第11話 美味しいパスタ
——教国
——首都デヴリン
その天使は美味しいパスタと出逢えた事に、深く感謝して食事を楽しんだ。
「人間の作るご飯はどうしてこうも味わい深いのか…罪深き者達の腕のそれとは思えんな!」
「†罪深き者達†…か」
何故だか分からないが、やはり目の前の悪態をつく片翼の天使は俺が分たれたかの如き魂をしている。このシュヴァルツ・フェイトグランデ=ステッレが半身を忘れていたなどと…やはり運命の悪戯は俺を†
「それで…お前は誰だ? 本当に憶えが無いし、お前の様な
「無理もない事だ…」
髪を掻き上げる天使の所作は、中学生くらいのあどけない顔をした少女が持ってはいけない妖艶さを内包していた。左手を右目の前に構えたまま続けた。
「君と俺は…かつては1つの魂だった」
「…」
「幾千の死線を超え、
「…」
「不幸にも! 我々は別々の翼として2つに分たれた! ンしかしッッッ!!!」
俺は立ち上がり、徐に天使に右手を差し出した。
「時を超え、世界を超え…遂に我々は今再び!! こうして邂逅し、1つの翼と魂となった…クククッ…†アモーレ・ミオ†」
「なるほど…」
天使の彼女は納得し、俺の右手を包んだ。
「私はルシ…いや、フェルシーだ。ご飯を馳走してくれた事、礼を言う」
「え、なんか余所余所しくない…?」
「あぁ、お前が黒教の異端派よりも頭のオカシイ人間で出来れば関わりたくないと思っているからな」
「?????????」
「何故そんな不思議そうな顔をしている?」
「不思議だからですけど」
「おぉ、普通に喋る事も出来るのだな」
「いや、普通に喋ってますけど?」
お、おかしい…! 何故我が半身がここまで俺に冷たく接してくるのだ!? 天使は冷ややかで憐れみのこもった眼差しを俺に向けたままピザを頬張った。チーズが伸びて天使の唇から垂れた。
「俺ほどの†
「…その口振りだと、黒教徒でも白教徒でもないらしいな」
「白教? 黒教?」
天使はレモネードを煽ってスッキリした顔で一言だけを残して店を後にしてしまった。
「お前は世界の事を何も知らないらしい。デヴリン郊外の『灰の教会』を訪れるといい。ご馳走様」
「…? このシュヴァルツ・フェイトグランデ=ステッレはやがて全知の身となるのだが…『灰の教会』…」
俺もレモネードを煽り、店主の老婆に金貨を1枚渡して店を後にする。
「ぼ、ぼうや!! こんな大金渡されたら困るよ」
「…また今度食べに来る、取っておいてくれ」
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