大図書館にて①

あの後、私は、初めて魔導機関車に乗って、大図書館に向かった。


乗り心地はどうだったのかって?


そりゃあ..........良かったに決まってるじゃん!!


電車の中から見える景色は最高だし、駅は風情があってオシャレだし...........ファンタジーと鉄道の相性って、意外といいのかもしれない。


そんなわけで、今現在の私は、大図書館にいる。


花「思った通り、こっちではヴィクトリアン・メイドが主流なのね」


メイドについて書かれている本を見ながら、そう呟く私。


ヴィクトリアン・メイド。


それは、丈の長いロングスカートと、白いエプロンが特徴的なメイド服で、主に、カラーバリエーションとしては、紺や黒が主流。


要は、クラシックスタイルのメイド服なのである。


花「それにしても.........こっちの世界のメイド服も、きっと素敵なんだろうなぁ.......」


そんなことを想像しながら、ニヤニヤと笑う私。


私の世界の最近のメイド服は、可愛さメインになってきてるけど...........大人っぽいヴィクトリアンメイドも、またいいんだよね〜。


そう思っていた時、どこからか、女性達の会話が聞こえてきた。


女性①「ねぇ、今日の新聞広告見た?」

女性②「見た見た!!確か、新作のコルセットでしょ?」

女性①「そうそう!!私、どれを買おうか迷っているのよ〜」

女性②「私も〜」


........ヴィクトリアンメイドが健在なら、コルセットも健在ってわけね。


花「でも、コルセットもやばいって聞くからなぁ.......」


コルセットはコルセットで、肋骨や内臓に良くないから、徐々に衰退していったっけ?


..........あんなのを着てた、当時の人々凄すぎでしょ。


花「よっし!!とりあえずシェーレグリーンとコルセットは使わない方向で行こう!!」


私のやり方が、この世界で、どこまで通用するかは分からない。


あのココ・シャネルだって、昔ながらの伝統を壊して、今のファッションを作っているし...........何より


『エレガンスとは、拒絶すること』


って、言葉を残しているんだもの。


私にだって出来るはず!!


そう思っていた時、突然、誰かが私に話しかけてきた。


???「ねぇ、ちょっといいかしら?」

花「は、はい!!何ですか?」


返事をした後、その声の主の方へ向くと..........そこには、いくつかの本とスケッチブックを持った、綺麗な女の人がいた。


???「隣、座ってもいい?」

花「あ、はい。いいですよ」

???「ありがとう」


そう言うと、女の人は私の隣の席に座った。


ふと、その人のスケッチブックの中を見てみると.................そこには、たくさんの服のデザインが描かれていた。


???「...........何?」

花「あ、いや、その.......素敵なデザインだなって思って」

???「.......これ、没になったデザインだけど」

花「えぇ!?」


没ぅ!?


このデザインが!?


花「な、何で没にしたんですか!?」

???「気に入らなかった。ただそれだけよ」

花「そ、そんな.......」


女の人の発言に対し、呆然となる私。


???「それに.....こんなデザインじゃあ、王室メイド達に相応しくない」


王室......メイド!?


花「あなた...........もしかして、裁縫師なの!?」


私がそう言うと、女の人は私の方を見ながら、こう言った。


アデーラ「...........アデーラ・タラント。それが私の名前よ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る