第30話

 翌朝、手前と柘榴は戸隠学園の校舎の一つ、玄山棟の入り口にいた。丑寅訓練場が見える。夏休みの早朝だと言うのに人影が二つ、朝練だろうか?いや、あの黒髪と白髪は

「あ〜、傷代君、風見君、おはよう〜」

 名前を呼ばれた二人もこちらに気付き、歩み寄って来る。

 黒髪の方、傷代苅斗は怪訝な表情で言う。

「おはよう、築茂さん。鹿島も。帰省したんじゃ無かったのか?」

「手前らの家はこの学園近くだからね。少し用事があって来た」

 そこで白髪の方、風見錐人も眠たげな表情で言う。

「おはよう二人共。いいなぁ、僕は実家に戻るのに数時間掛かるから」

「そうだ〜、傷代君と風見君も宝探し一緒にやらない?」

 柘榴は地図を取り出して二人に見せる。いつから宝探しになったのだろう?

「…いいぜ、付き合おう。風見もどうだ?」

 傷代が少し考えこんでからそう言うと、風見は

「少しくらいならいいか」

 と同意する。


「此処から下に降りられるみたいだね」

 手前は校舎の中を進みある扉の前に来ていた。

「この建物に地下があるなんて知らなかったよ〜。うん?鍵が掛かっているね。水君、開けてよ〜」

 柘榴に呼ばれて手前は懐からビー玉を取り出す。術で形状変化したビー玉を鍵穴に侵入させると、形を変えながら中を弄る。所謂ピッキングだ。

 試行錯誤する事10分、鍵穴からガチャリとした音が聞こえた。ビー玉を元の球状に戻し仕舞う。

 風見が驚嘆の声を漏らし、傷代は口笛を鳴らす。柘榴に至っては拍手をしている。

「行くよ」

 手前は嘆息して扉を開ける。その奥には地下への階段が続いている。不気味な気配に一時逡巡するも4人は進んでいく。

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