第14話 学校にて

美兎と凛子が直接対決をする事になった。

それも俺を巡って、である。

俺は顔を引き攣らせて苦笑いを浮かべる。

だが2人共にやる気の様だ。

後にも引けない展開になっている。


帰って来てから俺は凛子を見る。

凛子は、今から家事するから、と言ってくる。

俺はその言葉に、お、おう、とだけ返事をする。


「お姉ちゃんどうしたんだろう」

「.....乙女には色々あるんだよ。丹生」

「.....え?」

「色々な。お前なら分かるだろ?」

「.....はっ!ま、まさか.....」


お前の想像している、まさか、と。

俺の想像している、まさか、は同じなのか知らないが。

とにかくそれで合っていると思うから何も言わなかった。

苦笑いだけまた浮かべて。


「それでお姉ちゃんはあんなに.....」

「ああ。.....お前の想像しているものが合っているかは知らないがそれだ」

「.....不思議だね。.....お兄ちゃん。乙女って」

「俺に聞かれても分からん。.....だけど確かにな」


それから俺達は洗濯を鼻歌を歌いながらしている凛子を見る。

そして俺達はソファに腰掛ける。

すると丹生は少しだけ深刻な顔をした。

そうしてから、お兄ちゃん、と言ってくる。


「.....どうした?」

「大変だったね。今回」

「.....そうだな。.....お前の言うとおり何もしなければ良かったかもな」

「でもお兄ちゃんは手出しをあまりしなかった。.....凄いと思う」

「.....俺はそんなに偉いかな」


偉いと思う。

それが本当の私達のお兄ちゃんだよ、と笑顔になる丹生。

それから、お兄ちゃんを好きになっていたらヤバかっただろうね、と柔和になる。

オイオイお前には彼氏が居るぞ、と言いながら。


「うん。だから例えばの話だよ」

「.....そうか」

「.....その代わりにお姉ちゃんが結構動いてくれている。.....だからありがたいなって思うよ」

「.....そうだな。.....アイツは俺が好きだしな」

「そうそう」


言いながら俺は少しだけ恥ずかしくなる。

自らで、好き、と言うのも、と思いながら。

それから頬を掻いた。

すると、もし.....お姉ちゃんが美兎さんと勝負しているなら申し訳ないけど私はお姉ちゃんを応援する、と丹生は切り出す。


「.....私のお姉ちゃんは家族。.....だから大切な存在。.....お兄ちゃんも家族。.....だから命。.....だからこそ私はお姉ちゃんを応援する」

「.....お前は極端だな」

「極端じゃないよ。.....これが当たり前って思っているだけだよ」

「.....」


当たり前の事で生まれた時から応援の対象は決まっている、と俺の手を握る。

それから真っ直ぐに俺の瞳を見据える。

私達はお兄ちゃんに巡り会った。

だからその分.....お兄ちゃんを応援したい、と俺にまた柔和になる。


「そうか」

「.....お兄ちゃん。.....でも私は強制はしない。.....お兄ちゃんが本当に好きになった人と幸せになってほしいから」

「.....」

「.....でも結果は出してね。.....誰を選んでも。選ばなくても」

「.....約束する」


言いながら俺は丹生と握手をする。

それから丹生が俺を抱きしめた。

すると凛子も俺達のやっている事に気が付いたのか抱きしめてくる。

その後に俺達は笑い合った。



因みにだが.....翌日になってから。

俺は学校に登校すると早速という感じで男子生徒と女子生徒が謝ってきた。

悪かった、と言いながら。


男子生徒も女子生徒も深々と頭を下げた。

それから謝ってくる。

俺はその様子に、俺じゃなくて美兎に謝ってくれ、と告げた。

すると男子生徒も女子生徒も、当たり前だよ。後で謝る。だけど先にお前に謝ろうって話になったんだ、と言ってくる。


「.....成程な」

「ありもしない噂だった。反省しかない。ごめんな」

「.....そうだな」

「.....分かった。有難うな。鈴木。佐藤」


すると、で.....牡馬だけど.....どうなったんだ、と聞いてくる。

俺はその言葉に、何も。.....何も分からない。だけど今度.....準備が出来次第、ゆかなのご両親が謝りに来たりする、と話す。

その言葉に顎に手を添えるみんな。

そうなのか、と言いながら。


「まあ許せないよな」

「.....もう許せないとかそういうの超えている。.....正直何も考えたくない」

「.....そうか」

「ゆかなはもう救いようがない」


確かにな、と佐藤が話す。

それからどうしようもないと思うのは仕方が無いよな、と鈴木。

俺は、まあな、と言いながら俺は苦笑いを浮かべる。

そして、アイツというかゆかなはアイツなりに反省はしているみたいだが俺はもう会いたくはないな、と告げる。


「まあそうだな。あまりそういう碌でもない奴に関わると佐々木も幸せにならない。.....だから会わない方が良いだろうな」

「正直謝ってくるってのも要らないけどな。何をしてくるかも分からんし。相手様がな」

「まあそういう輩の親って碌でも無いしな。分かる」

「そうだな.....」


俺達はそんな感じで会話をする。

それからチャイムが鳴った。

俺達は各々別れてから椅子に腰掛ける。


何というか。

碌でもない事があったが。

でもその分.....俺に周りが関わってきている様な。

そんな印象を受けた。

一応仮にもちゃんと謝ってきたしな。

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