第21話

 6月3週目の木曜日、今日も御影と読んだ本について語り合っていた。

「そういえば折霜君、狂言シリーズの最新刊が発売されたんだ。よければ週末一緒に買いに行かない?」

「そうなんだ、もちろんいいよ」

「土曜日は午後から委員会の仕事があるから日曜でどう?」

 こうして御影と出かけることとなった。


 6月3週目の土曜日、錐人と訓練を終えて雑談をしていた。

「それってデートじゃん」

「やっぱりそうかな?」

「うん、その気が無きゃそんな事言わないよ。いいなぁ。僕なんて勿朽さんに本の話をしたら、『そんな事してる暇があったら修行したら?』って言われたよ」

 錐人が肩を落とす。こいつも報われて欲しいな。


 6月3週目の日曜日、俺と御影は学園を出て最寄りの街に来ていた。

 無事に新刊を入手し、今は喫茶店で小休止を取っている。

「狂言シリーズで御影さんはどのキャラが一番好きなの?」

「狂言使いの芥郎かな」

「芥郎って姑息じゃん。そんな奴がいいの?」

「そうだけど、私のお父さんに似ているんだよね」

「へぇ、そうなんだ」

「少し頼りないけどいつも私達を笑顔にしてくれたの」

 御影の顔が曇ったのを見て俺は慌てて言う。

「俺は助手の藤乃が好きだな。どことなく御影さんに似ている気がして」

 ん?これってほとんど告白じゃね?そう思い御影を見ると

「ふふ、ありがと」

 そう言って微笑んでいた。


「折霜君、今日は付き合ってくれてありがとう」

 喫茶店を出て帰路に着く。

「こちらこそ楽しかったよ」

 御影が立ち止まるので、俺も立ち止まり彼女を見ると

「私も楽しかった。もっとずっと一緒にいたいな」

 そう言って御影が抱きついてきた。突然のその行動に俺の頭は混乱する。

「駄目?」

 上目遣いで御影が尋ねてくる。

「駄目じゃ無いよ、俺も御影さんといっしょにいたい」

 俺の返答に感極まった様に御影は目を瞬く。

 そしてそっと俺の唇を奪った。

 驚きと御影の唇の柔らかさに俺は硬直する。混乱は増すばかりで身体に力が入らない。

 間もなく俺の意識は途切れた。

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