第4話

 4月2週目の日曜日、僕は授業でも使った訓練場に来ていた。

 そこには待ち合わせの相手二人が既に揃っていた。

「遅いよ、錐人」

 トゲトゲした短髪にやや小柄な少年、折霜涼おりしもりょうは溌剌に言う。

「まだ待ち合わせ時間にもなってないだろ、涼」

 それをすっきり揃えた短髪に長躯の少年、穂月錬次ほづきれんじが嗜める。

「お待たせ、入学式以来だね二人とも」

 僕は答える。彼等は僕と同じ中学校の友人である。


「先生の攻撃何だった?うちは水で拘束しようとしてきたから凍らせてやったぜ」

「雷を放射状に広げてきて、みんな感電して動けなくなってたな。まあ俺は避けたけど」

 近況報告や雑談に華が咲く。

 涼と錬次は優秀なのだ。対する僕は、対人訓練でも術の暴発を恐れて連敗を重ね、学園最弱と噂されている。

「そうだ、せっかく戸隠学園に入ったんだ。学園生活の目標でも決めようじゃないか」

「錬次、真面目〜」

 涼が冷かす。

「俺の目標はこの学園の生徒会長になることだ」

「錬次、重ねて真面目〜」

 僕も悪ノリする。

「む、強さと人望を兼ね備えた者のみがなれる学園の顔だぞ。憧れるじゃないか」

「ふーん、錬次ならいけるんじゃん?なれる、きっとなれるよ」

「茶化すな、涼。そう言うお前の目標は何なんだ?」

「俺?えーっと、そうだな。学園最強の忍者になる!ってのはどう?」

 錬次が嘆息する。まあ、涼はこんなやつだ。

「何だよその反応は!?錐人、錐人の目標は?」

「えっと、平穏な学園生活を送る。かな?」

 二人のような大それた目的もない。安寧が僕の求めるところだ。

「えーっ、つまんないの」

 涼がむくれる。

「錐人、そう思う気持ちは分かるが、この学園でそれは難しいぞ」

 錬次が言う。

「一流の忍者になるために厳しい試練が課せられるからな。来週にも実戦演習があるらしい」

「「実戦演習?」」

 僕と涼の声が重なる。

「ああ、その名も『地獄鬼ごっこ』だ」

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