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公演は専用の劇場で行われるようになっていた。

ロビーがあって、待ち時間はそれぞれみんなロビーで思い思いに過ごす。

僕はなんでもそうだけど早めに来てロビーをうろうろしていた。

舞山さんが来て肩をとんとんと叩かれる。

今日の舞山さんは前回会ったときのような地味な服装ではなく黄色と黒のコントラストが印象的な恰好をしている。

思わず服を見てしまった。


「驚いた?ちょっと派手かなあ。」と言っている。

「前見た時とだいぶ印象が違うから」

「そう。今日はおしゃれしてきちゃった。」

「似合ってると思います。」と僕にはめずらしくお世辞がなめらか出た。

「ありがとう」と言ってにこっと笑った。

舞山さんは一般的に言って美人ではない。

どちらかというと印象が薄いというのか地味な顔立ちだ。

でも笑顔が素敵だった。

この間1時間あまりもSNSで盛り上がった後だったから、

なんか気まずくなるのかなと思ったら、その時の雰囲気をそのまま

続けたような感じで会話がはずんだ。

それは公演の前の一種の興奮が手助けしたのもある。

僕は無意識に多弁になっていた。


ゆみるんのことを話すのだからそれは自然なことでもあった。

ゆみるんのことを話すとつい多くしゃべってしまう。

さきおにしゃべっていてもそれは同じだ。

増してや舞山さんは同じゆみるん推しで話に輪をかけて拍車がかかるのだ。

公演が始まるころにはすっかりしゃべり疲れてしまうぐらいだった。

そして公演で声を枯らした。もう声出しはOKになっている。

僕はけっして大きな声を出すほうではないけど、

公演やコンサートでは、思いっきり声を張り上げる。

それが楽しみでもあった。

しばらくは声出しNGですごいストレスがあったけど、今日は発散できた。

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