12

少しかすれた声で公演後も舞山さんと話した。

公演の最後はメンバーがお客さんにひとりひとりに挨拶をする。

その時のことを舞山さんが興奮して話した。

ゆみるんに今日の服素敵だねって言われたと喜んでいる。

同性同士でも興奮するものなんだ。

まるで恋しているみたいに目を輝かしている。


僕は今日も来てくれてありがとうと言われた。

みゆるんにもようやく認知されるようになった。

僕はパフォーマンス今日も素敵だったと声をかけた。

ちょっと声がかすれて聞き取れなかったかもしれないけど、笑顔で返してくれた。

といったことも舞山さんに話した。


ホームまで一緒でそれぞれ別の電車に乗った。

電車に揺られながらやっぱり公演は楽しいなと思った。

それと同時に舞山さんと居ると楽しいという思いが罪悪感とともに湧き上がってきた。

普段しゃべりつかれるぐらい話すことなんてめったにない。

しおみさんといるときもしゃべるけど、むしろしおみさんといるときはだまっている時間の方が長い。

そういった時間が幸せな時間でもある。

それが舞山さんと居るとひたすら会話が続くのだ。

だから家に帰って静かな時間になると妙にさみしさがこみあげてきた。


またこの時間だ。

この時間になるとしおみさんに会えないつらさが僕をおかしくするんだ。

舞山さんから通知が来る。

だめだ理性だ。

と思いながらも返事を送る。

しばらくやり取りが続いてしまう。

そしてゆみるんの配信が始まり、繋がったまま配信を見た。

前にイチローさんとななちゃんの配信を二次元中継しているみたいになった。

また盛り上がってしまった。

これはまずいぞという背徳感。


でも楽しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る