第2話 コーフンします?
『私は絶対に許しません。だからこそ復讐をします』
そんな事を美兎が言っていたが。
何故そんなに固執しているのかは分からない。
だけど復讐をしたい、と言っているので.....取り敢えず俺は様子見と思いながらゆかなを観察する。
ゆかなは変わらず友人と話をしていた。
俺はその姿を見ながら溜息を盛大に吐く。
それから俺は立ち上がってからそのままトイレに向かう。
するとゆかながやって来た。
そしてニコッとしながら俺を見てくる。
特徴的な黒髪のロング。
それから笑顔の絶えない美の顔立ち。
途轍も無い美少女だ.....が。
今となっては汚れた顔にしか見えない。
「隼人」
「.....どうした」
「いやいや。どうした、じゃないよ。何だか隼人、ずっと悩んでいる様な顔だったから」
「俺にだって悩む時はある」
「.....そうだけどね。.....でも隼人が悩んでいたらやっぱり気になるから」
どの口が言っているのか。
思いながら俺は多少イラッとしながらも.....ゆかなをちゃんと真っ直ぐに見る。
それから、.....ゆかな。お前は隠し事とかしてないよな?、と聞く。
するとゆかなは?を浮かべて、無いよ?、と言う。
だけどそんな平然な顔をしているが。
このアホがホテルに入って行ったのを知っている。
何故なら俺が見ていたから、だ。
別の男と一緒にホテルに入って行ったのだ。
それをNTRと言わずに何をNTRというのか。
思いながらも俺は平然な感じを保つ。
「隼人。トイレ行くんだっけ?」
「そうだな。.....だからまた後でな」
「あ、うん」
「.....お前もトイレなのか」
「私はトイレじゃなくて隼人に声を掛けようと思ったの」
それから、じゃあね、と去って行くゆかな。
俺はその姿を見送ってから頭に手を添えてそのまま男子トイレに入る。
そして個室に入ってから項垂れた。
鍵を掛ける音が大きく聞こえる。
「.....どうしたものかな」
返事が無いのにそんな呟きをしても、と思ったのだが。
いきなり返事があった。
先輩。ここを開けて下さい、と。
な!?、と思いながら慌ててドアを開ける。
そこに何故か美兎が立っていた。
「お前何してるの!?ここ男子トイレ.....」
「気にしませんよ。.....入れて下さい。他の男子が来ます」
「あ、ああ」
そして俺は個室に美兎を招き入れる。
すると美兎は俺を見上げてきた。
改めて見ても相当な美少女だなコイツ。
思いながら俺はそっぽを向く。
「先輩。コーフンしているんですか?」
「そんな訳あるか。俺にはゆかなが居るぞ」
「その女は役に立ちますか?.....だって浮気したんですよ?別れましょう。そういう話をしに来たんですけどね」
「.....!」
「今日別れた方が良いと思いますけど。私的に」
あくまで私情を挟むのは良く無いと思いますが。
でも先輩は頑張りすぎです、と俺を見る。
俺はその様子に、まあそうだがな、と答えながら苦笑した。
すると何を思ったか美兎は俺の首に手を回す。
な、にを、している!?
「これでもコーフンしないですか?」
「い、いや。揶揄うな!?」
「私は真面目に聞いています。.....揶揄っていません」
言いながら美兎は俺をじっと見てくる。
そして笑顔になる。
愛しい人、という感じで見てくるが。
コイツ揶揄っているな?そんな気持ちも無い癖に、と思う。
「私がもし先輩を虜にしたら私を好きになってくれますか」
「は!?お前冗談はよせ.....!?」
「私は言いましたけど冗談とかで言って無いです。.....ただ先輩ならどう思うか真面目に聞いています」
そして俺をジッと見てくる。
潤んだ目で、だ。
俺は真っ赤になりながら抵抗する。
するとドアが開く音がした。
男子トイレの、だ。
「いやー。小テストどうだったよ?」
「ばっか。全然ダメだっつーの」
そんな感じで同級生が会話をしている。
その中で俺は.....ついうっかり美兎を抱きしめてしまった。
そしてこっちに寄せている。
何をしているのだ俺は。
「あはは。先輩ったら大胆ですね」
「静かにしろって。.....バレたらどうする」
「良いですよ。別に。.....先輩となら」
何でそんな事を言う。
意味が分からないまま俺は美兎をジッと見る。
すると男子生徒はそのまま去った。
俺はホッとしながら美兎を離す。
「.....惜しかったですね。イチャイチャの噂が広まれば良かったのに」
「お前な。.....こんなの好きでも無い相手にするな」
「本当にそう思っていますか?」
「え?」
俺は顔を上げる。
それから美兎を赤くなって見る。
美兎は個室から出てから周りを見た。
そしてそのまま、では先輩。出ましょう、と俺の手を引く。
俺はその美兎に聞く。
「.....お前.....俺が好きなのか?」
「さあ?どうなんでしょう」
小悪魔はそう言いながら唇に人差し指を添えてウインクした。
そのまま俺の手を引いてから一緒にトイレを後にする。
それから美兎は戻って行く。
何だったんだ.....本当に。
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