第8話 貴方へ
俺は誰かを救った覚えはない。
だが美兎は俺が窮地を救ったと言う。
俺は、?、を浮かべながら見ながらの帰り道。
セーラー服の女子が話しかけてきた。
中学生?だ。
「すいません。美兎お姉ちゃんの彼氏さんですか?」
「彼氏?!違うぞ。彼氏じゃない。誰だ君は」
「私は長富遥(ながとみはるか)といいます。美兎お姉ちゃんとは親戚の存在です」
「ああ。そうなんだな」
「何だか最近、美兎お姉ちゃんが元気なので調べに来ました」
調べに来た、という長富さん。
俺は、?、を浮かべながら見る。
すると長富さんはニコッとしながら俺にゆっくり寄って来る。
それから意地悪そうな感じで聞いてくる。
「最近、周りが騒がしいんです。それは貴方だったんですね」
「俺の影響?」
「はい。何だかずっと騒がしいんです。だから気になっていました。なるほど。確かにイケメンですね。あはは」
イケメンと言われ俺は赤面する。
それから目の前でニヤニヤする長富さんを見る。
俺は、揶揄うなよ、と言いながら慌てる。
すると長富さんは俺に向いてから、すいません、と謝ってから、えっとですね。実は美兎お姉ちゃんの事に関して来ました、と話してくる。
「どういう事だ?」
「美兎お姉ちゃんですね。実はシングルマザー。母親に育てられているんですが」
「!」
「.....最近は明るいです。何でかなって思いまして。貴方なら安心ですね」
「そうだったんだな。実情を知らなかった。美兎の」
でもお姉ちゃんは昔より遥かに元気ですね。何かあったんですね、と笑みを柔和に浮かべながら、隼人先輩。有難う御座います、と笑顔になる。
俺は何もしてない。
全てはアイツの力だよ、と笑みを浮かべた俺は長富さんに向く。
「.....隼人先輩。そうは言いますけど隼人先輩の力もありますよ。あはは。控えめに言っても、です」
「まあそう言ってくれるのは有難いな」
「ですね」
それから俺は長富さんに、アイツに伝える事が出来るなら伝えてくれ。お前は一人じゃないって、と話した。
だが長富さんは、いいえ。言いません、と意地悪く返事をする。
俺は、?!、と思いながら長富さんを見る。
「私からお伝えするんじゃなくて隼人先輩がお伝え下さい。その方が絶対に良いです」
「お前は意地悪いな」
「私は至って正義深いですよ」
物事をはっきりしているだけです、と俺に笑む長富さん。
俺はその姿に、そうか、と返事をした。
すると長富さんは、すいません。引き留めてしまって、と頭を下げる。
俺は首を横に振った。
それから柔和になる。
「有難う。君が言ってくれたお陰で俺はまた美兎の新たな事を知れた」
「美兎お姉ちゃんを大切にしてやって下さい。美兎お姉ちゃんはきっと貴方を求めています」
「いや。それは無いだろ。流石に」
「えー?そうですか?怪しいです」
「俺はそんなに良い人じゃ無いから。それに浮気される身分だしな」
俺は自嘲する様にする。
すると、隼人先輩、と真剣そうな声がした。
俺は顔を上げる。
長富さんは俺を怒る様な感じで見ている。
俺は、?、をまた浮かべた。
「自分に自信を持って下さい。私は貴方を信じています。貴方は本当に良い人です。目が嘘を吐いてない」
「そうかな」
「私が言うんだから間違いないです。私は人の裏切りを強く知っています。裏切りを強く憎んでいます。でも貴方はとても純粋な目をしています。これまでに会った事が無い暖かな目をしていますから。貴方は信頼出来ます」
俺にそう言いつつ柔和になる長富さん。
それから、真っ直ぐにその思いに向いて下さい。では、と立ち去る。
俺はその背を見ながら顎に手を添える。
それから空を見渡した。
そんなもんかな、と思いながら。
「.....頑張るか」
そんな事を考えながら俺は空を見つつ歩き出した。
暗い空だったが段々と明るくなってきた。
なんというかまるで日が俺だけに当たる様な道筋が出来た。
俺はその様子を見ながら.....家に帰宅する。
☆
「お兄ちゃん」
「.....?.....今日は早いな。お前」
「今日は生徒会の仕事を変わってもらった」
家に帰ると義妹の妹、田中丹生(たなかにう)が俺に声を掛けてきた。
俺は、珍しい事だ、と思いながらその姿を見る。
何故珍しいかといえば丹生は生徒会書記であるのだ。
その為に俺とは帰るタイミングがズレる。
だが何故か今日は丹生は家に居た。
「.....お兄ちゃん。聞いたよ。.....大変だったね」
「それは誰から聞いたんだ?」
「美兎さんだね」
「.....余計な事を言いやがって。.....でもまあもう吹っ切れたしな。ただしアイツはまだ何か企んでいるみたいだが」
信じられないね、と言いながら俺を見てくる丹生。
俺は、まあ.....仕方が無いな、と諦め半分で話す。
それから鞄を置いてから靴を脱ぐ。
そして鞄を持った。
「.....アイツはもう昔のゆかなじゃない。.....最低な女だ」
「それは確かにね。.....もう取り返しはつかないから.....倒すしかないね」
「分からせるとかな。.....まあ.....もうどっちでも良いけどとにかく最悪の気分だ。どうにかしたい気分ではある」
「だね.....」
それから俺は、学校はどうなんだ。丹生、と聞くと。
丹生は、まあ色々あるけど楽しい、と答えた。
その言葉に、お付き合いしている生徒は良い男か、と聞く。
そんな言葉に顎に手を添える丹生。
「.....少なくともゆかなさんよりかは」
「.....良かった。なら安心だ」
「お兄ちゃんも大変だね」
「もう諦めた。色々と」
「.....うん」
そして俺達はリビングに入ってから丹生は家事に。
俺は水を飲んだ。
それから考え込む。
果たしてどうしていくべきか、と。
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