第24話
6月4週目の土曜日、風見錐人は一人訓練場にいた。
「まさか涼に彼女が出来るとはね。まぁ中身はアレだけど」
羨ましいなぁ。いつか僕も勿朽と。うん、その為にも頑張らないと。
今週は授業で隠密術について習ったのでその復習をしよう。
僕は昔から気配を消すのが得意だった。集中して力を抑え、息を殺す。
上手く出来ているつもりだが確証は持てないな。そうだ、玄武寮に戻ってみようか。この時間なら誰かしら居る筈。
玄武寮へと戻ってきた。途中何人か生徒を見かけたが誰も僕に気がついてはいない。僕ごときに反応するまでも無いと思っていた可能性はあるが。
寮の中に入る前に周囲を見てみようか。亜妻達が訓練している可能性もあるし。
そう思い寮の裏手に周ると、林の前に一人の女生徒がしゃがみ込んでいた。焦茶のポニーテールが揺れている、勿朽だ。
何をしているんだろう?僕は気になって忍び足で近づく。
「しまちゃ〜ん。可愛いなぁ、よしよし」
えっ、何、何が起きた?勿朽がこの猫撫で声を発したの?
更に近づくと勿朽が誰に話しかけているのかに気付いた。シマヘビだ。勿朽の顔も見える。凄い緩んだ顔だ。
「痛っ」
蛇が牙を剥いた。
「ふふっ、噛まれちゃった。あはっ♪」
恍惚の表情をしている。シマヘビに毒は無い筈だから素だろう。
動揺してジャリッと地面が鳴る。
「誰⁉︎って風見君?…見てたの?」
勿朽の顔は真っ赤だ。嘘を吐いても無駄だろうな。
「蛇、可愛いよね」
そう言うと勿朽が僕を睨む。
「…誰かに話したら殺すから」
「はい」
部屋に戻り布団に突っ伏す。やばい超愛おしいんだけど。
「明日からも訓練頑張ろう」
それから一週間、勿朽に無視され亜妻に呆れられたのは言うまでも無い。
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