第17話

 5月4週目の日曜朝、僕はまた第二備品倉庫に来ていた。

「深山君、来たよ」

「待たせたね錐人君。早速だけどこれが君の為に選んだ武器だ」

 そう言って深山は一振りの忍者刀を差し出した。白地に茶色の模様。忍者刀と言うには短いが脇差と言う程短くも無い。刃幅は狭く刃厚も薄い。

「軽いね、そして持ち易い」

 僕は刀を受け取り矯めつ眇めつする。

「取り回しの良さを追求してみた。その分耐久性は落ちるからあまり無茶な使い方はしないように」

「ありがとう、ちょっと試し振りしてみてもいいかな?」

 そう言って僕は外に出る。新しい忍者刀を使って型稽古をする。暫くすると楓がやってきた。

「それが新しい刀?使い心地はどう?」

「いい感じだよ。試してみる?」

 僕の言葉に楓がニヤリと笑む。

「いいよ。また胸を貸してあげる」


 それから僕らは深山を呼んで来て、互いに向かい合う。楓は前回と同じく片手脇に短刀を構え、僕は忍者刀を片手上段に構えた。

「はじめ!」

 深山の合図と共に僕は距離を詰める。そのままの勢いで袈裟懸けに斬り掛かるも楓の短刀にいなされる。

 続けて僕は上段の右蹴りを繰り出す。楓は右腕で防御するも耐え切れずにタタラを踏む。

 その隙をついて僕は忍者刀を閃かす。楓はなんとか短刀で弾くも、その時には僕の左の掌は楓の顔を捉えていた。

「そこまで!」

 深山の決着を告げる声が響く。

「強くなったね錐人君。まるで別人みたいだよ」

「しっかり身体を休ませたし、なんといってもこの刀のお陰だよ。改めてありがとう深山君」

「そう言って貰えると厳選した甲斐があるね。そうだ錐人君、その刀の銘は決めたかい?」

「僕は普段は武器に名前なんて付けないけど」

「おいおい、自分の命を預ける武具は愛着を持って接しないとバチが当たるよ」

「そうだな、じゃあ『野盗のすり』で」


 こうして僕は新しい刀を手に入れた。一歩前に進んだような気がした。

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