21
かおりさんは手際がよかった。
それが後ろから見ていてもよくわかった。
料理しながら体調はどんな感じとか病院ではどうだったのとか
いろいろ聞いてきた。
僕はふとんの上に座って答えていた。
なんだかあまりにも自然でまるで母親が着て料理しているような錯覚に陥った。
いやまずい。
僕にはしおみさんが居るんだ。
ほかの女性にこんなことをしてもらってはだめだ。
でも断れない。もう料理をしてしまっている。
どうすればいいんだ。
ふたりっきりが良くないと思い、イチローさんに来てもらおうかとも考えた。
それはそれでおかしいしそんなことは頼めない気がする。
そんなことを考えていたらもう料理がひとつ出来上がってしまった。
おいしそうな野菜スープだった。
出されたのに飲まないわけにもいかずスープをすする。
なんとおいしいんだろう。
体にしみわたった。
それほど食欲がないのにずんずん飲めた。
かおりさんは僕がおいしそうに飲むのを笑顔で眺めている。
そしてまた台所に戻った。
なぜかおりさんは僕に彼女が居ることを知っているのにこんなことをするのだろう。
それを確認するのが怖かった。
会議の時はまったくしゃべらず寡黙な人だと思っていたけど、
実際にはおしゃべりで積極的なところがある人だった。
それでもたたずまいは静かで落ち着いている。
おしゃべりといってもあことは全然違っている。
とっても世話好きで活動的な面はあこと似ているのかもしれない。
そんなことを考えている場合か。
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