第13話
大型連休明けの放課後、第一訓練場にて。夕日が差し込む中、僕は玄冬先輩との決闘に臨んだ。僕と玄冬先輩の他には涼、錬次、そして勿朽がおり、緊張感が漂っていた。
玄冬先輩は冷静な眼差しで僕を見つめ、軽く息を吐いた。
「風見君、準備はいいかい?」
僕は頷き、風を操る力を集中させた。
「はい、お願いします」
玄冬先輩は冷笑を浮かべた。
「ハンデをあげよう。僕はここから一歩も動かない」
その言葉に僕は顔を顰める。嘗められていることに憤りを感じたが、すぐに考えを改める。油断してくれるならその方がいい。
「では、始めよう」
玄冬先輩が告げる。
僕は一歩前に踏み出し、手を前に掲げた。右手から放たれる小さな竜巻が玄冬先輩に向かう。しかし、彼は微動だにしないまま、氷の壁を作り出して竜巻を遮った。
「その程度では僕には通用しないよ」
玄冬先輩は冷笑を浮かべたまま言った。
それは僕だって分っている。僕は即座に玄冬先輩に突進する。刀を振りかざすが氷の壁に遮られて彼には届かない。構わず僕は刀を振り続ける。
氷と鉄がぶつかる音が響く中、玄冬先輩が呆れた声で言う。
「無駄だよ、そんな攻撃では僕の氷を打ち破ることなんて出来ない」
そんなことは百も承知だ。だがそんなことはおくびにも出さない。まだ、まだだ。
「もういいよ、時間の無駄だ」
氷の盾が消える。そして次の瞬間、下方から迫りくる氷の尖柱が僕のいる位置に出現した。
しかしそこにもう僕はいない。
「歩法『
僕は気配を消し、玄冬先輩の背後を取り、忍者刀を彼の頸筋に向けて振り下ろした。
玄冬先輩はその攻撃を瞬時に察知し、氷の盾で防いだ。
「君の努力は認めるが、まだ足りない」
その瞬間、僕の体が力尽き、膝をついて倒れ込んだ。息が上がり、体中が痛む。
「後ろを取られたことには驚かされたが、ここまでのようだね」
僕は涙が伝う頬を左手で隠す。自分の無力さが心底情けなかった。
勿朽は何も言わずに僕を見つめていたが、錬次と涼が駆け寄ってきた。
「何度負けても僕はあなたに勝つ」
僕は涙声で叫ぶ。
「そうかい」
玄冬先輩はそう呟き去っていった。
こうして僕に初めて、目標と言えるものが出来た。
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