第48話 絶対に死ぬ村(4) ダンジョン攻略編
「では、ダンジョンに入っていこうと思います」
久々の1人でのダンジョン配信。額にくっつけるタイプのカメラと高性能マイクにスキルでバリアを張り、視聴者が酔わないようにできるだけ首を振るときは十分に気を付ける。
スマホで配信を確認してみれば既に100万人近い人が集まっており、お祭り騒ぎになっていた。
<ナツキ復活!>
<絶対に死ぬダンジョンVS絶対に死なない男は激アツ>
<単品企画いいね>
<ということは千尋たんの単品企画もあるのかな>
<いいね>
<また村人がやらかしてるパターンあるある>
<事前動画にあった仲居さん怪しい>
<確かに……ってかスレタイすぐ埋まって掲示板死んでて草>
<サーバー殺しのナツキくん>
コメントはいつも通りだな。
俺はスマホをしまうと上層を検知スキルにかける。上
層には比較的弱い鳥系のモンスターがいくつかいたが、俺に襲いかかってくることはなかった。
ダンジョン鳩 Lv500
固有スキル:軍勢、みきわめ
弱点:魔法全般
ダンジョン鳩は非常に賢いモンスターでこちらが強いとみきわめると絶対に襲ってこない。
「鳥類モンスターか。卵は絶品だけど、今はいらないので無視します」
俺はカメラを隠し
「瞬間移動で中層への階段まで移動します。揺れるので酔いやすい方は目を閉じてくれ」
と注意喚起をしてから瞬間移動スキルを使用した。
中層への階段をおりると、さっきまでの平和な風景は一変し、視聴者が一番嫌う黒光するアレがうようよとしていた。
「最悪だ!」
ダンジョンゴキブリG Lv579
固有スキル:棘の足、粘液
その他スキル:増殖、千の卵、共食い
弱点:火、氷、打撃
次々と飛びかかってくる2mほどのGたちを俺は豪炎魔法で焼き払っていく。真空斬撃を使用するとなんと言うか黄色い中身が噴き出して視聴者が離れかねないので跡形もなく焼き払うのだ。
「くっそ……気持ち悪りぃ……」
俺は四方八方から飛びかかってくるGを見ていいアイデアを思いついた。
「そっか、こっちにしよう」
<スキル:ダイヤモンドダスト>
俺がこのスキルを展開した瞬間にキラキラと輝く風がGたちの間を駆け巡った。美しいダイヤモンドダストと非常に気持ち悪くてでかいアイツら。
視聴者の反応が気になるが、俺はどんどんとスキルの範囲を広げて中層の中全てに展開していく。
パキン、パキンとGたちはそれぞれ氷の彫刻のように固まっていく。あるGは大きく立ち上がった姿、あるGはひっくり返って羽を広げたままで……。
「よしっと、中層もクリアかな」
俺はスマホを取り出して視聴者が離れていないかチェックする。
「すんません、G嫌いのみなさん」
<これは強い>
<虫氷ジェット(最強)>
<一家に一台欲しい>
<寒そう>
<炎も氷もいけるの最強>
<みんな知ってるか……これ固有スキルじゃないんだぜ>
「ん? リクエストサンキュー」
<Gが嫌いです! 凍ったやつも粉々にして欲しいです!>
「よし、いっちょやりますか」
俺はぐっと反ったナイフを2本抜いて両手に持つと中層と真ん中らへんまでゆっくりと歩いた。気持ちが悪いGの彫刻は凍りついてしまってピクリとも動かない。
「真空斬撃・舞」
俺は真空斬撃のスキルを展開にナイフに宿った斬撃を四方八方に飛ばしていく。身を翻し、時には空中に飛び上がり中層の端っこまで貫通する斬撃が無数に放たれる。
パァン! パァン! と斬撃が当たると凍ったGは粉々になって崩れていく。氷がはじける様はとても綺麗だ。
なんというか、ドミノ倒しでも見ているような無心になれる爽快感。
「よし……、みんなのコメント返しながら下層への階段まで歩こうかな」
まるであられ雪でも積もったみたいに真っ白になった中層のフィールドはキラキラと輝いている。
<すげぇ、まさに芸術>
<ナツキって昔からこういう創意工夫がいいんだよな>
<うちのGもこうしてください>
<ってか、ひっさびさのナイフ真空斬撃最高だったわ>
<凍らせてからだと血が出ないからBANされなくていいね>
「いやほんと、配信で一番怖いのBANだからな」
<ちいたんいたら失神してそう>
<女視聴者生きてるか>
<昆虫大好きなワイ無事死亡>
<このパターンのダンジョンだとボスも昆虫系? 高確率で卵系だよな>
<確かに、謎解き忘れてたわ>
<ナツキさん、ゴキブリのレベル教えて>
「あぁ〜、さっきのはダンジョンゴキブリG Lv579だ。俺の検知スキルであいつらとあいつらの卵以外の生命体反応はなかった。まぁ、Gは殺した冒険者の骨も装備品も全部くっちまうから行方不明者の半分くらいは奴らの餌食になってたのかも」
<ひえ〜>
<身内には絶対なってほしくない職業1位>
<いや1位ではないだろ>
「下層への階段についたし、コメント返しはこの辺で。じゃあ、最後まで応援よろしく」
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