第6話
〜折霜涼と穂月錬次〜
「錐人来ないな」
涼が呟く。
「まあ誘ったが強制したわけじゃないからな。あいつにとっては独りの方がいいんだろう」
錬次が答える。
演習開始から1時間程経った頃。彼等は演習林の中央付近、待ち合わせ場所に屯していた。
「じゃあそろそろ移動しようよ。ここは目立つし」
涼は言って下方を見やる。そこには鬼の面を被った男性が倒れていた。
気絶している上に手錠を掛けられている。先程、涼と錬次は鬼の襲撃を受けた。
流石は三年生、中々強かったが、二人がかりなら倒せないことは無かった。
「そうだな、行くか」
錬次は言いながら移動を開始する。
「しっかし、退学と聞いた時はびっくりしたけど案外何とかなりそうじゃん?」
「まあ学園側もそんな簡単に一クラス丸々退学はしないだろうし、発破くらいの意味合いじゃないかな」
「実際、鬼と戦っても勝てたわけだし、いけるでしょ」
「油断するなよ、現生徒会や元風紀委員の幹部達は一線を画す強さらしいからな」
二人が会話しているその時、前方から突然黒い鎖が現れた。
錬次は、自分に向かって一直線に放たれたそれを日本刀でなんとか防ぐ。
見ると正面に黒髪の青年が立っていた。
鬼の面で目元は見えないが、覗く肌は病的なまでに白い。
「・・・・・・」
彼は両手に黒い鎖を垂らして無言で佇んでいる。
それを見て錬次は言う。
「やばいな、あの人『黒鎖の
「おいおい、穏やかじゃあ無いね。でも戦うしかないだろ」
下手に逃げたら直ぐに捕まってしまう。涼の直感が告げていた。
涼は氷を纏わせて肥大化した手裏剣を構える。
錬次は炎を纏わせた日本刀を構え言う。
「行くぞ」
涼と錬次は苦戦していた。
何度目となる煤炭に向かっての二人同時攻撃も左右の鎖に弾かれる。鎖は攻撃を捌くと、直後二人に襲いかかる。
涼は手裏剣で防ぐが錬次は耐え切れず後退をする。そこで錬次は自分の失態を悟る。
煤炭の鎖が彼の影に沈み込んだ。そして錬次の影から鎖が現れ、彼の腹を直撃する。
「ぐふっ」
錬次は堪らず吐血する。
「錬次!」
涼が叫ぶ。錬次へ駆け寄ろうとするが、鎖がそれを許さない。
「近接も遠距離も隙が無いとか、化け物かよ」
錬次は三年生、その筆頭の強さに歯噛みする。
「錬次、このままじゃジリ貧だ。一気に決めるぞ」
涼はそう言って後ろに下がる。当然影からは鎖が襲いかかる。
それを予想していた涼は手裏剣で鎖を防ぐが、手裏剣を覆っていた氷が粉々に砕け散る。それだけで攻撃の勢いは殺せず、涼は後方に吹っ飛ぶ。
何とか体勢を維持した涼は近くの木へ跳ぶ。そして三角飛びの要領で煤炭の上方へ飛び上がった。
涼は取り出した棒手裏剣を逆手に構える。氷を纏った棒手裏剣は氷塊と呼ぶべき大きさへと肥大化する。涼は氷で巨大化したそれを煤炭に投げつけた。
しかし、煤炭の鎖が棒手裏剣に巻き付き、覆っていた氷が弾け飛ぶ。
涼の大技に煤炭の意識が向けられたその瞬間を錬次は見逃さなかった。
錬次の斬撃を煤炭は鎖で捌こうとする。
しかし炎を纏った渾身の一撃は鎖を弾き、煤炭の身体を捉え、錬次の攻撃が直撃した煤炭が吹き飛んだ。
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