忍days

第12話

　四月末から五月初頭の大型連休、僕は実家に帰ることにした。今のままでは玄冬先輩に勝てる筈が無い。実家でみっちりと修行するしかないだろう。因みに涼と錬次も誘ったが断られた。二人とも部活があるらしい。青春しているなぁ。

　そんな訳で僕の帰郷と修行が始まるとお思いの皆様には申し訳ないのだが、全カットだ。誰にでも話したく無いことはあるだろう。気が変われば追記するだろうが、今はご勘弁願いたい。

大型連休最終日の夜、第一訓練場にて。

「そこまで！」

　錬次の声が響く。

　僕は涼の首筋に添えられた忍者刀を外す。

「何だよ、今のは？」

　困惑した涼の問いに僕は答える。

「修行の成果だよ」

　涼とは何回も模擬戦をして来たが、僕が勝ったのは初めてだ。

「竜巻出しても気絶しないし、成長しすぎだろ」

「それは俺が備品置き場から借りてきたその手甲のおかげだよ」

涼の主張を錬次が訂正する。

「忍具『残差（ざんさ）』だったか、これを使えば僕もなんとか力を制御できるよ」

僕がそう呟くと涼は

「力の引き出し方が分からない初心者用の玩具じゃねーか、高校生にもなってそんなの使う奴なんていねーよ」

ここにいるのだが、まあいい使えるものは何でも使うのだ。

「涼に勝てるなら何も出来ずに敗北ってことは無いだろ、健闘を祈る」

「俺に勝っておいて無様な結果は許さねえぞ、気張っていけ」

錬次と涼の激励を受け僕は答える。

「まあやれるだけやるよ」

最強と最弱の闘いが幕を開けようとしていた。