　演習終了の鐘の音が森に響く。

　涼と錬次は地面に座り込んでいた。二人の手には手錠がかけられている。

　あの時、錬次の攻撃を喰らった煤炭は倒れなかった。そして煤炭は力を使い果たした二人に手錠をかけて姿を消した。

「煤炭先輩強かったな」

　錬次の言葉に涼は答える。

「ああ、悔しいな」

「もっと強くなろう」

「そうだな、次は負けない」

　蒼茉も鐘の音を聞く。

「終わったか、ありがとな錐人。おかげで逃げ切れたよ」

　勿朽は何も言わずに去っていった。今も離れた場所でぽつんと立っている。顔は見えない。怒らせただろうか？錐人はじっと勿朽を見つめる。

　どれくらいそうしていただろうか？鐘の音が鳴ってしばらく経った頃、森の方から足音が聞こえた。

　音のした場所には亜妻、傷代、鹿島の三人が居た。皆ボロボロだけど手錠は着けていない。

　僕は三人に駆け寄り言う。

「良かった。捕まらなかったんだね。でもその傷大丈夫？」

　傷代が答える。

「戦闘中に鐘が鳴ったんだ。あと少し鐘がなるのが遅かったら危なかったな」

「皆揃ったようじゃな」

　そこで竜胆先生の声が響く。

「無事生き残りが出たようじゃな。他の組も何人か逃げ切れたようじゃぞ。健闘御苦労。これで演習を終わりにする」

　それぞれの想いを連れて夜は老ける。僅かばかりの余韻を残しながら。

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