第14話 †夕餉狂想曲†

——教国

——首都デヴリン・灰の館



「では、シューくんの宿泊をして〜乾杯!」

「カンパーイ…ッッップヘェ」

「乾杯…」


  何故か主賓を差し置いて大の大人2人がグビグビと酒を呑み始めた。ジュリアの駄洒落について言及するか悩んでいると、如何にも隠居人な白髭の男が話し掛けてきた。


「ワシはワルグース! 只の隠居ジジィじゃ。よろしくシューゾウ…ップハァ! やはり祝い酒はスコッチに限るのぉ!!」

「酒くさ…俺はシュヴァルツ・フェイトグランデ=ステッレだ、マツオカではない」

「シューくん、おじいちゃんはこう見えて昔騎士王国のお偉いさんだったのよ〜ヒクッ」


 ワルグースは照れ臭そうにスコッチのボトルを煽った。


「ま、所詮はナンバースリー止まりだったけどな!」

「騎士王国の3番手なんて大陸1みたいなものですよ〜ヒクッ」

「そうかね? …うむ、そうかも!! ッッップヘェア!!」


 ワルグースは心底嬉しそうに半分けの前髪をなぞった。


「少しは穏やかな時間が増えるものと思っていたのだが…はぁ、これもまた†祝福エンデュミオン†なのか?」


 母上は刻が刻まれていく事に過保護になり、リリィはスキンシップの頻度と深度が増し、アサエモンからのアルハラは日増しにエグくなっていた。母上のは分かる、リリィが†情欲を貪る獣†である事も苦しいながら理解出来る。が、アサエモンのアルハラだけはとんと分からぬ。おっとすまない、普段隠している江戸前が出てしまったな。

 俺が教国に身を置く事になったのは3人と暫く距離を置くというのも実はある。母上に心労掛けてしまう事だけが悔やまれる。


「シューくん!! 困った事があったらいつでもお姉ちゃんを頼ってね!! …ヒック。あっ! お姉ちゃんっていうのは私の事であってお姉ちゃんの事じゃないんだからね〜♪」

「ついでにワシもな〜。ジジィの浅知恵を授けちゃる…カァァアア〜!!」

「やれやれ…中々美味いな」


 勝手に盛り上がる2人をよそに摘んだ酢豚は中々に絶品だった。



—1時間後—



「うぅ…シューくん!!」

「どうした急に」


 ポロポロと†無垢な涙のカケラ†を零しながらジュリアは俺の頭を抱えた。ワルグースは羨ましそうに此方を眺めていた。俺は構わず酢豚を味わった。


「シューくんもシューくんもエクソシストになっちゃうのー? お姉ちゃんやーだよ!」

「ならないさ、今は」

「今はじゃなくて、やーなの!!」

「やーなのは分かった」

「うん!!! …ZZZ」

「え、寝落ちた」

「酒が進むとジュリアは急に寝こけるんじゃ、憶えておくといい」

「はあ…そそっかしい奴だ」


 俺はお気にのコートを脱いでジュリアに羽織らせた。…途轍もない†既視感デジャヴ†だ。

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