出すと.....それは青い布に包まれた弁当箱である事に気が付く。


「弁当.....?」


これはこっそり入れたな?

思いながら俺は青い風呂敷の包みを開けてみる。

するとそこには小さな弁当箱があった。

何故か容量がかなり小さい。

一体何故なのか、と思っていると色鮮やかな便箋の手紙が弁当箱に添えてあるのに気が付いた。


「.....なになに?.....(多分、美兎さんも作っていると思うからそれに配慮して小さくしています。愛しているよ。お兄).....オイオイ」


またやれやれだな。

思いながら俺は手紙を畳む。

そうしていると電話が掛かってきた。

その主は.....凛子だ。

俺は電話に出る。


『お兄』

「.....いや。お前という奴は勝手にこうしてお弁当なんか」

『でも嬉しかったでしょう?こうしてお手紙が添えられていると。そしてお弁当も』

「.....嬉しいっちゃ嬉しいけど.....」

『私が其方に行けない。だからこそ私のお弁当で少しでも楽しんでほしいと思った』


笑みを浮かべた様な返事に俺は、お前が言うなら楽しむ。.....有難うな、と答えた。

それから俺はお弁当に向く。

そうしているといきなりメッセージが来た。

泣いている様なマークで。

何だ?


(課題をやらされています。.....其方に行けない)


その様にメッセージが。

俺は、ああ.....さっきのチャイムの.....、と思いながらまた苦笑いを浮かべる。

それから、良いよ。ゆっくりで、と返事を書いた。

するとまたメッセージが届く。

そうしてからこう書かれていた。


(それから先輩。.....其方に誰か来ませんでした?)

(誰か?って誰だ?)

(何か観察されています。私。.....だから気になって)

(.....観察.....)

(はい。観察というか.....もしかしたらゆかなさんの残党かもしれないです。.....気を付けて)


残党.....か。

嫌な真似をしてくるな。

思いながら俺は顎に手を添える。

それから考えてトイレに向かう事にした。

のだがその途中で.....見た事のある女子に出会う。


「.....私の事覚えていますか?」

「.....お前。確かゆかなのお友達って言っていた一人だな。.....お淑やか系の」

「そうですね。.....私の名前は長谷川結菜(はせがわゆいな)と言います。.....仲良くしましょう。実は.....長山翔子(ながやましょうこ)ちゃんとも.....」

「.....誰か知らないが断る。俺はそんな真似をする気はない」


何をしに来たんだ。

思いながら俺は警戒をする。

それから長谷川を見る。

長谷川はニコッとずっとしていた。

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